愛と死の妄想 悲壮耽美な情景  feseppuku.exblog.jp

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by kikuryouran
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三回忌法要

頑爺こと木良山氏の三回忌法要が同好の者たちだけで執り行われた。集まったのは男女十人に満たなかったが、いずれもが心からその冥福を祈った。墓所での法要の時刻には雨が上がって椅子が並べられ、傍らの紫陽花が濡れて鮮やかな色を見せていた。
僧侶の読経が始まると、私は瞑目して故人との夢の世界に入っていった。

「供養の切腹をしていただきます。」
世話役の男に名指されて、肌着姿で前に進み出て座る。
「見事に果たして御覧に入れます。」
この日、法要の席で切腹したいと申し入れた。故人は女切腹に生涯を捧げ、参列し見守るのは同好の者ばかり。これほどの場所はないと思えた。腹切り刀は九寸五分拵えを外して、懐紙に巻き込み三方に載せられている。作法の通りに押し戴く。
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夢であるのはわかっていたが、墓所は黄泉への入口だった。読経は死への誘いと聞こえた。腹を揉み撫ぜて胸を張り腰を浮かす。突き立てた刃を握り締めてゆっくりと引きまわす。狂おしいほどの陶酔が襲った。膝に置いた指先が着物越しに秘所の萌えを探った。声を上げそうになるのをかろうじて堪えた。うっすらと目を開けると、周囲では荘厳な法要が行われている。瞑目してまた幻想の世界に入っていった。

温かいものが膝間を濡らす。それが血か淫水かはもうわからなかった。
「よう来てくれた。」
故人が笑っていた。
「お久しゅうございます。あの頃のように御介錯を・・・。」
腹を抉りながら言った。膝間を開いて女陰草叢を露わにしてやる。
「お願い・・・。」
エクスタシーの兆しを腰に感じて気が失せそうになる。久しぶりの快感が訪れようとしていた。

「気分が悪いの?」
隣の女に声をかけられて現実に引き戻された。
「すごい汗じゃない、大丈夫?」
「ありがとう。大丈夫よ。」
夏物の薄い着物の下はもうぐっしょりと濡れている。
「手習い?」
女が笑いながら小さな声で耳打ちした。彼女も切腹フェチなのはわかっている。まだ長い読経が続いていた。

「送るわ。」
法要が済んで、私を助手席に座らせて彼女は車を出した。
「凄かったわね。」
彼女は運転しながら言った。
「気がついていたの?」
「最初は気分が悪いのかと思ったわ。そしたら小さな声で介錯って聞こえたわ。」
「恥ずかしい。」
「いい供養よ。あの人もきっと喜んでいるわ。」
彼女は私の顔を見ながら笑った。
「介錯してあげる。いいわね。」
私に訊かずに彼女は道筋のホテルに車を入れた。庭の隅に紫陽花が咲いていた。
「きれいに咲いているわ。」
私はよろめきながら部屋まで歩いた。

彼女はネットの中で名前を知っているだけの人だった。私は切腹し、彼女は介錯して果てさせてくれた。
それは二人だけの切腹供養だった。
「きれいだったわ。」
快感の余韻に浸って放心している私を彼女はしばらく抱いていた。この人はきっと頑爺が乗り移っているのだと私は思った。
「彼は幸せね。」
彼女がポツリと呟いた。

ホテルから出ると彼女は駅まで送ってくれた。互いに名乗らなかった。
「また会えるかしら。」
きっともう会えないだろうと思いながら、私は笑って手を振った。
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by kikuryouran | 2008-06-25 23:21 | 女腹切り情景 | Comments(0)