愛と死の妄想 悲壮耽美な情景  feseppuku.exblog.jp

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by kikuryouran
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衆道殉死陰花散る

某日鍋島支藩を預かる鍋島直之が切腹を遂げた。最期を見届けて間を置かず、小姓山内京弥が追い腹を切った。立ち会うたのは近習役の武士であった。

「殿様お仕舞いなされた上は、殉死仕ります。」
「殉死と言われれば止めも出来ぬ、見事に義理を立てられよ。後の世までも名が残りましょう。」
「有難きお言葉なれど義理ゆえではございませぬ。恥ずかしき淫情断ち難きゆえの追い腹でございます。」
「君臣の契りよりも濃い恋情と言われるか。」
殿は三十路前、武家らしくも多感なお方であった。この頃、武士の衆道男色は公然と恥じるものではなかった。京弥は十六、城中知らぬ者なき美童、想いをかける男女も多くを数えた。
「心よりお慕い申しておりました。」
「衆道の情に殉じるか。それも士道であろう。」
京弥は、落ち着いた様子で脇差を懐紙に巻く。前肌押し開けば、まだ幼さを残す骨立ち、女とも見まがうほどの雪の肌。腰紐解き緩めて、白き下帯繁みまで押し下げれば、若衆の色香はここに極まると見えた。

『腹切りお供いたします。』
想いを凝らし、慰むように腹を撫で揉みしだいた。絞り閉じた陰花が疼く。あの方にすべてを捧げる、この腹を切って。衆道は命を捧げる契りであった。
一気に突き立てると、激痛が腰に広がる
「うぐうううう・・・。」
苦痛に歪む顔は艶かしく、悶える腰尻から淫靡の気が立ち昇る。
「殿を、殿をお慕い申して・・・。」
あとはもう言葉にはならなかった。
「うむううう・・・むうううう・・・。」
肉を震わせ切り割いてゆく。血が噴き赤き大輪を咲かせた。
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すでに刃は脇までも届いて、膝間は血に染まっている。
「お若いに見事な腹。介錯仕ろう。」
「ご無用に・・・。」
ゆっくりと抜き出した刃を胸元にあてがい、倒れ伏せば背までも通る。血の海に屈み伏して、しばらく背を震わせていたがやがて途絶えた。
「まさしく情に殉じた腹であった。よほどに熱く情を交わされたのであろう。」
恋情に男女の別なく、男色衆道が公然と世に容れられた頃であった。
義理ゆえの殉死にあらず、次の世までも継ぐ情愛に駆り立てられた切腹も多かったという。
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by kikuryouran | 2008-06-08 07:48 | 男色衆道 | Comments(0)