愛と死の妄想 悲壮耽美な情景  feseppuku.exblog.jp

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by kikuryouran
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隠密吟味

藩目付の別邸は吟味屋敷になっている。
証拠があったわけではなかった。城中奥の下働きであった女を捕らえて二晩責めた。
「しぶとい女か吐きませぬ。」
取調べにあたった侍が困った顔で言った。
「随分と酷く調べたそうだな。」
「あまりに小癪な物言いゆえに、つい・・・。」
「しかたあるまい、忍びであれば簡単には吐かぬ。」
「間違いであったかもしれませぬ。」
「あれほど傷めて間違いではすまぬ。女を問うたか。」
暗に犯したかと訊いている。
「・・・。」
侍は下を向いて答えなかった。
「それでは、もう生かして戻すわけにもいくまい。」
「では・・・。」
「今宵、牢内に短刀でも入れてやれ。自害でもしてくれれば片が着く。逃げようとすれば斬れ。明日の朝まで何事もなければ、隠密であったとして首を刎ねよ。」
吟味方の武士は下がっていった。
奥向きからは、強い抗議がきていた。
「場合によっては奥への言い訳に、あの者に腹を切らせることになるかもしれぬな。」
隣の部屋で聞いていた武士が、頷きながら名を書き連ねた紙を差し出した。
「まだこの中にいるかもしれん。看視を怠るな。」
紙には五人の女の名が書かれていた。
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by kikuryouran | 2008-06-01 05:56 | 処刑 | Comments(0)