愛と死の妄想 悲壮耽美な情景  feseppuku.exblog.jp

ショートな妄想フィクションを書いています


by kikuryouran
プロフィールを見る

桜の下女腹切り

北国の春は遅く、突然にやってくる。山は頂きにまだ雪を残して、雪解けの頃に蕾を膨らませていた桜が一斉に咲き始める。花吹雪が華やかに春の訪れを告げると、山裾から緑がもう萌え始めた。

お城の奥庭に大きな桜がある。手入れが行き届いて、今年もまた美しい花を咲かせている。その桜の下に、幔幕が張り巡らされて切腹座が調えられた。襷がけの奥女中たちが物々しく警戒して小者たちを遠ざけた。

一人の女が導かれてその席に着いた。歳は二十歳半ば、白単衣に髪を御殿に結っている。整った顔立ちが緊張を隠さなかった。
「奥方様お情けにて望み通り切腹許されました。お役目にて私が検視を務めます。」
申し渡したのは奥目付の女、申し渡しも介添えも女ばかりの切腹であった。
「有難くお受け申します。」
切腹座の女は恭しく頭を下げた。
懐紙に巻かれた切腹刀が三宝に載せて前に置かれた。
襷がけの女中が太刀を下げて後ろに立つ。
「介錯を仕ります。」
「ご造作をおかけ申します。」
女が肩越しに礼をする。
「奥方様お情けにて賜りました切腹、声をかけるまで・・・。」
「承知いたしました。」
武家の作法を心得た受け応えであった。

立ち会う者たちに別れの礼をする。いずれもが奥で馴染みの顔であった。
「殿御がおられぬを幸い、御免下さりませ。」
前を押し開き、両袖抜いて肌着も腰まで脱ぎ落とす。肌白く乳房柔らかで、腰締まって腹に脂肉は少ない。袖を豊かな尻下に敷きこんだ。
背を立て、瞑目してしばらく想いにひたったように見えた。
「美しいこと。」
女の肌をいったものか散り始めた桜をいったものか、検視役の女が呟いた。
「美くしゅうございますな。」
膝に手を置き、桜を見上げながら切腹座の女が言った。
「これが見納めですね。」
「今生最後の桜、晴れがましいほどの死に場所にございます。」
白い肌に桜の花びらが舞った。

「参ります、よろしゅうに。」
切腹人が背後を確かめるように首を傾け会釈をする。
「お任せなされて、ご存分になさいませ。」
介錯の女が頷いて、緊張の面持ちで太刀の鞘を払った。
落ち着いた手の捌きで前に置かれた切腹刀を取り、膝割り三宝を腰下に敷いた。見下ろしてしばらく腹を探り揉む。尻を揺らして肩で大きく息を吸った。
介錯の太刀に水が打たれた。
凍りつく空気の中で立ち会う者は固唾を飲んで見守った。

背を立て腹を押し出して前を見る。穏やかだった顔が険しくなり、腹に力を込めるのがわかる。腰を押し出すように両手で握る切腹刀を突き入れた。
「うむ、むううう・・・・。」
美しい顔が苦痛に歪んで背が揺れる。三宝に載せて後ろに突き出した尻が悶えた。
「あううぅぅ・・・。」
ぐいぐいと力を込めて刃を運ぶ。
苦痛に喘ぐ声が庭に響いた。
「ぐううう・・あああ・・うむぅぅぅ・・・。」
震えながらも脇まで切る。抜き出した刃を握ったまま、両手をついて前に屈み首を伸べる。うなじに汗が滲んで乱れた髪がかかる。
すべての肉が痙攣し震えている。割いた傷から流れる血汐鮮やかに膝間を濡らした。
「介錯・・たのみます。」
苦しげに、声震わせた言葉を検視役は聞いた。
白い背が波打ち苦痛を堪えて最期の瞬間を待った。一陣の風が吹き、はなびらが背に降りかかる。
「お覚悟!」
ゆっくりと介錯の太刀が振り上げられて、狙いを定めるように刃先が揺れた。
「キェイッ!」
鋭い気合いと共に振り下ろされ、一閃して細首が血を噴いて前に折れる。女は開いた膝間に自分の首を抱いて血にまみれた。突き出した尻が何度か痙攣して三宝から崩れ落ち、裾を乱してしばらく足がもがいた。
静けさを取り戻した庭に、流れる血がゆっくりと桜の根元に吸われた。
[PR]
by kikuryouran | 2008-04-12 13:47 | 女腹切り情景 | Comments(0)