愛と死の妄想 悲壮耽美な情景  feseppuku.exblog.jp

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by kikuryouran
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雪の庭女腹切り


夜が明けると周囲は一面の銀世界だった。
「風は止んだようね。」
まだ柔らかい雪がゆっくりと降っていた。
「こんな朝に死にたかった。」
女はしばらく外を見ていた。
「汚れのない世界に行ける気がするわ。」
彼女はうっすらと雪の積もった庭に下りた。端座して短刀を抜き、刃先を三寸ほども残して懐紙に巻き込む。ゆっくりと肌寛げ、腰紐を押し下げて柔らかい下腹までも露わにした。
「きっと淫らな血が流れるわ。」
見下ろして、自分の身体に言い聞かせるように脇から腹を揉み撫ぜた。
膝を開いて腰を上げる。裾の割れ目から恥部を包んだ白布が覗いた。前に押し出した腹に刃を滑らせた。ゆっくりと脇から臍の下を割いた。
雪の庭に喘ぎ声が吸われていった。

見事な切腹だった。雪に真っ赤な血を撒き散らし、臓腑さえもが傷口から溢れ出ていた。裾は乱れながらも屈み伏し、肌の白さが雪と競った。
「女ながら深くお切りなされたな。」
検死に来た医師が言った。
「ひと月前に、この場所で男が腹を切った。役目の不首尾を詫びての自害と聞いている。」
目付役人が見下ろしながら医師に言った。
「後を追われましたのか、まだお若いと見えますに。」
「二十歳を過ぎたばかり、許嫁であったそうな。若いゆえにできることであろうな。」
横たえ人を遠ざけて、その場で傷を検める。
「左の脇から臍下を真横に右脇まで。浅く切り入り中程で深く突き立てております。激しい苦痛を堪えて切られたのが傷の乱れで推察されます。止めの傷は胸元にございますが急所を外れております。失血と寒さで身体の温もりが奪われ、切り終えた後は凍え死にのごとくに絶命されたでありましょう。はらわたには傷が少なかったと見えて肛穴からは血が少量。女陰が潤っておりますゆえ、殿御の夢を見ながら逝かれましたか。」
「覚悟の自害に相違ないな。」
「糞便なく小水の漏れが少ないのは、事前に用を済ませたのでございましょうな。男褌で股間を包んだのは裾の乱れを気遣っての事。よほどの覚悟であったと思われます。」
医師は立ち上がって、恥部までも露わに横たわる女を見下ろした。
「美しいお方でございますな。良い夢を見て眠っておられるような。」
「いかにもな、よほどに男を恋慕していたのであろう。」
「これほどに想われた男は幸せでありましょう。」
「女も永劫夢を見ていられるなら、このような死に様も良いのかもしれぬ。無惨に見えても美しい。」
「これまで何人もの自害死人を見てきましたが、これほどに美しいお方は初めてでございますよ。」
二人はしばらく見下ろしてから家人を呼んだ。
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by kikuryouran | 2008-02-11 05:31 | 女腹切り情景 | Comments(0)