愛と死の妄想 悲壮耽美な情景  feseppuku.exblog.jp

ショートな妄想フィクションを書いています


by kikuryouran
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虐殺の記憶

数百人もの兵隊が我々を取り囲んだ。
逃げようとして、何人もが情け容赦なく射殺された。
数人づつ横に並んで床に腰を下ろさせられた。

一斉射撃の銃声が響く。
その度に前から何人かが連れ出されていく。
それが何度も繰り返された。
連れ出された人たちが殺されているのは明らかだった。
私は、隣にいた見知らぬ若者の手を握り締めた。
「怖いの、お願いだから握っていてちょうだい。」
彼は私の手を握り返して身体を寄せてくる。
私は彼の股間で突き上げているものに気が付いた。
死の恐怖が、男性のそれを勃起させると聞いたことがある。
「僕も怖いんです。」
彼は私の手をそこに導いて、訴えるように言った。
私はコートの中で固く逞しいそれを握ってやる。
彼の手を私の腰に回させた。
「君の名前は?」と私が顔を寄せて訊いた。
「ジョセフ・・・。」と恥ずかしそうに彼は名乗った。

もう助かる可能性はなかった。
低いお祈りの声があちこちで聞こえている。
人々は、必死に死の恐怖に耐えていた。
何度目かの銃声が響いた瞬間、私の手の中で彼が震えながら情水を放つのがわかる。
私は優しく手を動かせて、唇を合わせてやる。
彼は全身を痙攣させながら精水を吐き続けた。
「ごめんなさい・・・。」
彼は恥ずかしそうに私の耳元で囁いた。
「いいのよ、恥ずかしい事じゃないわ。」
私と彼は不思議な安息感でしばらく見詰め合い、そしてまた唇を重ねた。
彼が私に言った。
「あなたの名前を教えて下さい。」
私は彼の美しい目を見ながら言った。
「ナオミ、忘れないでね。」
抑揚をつけた言い方で、彼は私の名を何度も復誦した。
私たちは肩を寄せ合って自分たちの順番が来るのを待った。

私たちは追い立てられて外に出た。
既に銃殺された人々が、周囲に倒れていた。
私と彼と数人の男女が、長いレンガの壁際に並ばされる。
一人に数人づつの射撃手が、私たちの前で整列していた。
それはいつか映画で見た、虐殺の光景そのままだった。
私は射精の記憶が残る指をスカートの下に潜らせて彼を見た。
「さよなら、ジョセフ。」
「ナオミ・・・。」
何かを訴えるような目で彼は私を見詰めている。
突き上げる快感を感じて、私は彼にそれを伝えようとした。
その瞬間、一斉射撃の轟音と共に記憶が途絶えた。


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Commented by sennbonn at 2017-12-07 23:15 x
初めてコメントします。
切腹だけではなく、いろんなジャンルが読みたいです。同性愛や処刑ものも好きです。
楽しみにしています。
Commented by kikuryouran at 2017-12-11 01:24
sennbonnさん、コメントありがとうございます。
そうですね、切腹物だけでなくいろんなものを書こうと思います。
また感想を書いて下さい。
Commented by kirikiri2010 at 2018-01-01 19:25
明けまして、おめでとうございます。
今年も、kiku様の腹切る様を見せつけて下さいませ。
Commented by kikuryouran at 2018-01-03 03:00
> kirikiri2010さん
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします

最近、楽しかった頃の事をよく思い出します。
Commented by kirikiri2010 at 2018-01-03 23:35
あの日、あの時、今も走馬燈のように思い出します。
ほんの少し前のような、気がします。
Commented by kikuryouran at 2018-01-08 23:19
> kirikiri2010さん
今はお行儀がよくなったのかもしれない。
この種の嗜好も、変わったのかもしれない。
歳のせいか、時代が変わったのか。

Commented by seika at 2018-01-14 05:03 x
初めてのコメントです。kikuさんの小説はいつも素晴らしいです。私がkiku様にできれば書いて頂きたいのは、女性による仇討ち小説です。特に、我が子を殺された若い女性が、自らの手で犯人を討つというシチュエーションを読んでみたいです。設定は現代がいいです。
もちろん強制ではありません。kiku様の今後の創作
のヒントとなれば幸いです。
Commented by kikuryouran at 2018-01-16 18:57
> seikaさん
重複メールは削除しました。
コメントありがとうございます。
現代の仇討ちですか、それは書いたことがないですね。
我が子を殺されたというのだから、若いといっても三十半ば?
まあ、子供の年齢にもよりますね。
難しそうですね。
考えてみます。


Commented by seika at 2018-01-17 23:56 x
先日、コメントした者です。今まで大したコメントも
してこなかった新参者の私が、唐突にkiku様に書いてもらいたいテーマについてお願いした形になり、やや
礼を欠く形になったことをお詫び申し上げます。
さて、私が「女性による仇討ち」について書いてくださるようお願いしたのは、昔、どこかで読み聞きした
下記のエピソード(古い小説の一節かもしれない)に
深く感動したからです。
「ある街に若い女がいた。彼女は親を早く亡くし、歳の離れた姉に育てられた。姉の一人息子、つまり女にとっては甥は、彼女と歳が近く、女は彼を弟のようにかわいがった。成長した甥は、高校卒業後、就職した会社の異国の支店で営業中、現地の男と喧嘩になって殴り殺された。犯人の男は、うまく言い逃れて極めて軽い罪になった。これに激怒した従姉は、復讐を決意するも病に倒れた。病床の従姉に、女が自分が代わりに仇を討つと誓った。数年間、男を倒すために体を鍛え、また男の居場所を特定した女は、ついに仇討ちを決行しようとするが、現地に出発直前に交通事故で重傷を負って、足が動かなくなり、復讐を断念した」
これに激しく感動した私は是非、事故がなく仇討ちを
成し遂げて欲しかったと思います(もちろんフィクションの上だけの話です、現実の自分の周りにそういう人がいたら止めます!(笑))
もしよければ、上記のエピソードで事故もなく見事、
ヒロインが、甥の仇を討つ小説を書いていただけませんか。先日の「我が子の仇討ち」に関しては
年齢設定が難しいようなので撤回します。仇討ちと切腹
は、サムライが恥を雪ぐ行為と言う事で共通点があり、愛と死の描写を得意とするkiku様の好きなテーマと存じます。また現代小説を望むのはkiku様の現代小説は(もちろん歴史モノも魅惑的ですが)特に素晴らしいと思うからです。
もちろん、私の如き文才もない匿名の者が、kiku様の創作に注文を出すことで不快に思われたり、難しいと
思われたりされたらこのコメントは無視していただいて構いません。あくまで提案申し上げただけです。
長文、失礼致しました。



Commented by kikuryouran at 2018-01-19 05:38
> seikaさん
コメントありがとうございます。
長編物はあまり書いたことがないので、私には無理でしょうね。
 WWW
でもね、所々の場面を拝借したり、時代を変えてそのアイデアを使わせてもらってもいいでしょうか。
最近はあまり書いていないので、いつできるかはわかりませんが。
少し考えてみますね。
Commented by キ十X at 2018-01-24 11:20 x
コメントするのは2度めです。
磔が好きで、そういう記事を時々開いて繰り返し読んでいます。磔柱の上で観念の風情で受刑の時を待つ女性が好きです。
腹切りやいろいろな処刑などがお好みかと思いますが、時々は磔を書いて頂けませんか。
Commented by kikuryouran at 2018-01-25 06:57
> キ十Xさん
コメントありがとうございます
磔ですか・・・。
観念の風情は私も好き。
またそんなものも書ければいいとはおもいます。
Commented by 小丸 at 2018-01-30 12:51 x
Kiku さま

嬉しい!!
昨年秋からお戻りになっていたのですね。

遅ればせながら新年、おめでとうございます。
年初から奥美濃に出かけていたので、お祝辞言上が遅れてしまいました。

一段と素晴らしいご作品、お待ちしておりました。

私もまた歳を取ってしまいました。ともすれば萎えようとする気持ちがご複活で、甦るような思いです。
心から期待しております。
Commented by kana at 2018-01-31 18:24 x
今年も1月が終わりますね。kiku様の新作をそろそろ期待してますよ。
Commented by kikuryouran at 2018-02-02 04:08
小丸さん、kanaさん、コメントありがとう。
まだ復活というほどは書けません。
つまらない物しかできないでしょうが、時々でも覗いてもらえたら嬉しいです。
Commented by seika at 2018-04-15 00:55 x
今年の正月にコメントしたものです。私が提案した仇討ちなどのアイデアを盛り込んだkiku様の小説を楽しみにしています。しかし、決して急かすものではありません。新作をゆっくりと待ってます。
by kikuryouran | 2017-11-28 22:46 | 処刑 | Comments(16)