愛と死の妄想  feseppuku.exblog.jp

ショートな妄想フィクションを書いています


by kikuryouran
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SF公開切腹


軍事法廷

「当軍事法廷は、艦隊二級士官・岩下由紀に対し、公開切腹を命ずる。被告は国民の信頼を裏切り敵に通牒した。スパイは軍人として卑劣極まりない行為であり、被告は民衆全ての前で謝罪し、命を以ってその罪を償わなければならない。」
被告席の女は頷いて深々と礼をした。

21XX年、日本は一時人口の減少から大量の移民を受け入れ、凶悪犯罪の増加をみた。乱れた倫理を正すために刑法の改定が進められて、残酷峻烈な処刑が行われるようになっていた。特に軍務に就く者には厳しく、日本古来の切腹刑を復活させ、男女を問わず適用された。

「いよいよ明日、お前は処刑場に引き出される。10万人も入るスタジアムは満員になるそうだ。お前の切腹は、すべてのメディアに公開されて国民全てに配信される。介錯は許されていない。切り口は25センチ以上、深さは4センチを超えて切る事。それに満たない場合は切腹とは認められない。これは検視官3名が判定する。万一卑怯な振る舞いや切腹果たせぬ場合は、お前の家族を引き出して処刑する事になる。」
所長は椅子に座って、明日の説明を書いた紙を読みながら私の顔を窺う。私は手錠をかけられ起立して聞いていた。後ろに監視官が二人付き添っている。
「お前は入場時、軍服の着用を許されている。お前は自分の罪を衆目の前で認め謝罪する機会を与えられる。全ての証票を切り取られ、軍服を切り裂かれ脱がされる。それから手錠を外されて切腹の座に着いてもらう。上半身は傷口を確認するために下着も許されない。腰から下は許されているが、絶命後は剥ぎ取られ裸で晒される。女には酷なところもあるが、これは男女同じ扱いで、切腹の傷を明らかにするためである。」
わかったかというように、所長は顔を上げて私の顔を見た。
「これまで非公開で切腹した者は何人かいるが、公開の場で切腹した女はいない。立派にし遂げるんだな。今夜が最後の夜だが望みはあるか。できることなら聞いてやる。」
意味ありげに笑いながら、彼は私を見ていた。

昔は短刀を使用したが、今では切腹はレーザーソードで行われる。直径3cm、長さ30cmぐらいの円筒形が一般的なものだ。鋼製の刃物は無くなって、刀剣武器に替わったのがレーザーソードだ。最少長さ1cmから最長2Mくらいまでも手元のスイッチで刃の長さを調整できる。重さは約500g、刃は方向性が無く鋭利で先は鋭い。押し付けただけで特殊に硬い物以外はズブズブと切り、刺せる。刃長を示すために青い可視光線に包まれているが、刃の厚みは0に近い。軽くて、短刀にも長剣にも使用できる。
切腹の方法は、ソードの刃先長さを切り込み深さに調整して腹に刺し込む。刃厚はないので針を突き刺したような痛みしかない。そのまま横に引けば肉が割かれて傷口が開く。
センサーを使えば内臓を傷つけずに引き出したり、薬物と併用して苦痛を調整する事もできるようになった。切腹自決する時は、各々の状況によりいろいろなパターンが実行に移されていた。しかし、処刑に代わる切腹となると、苦痛を軽減するような処置は認められなかった。


スキャンダル

艦隊二級士官・岩下由紀24歳、軍務に就いて5年になる。彼女は艦隊指令上層部の妻ある男と恋に落ちた。何度か三人の話し合いが持たれて、彼の妻は離婚に応じた。その夜、男の妻が由紀をスパイだと告発し切腹自殺を遂げた。マスコミはスキャンダルとして騒ぎ立て、由紀は軍の取り調べを受けなければならなかった。
「マスコミは容赦なく書きたてている。女が命を捨てて証拠を持ち込んだ。潔白を証明できなければ、お前はスパイとして処刑される事になる。」
何枚もの写真を見せられた。彼女は見事にも凄惨に腹を割いて、腸を引きずり出していた。血だまりにうずくまる背が哀れにも美しいと思った。彼女の死に顔には悔しさが滲み、切り口から溢れた腸は私への憎悪を感じさせた。私は女の悲しみと自分の犯した罪の重さを悟らされた。
巧妙に捏造された証拠を見せられて、私は全てをさとり、覚悟しなければならなかった。彼女は命懸けで完璧な罠をかけ、奪われた夫への愛に殉じたのだ。私は毎夜のように彼女の哄笑する夢を見た。『自分はこんなにも彼を愛している、あなたには決して彼を渡さないわ。』お腹を割きながら、彼女は私への恨みを叫び続けていた。
私は、どちらの愛が強いのかと挑まれていた。あなたが彼への愛に殉じるなら、私だって彼への愛はあなたに負けない。あなたの恨みの罠を受けて、私は罰を受ける。いいわ、私も切腹してあげる、あなたの望む通りに。
私は黙秘を通し、証拠を否定しなかった。
「切腹させて下さい。」
それだけを言うともう一言も喋らなかった。

私の房に男が訪れた。私は、最後の夜をこの男と過ごしたいと所長に頼んだのだった。
「朝までだ。」
それだけ言うと看守は外から鍵をかけた。
「会いたかったわ。来てくれたのね。」
しばらく見詰め合って、二人は狂った獣が喰らい合うように抱き合った。監視のカメラも気にせず求め合い交わった。きっとモニターには看守が釘付けになっていたろう。
声を殺しながら飽くことなく昇り詰め、横たわる互いのすべてを唇で確かめた。とろとろとしたまどろみと虚脱の中で裸で抱き合い、私は男の胸に顔を埋めていた。
「よく来てくれたわね。最期に会えてよかったわ。」
私は彼の顔を飽かず眺めた。私はきっとこの男を手に入れるために切腹する。
「私は罪を犯したわ。あの人をあんなに苦しめた自分を許せない。あなたを愛したのが罪なら、どんな罰でも喜んで受ける。スパイとして刑を受けても、私はあなたへの愛を確かめるために切腹するの。」
男は私を見て、そして黙って抱きしめてくれた


処刑場

翌朝、私は処刑場に送られた。
この処刑場は最近出来たばかりのものだ。凶悪犯罪の歯止めのために、公開処刑は随分前から見せしめとして行われていたが、映像メディア技術の粋を集めて、処刑を人々の猟奇性を満足させるイベントとして行うためにつくられた。
人の性は善、それ以外は異常だと思われている時代があった。しかし、DNAの解析と心理学の研究から、各々の性衝動に含まれる暴力嗜好も個性の一部と認識されるようになっていた。加虐、被虐、各種のフェチと呼ばれた嗜好も今では異常とはみなされていなかった。公にされると、彼等は猟奇な欲望を満足させるために、処刑にいろいろな要求を出すようになった。人々をより満足させる殺戮の演出が考えられ、人々の要求もエスカレートしていった。すでに何人もがここで処刑されていたが、女の切腹は初めてだった。
磔、吊るし首、ギロチンetc、ここで行われる処刑は、それぞれが過去の時代に行われたものとは同じ名前でも質は異にしていた。ここで処刑される者は、死をもって罪を償うだけではすまなかった。命も肉体も残虐猟奇な欲望の生け贄になるという事だった。死体になって陵辱を加えられる事さえもあった。

久しぶりに獄衣から白い軍服に着替えさせられる。スタジアムに連れ出されると、促されて中央に立たされた。武人として切腹する。その時はまだ、誇りを持って死ぬ覚悟が由紀の凛々しさを保たせていた。日本人の血が騒いでいるのかも知れない。幾つもの大型パネルに自分の姿が映されていた。周囲を取り囲むように作られた観客席は人に埋め尽くされている。彼らはすでに狂気の目をしていた。
「国家を裏切った女が、これから全ての国民に謝罪し切腹いたします。」
どこからかアナウンスの声が響き、群集のどよめきの中で、犯した罪と年齢経歴が読み上げられた。
私は周囲を見渡しながら、この群集は何を求めてここに来ているのかと考えていた。すべての目が私に注がれている。謝罪の言葉を求められたが、私は無言で毅然と胸を張った。立ったまま、私は襟、胸元、肩についた士官の証票を剥ぎ取られる。軍服を脱がされ、胸を隠していた下着も剥ぎ取られた。腰ベルトをとられ、ロングパンツも裂かれて脱がされる。屈辱の時間だった。一枚剥ぎ取られる度にどよめきが起こる。最後のショーツだけを残すと、抗議の罵声が止まらなかった。観衆がすべての下着を脱がせる事を求めていた。声に押されるように執行吏の手が最後の一枚に手をかける。一瞬二人は顔を見合わせ、彼はにやりと笑って引きちぎった。
丸裸で立つ私を、周囲から写した姿が何箇所もの大パネルに映される。容赦なく恥部がアップで映し出される。白い肌に黒々とした恥毛が目を引いた。しばらく嘲笑とため息が止まなかった。私は起立して身体の隅々までも隠さず見せるように言われた。


立体映像

私の身体がゆっくりと浮き上がり始め、5mほどの高さで止まった。床も周囲も透明バリヤーで包まれ、全ての角度から写されて瞬時に3Dに組み立てられる。私の動作をそのまま写して、幾つもの巨大な立体映像が投影されて浮かび上がった。観客はあらゆる角度から見ることが出来る。国中のあちこちで、巨大な立体像がリアルタイムに実況されているはずだ。私は不思議な陶酔に包まれていた。今までこれほどの人に見られながら切腹した者はいない。今この瞬間、自分は世界の中心にいた。痛いほどに視線を感じる。すべての男に、女にさえも犯されている気がした。気が昂ぶり、自慰をしたいと思った。身体の中心が熱くなる。

美しい女だった。長い髪に細い顔立ち、鍛えられた身体は女の柔らかさとしなやかさを失わず引き締まっている。白く艶熟して柔らかな乳房、細くも引き締まった腰と豊満な臀部、美しく伸びた脚。恥じ入る様子もなく、死を前にして潔くも凛として立つ姿は神の造形を感じさせる。数十倍に拡大され空中に浮かぶ立体裸像は、秘部さえもが忠実に映し出されている。濃い恥毛、巨大なヴァギナとアヌスが、色までも鮮明に再現されて人々の目に晒されている。すでに覚悟を決めたのか、落ち着いた様子で渡されていたソードの刃を出した。

見下ろすと真下からも撮影しているカメラがあったが、もう恥ずかしさは失せていた。私はソードの刃長を4cmに合わせた。巨大な立体映像も私の仕草を忠実に再現している。
下腹を撫ぜ揉むと全身に汗が噴き始めた。緊張で全身の筋肉が震える。股間の筋肉に力を込めると痙攣しているのがわかる。見上げる観衆には秘部までもが見えるに違いない。見渡すとすべての観衆たちが息を呑んで私を見詰めている。すべてを見られている快感が私を大胆にしていた。
私は足を大きく広げて立ったままソードの刃を左下腹に当てると、一瞬どよめきが消えて静寂が訪れた。私は大きく息を吸い、自分の腹を見下ろしてゆっくりと刃を刺していった。
チクリとした痛みが走って、力を入れなくても刃はゆっくりと沈んでいく。全身に汗が噴き出すのがわかる。3cmほど入って一気に痛みが腹全体に広がる。腹壁を貫いたと思った。思わず呻き声が漏れた。
「うむうううう・・・。」
拡大された私の呻き声がスタジアムに響き渡る。痛みを堪えて柄が膚に触れるまで突き立てる。脚が震えてよろめき、身体を支えられずに片膝をついた。

美しい顔が淫らしくも歪む。秘所の花びら潤い透明な液体が尾を引いて滴った。腸を傷つけたのだろう、絞られた菊花が内から赤く染まっていく。すべての筋肉が痙攣し震えていた。


十字腹

片膝ついて下腹脇に突き立てたソードを握り、女はしばらく動かなかった。両手でゆっくりと横に引いた。激痛が腹全体を締め付ける。唇を噛み締めながら叫ぶのをこらえた。焼けるような痛みに腰が震えた。乳房が小刻みに揺れている。臍の下辺りまで割いた頃には端から傷口が開き始めて血が流れ出す。女にはもう周囲の群衆は目に入らなかった。前に屈みながら、お腹を切り割く事だけを考えていた。ゆっくりと横に引く。鋭い痛みが腰全体を痺れさせた。神経が切断されたのか内股に失禁の尿が滴り始める。由紀の頭の中はもう真っ白になっていた。

豊かな肉付きの尻の谷間にアヌスが固く閉じられ息づいている。黒い繁みに花びらの震えさえもがはっきりと見えた。尿口から失禁の水玉が噴き出す。くさむらが血と尿を滴らせた。群衆がどよめいた。大きく黄色い水玉が足元に音を立てて迸しった。

脇まで届いたソードの刃を抜き出す。見下ろすと、引き割いた自分の腹からすでに腸が垂れ始めているのがわかる。激痛が間断なく襲うが不思議な気分だった。はらわたを引きずりだしたいと思った。ソードの刃を抜き出し、臍の上辺りに突き刺し下に切り下げた。ズズズズーッ、力を加えなくても切り裂かれて腹は十字に開く。ソードは止まらず恥骨を切り女陰までも裂いて、血にまみれた臓物が一気に溢れ出す。ウォーッという驚きの声がスタジアムを覆う。その声を聞きながら由紀はゆっくりと後ろに倒れていった。足元に垂れた腸が空中でぬめぬめと動いていた。

ゆっくりとバリヤーが地上に下ろされた。観客は女の周囲に下りる事を許される。女は両脚を大きく広げ、裂かれて血まみれの股間に溢れ出た極彩色のはらわた臓物を晒していた。白い乳房は美しく盛り上がり、半ば開かれた口は淫らな想像を思い起こさせ、目は開いたまま空の雲を見上げているように見えた。
その後、何日も晒された女を見に来る人々が絶えなかった。メディアは何度も立体映像を流し続けた。

送られてくる映像を見ながら、男は女の仕草を忠実になぞっていた。
「由紀・・・。」
最期の瞬間に男は宙に精を放った。



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# by kikuryouran | 2006-04-12 02:57 | 処刑 | Comments(0)

女切腹殉死

「今日が盛り、美くしゅう咲きましたね。」
白のお召しで桜の散るお庭を抜けて、奥方様が離れの座敷にお入りになりました。すでに支度は調うております。旦那様の白木位牌を前に、しばらく手を合わせておられました。
「そなたには最後まで造作をかけましたね。礼を申します。見届けるだけでよい、介錯は無用。」
解き落とされた帯紐を傍らに片付けられ、落ち着いた様子で前を寛げられます。ふくよかながらも武の嗜みに鍛えられて、三十路前の女の盛り、胸乳ばかりが細やかに揺れておりました。懐紙に包まれ、刃先二寸ばかりが冷たく光る懐剣を手に、裾を割られて両膝立ちに腰を上げられ、見下ろす目に険しさが走ります。
「うむううう・・・・。」
気合とも聞こえる呻きと共に刃先沈めて、見事に下腹一文字脇から脇、奥方様は雪の胸元心の臓を貫いて果てられました。女人の最期は美しく終りたいものとは常日頃よりのお口癖、言葉通りにお美しいご最期でございました。

お側では畏れ多いゆえに、私は庭に下りてお供いたします。女ながらも腹切りて死なんとはかねてよりの望みでございました。主に殉死ともなれば誉れの死に時、武家として過ぎたる死に場所でございます。

桜舞い死出の旅路を彩りて、抜き出す懐剣妖しくも光を放ち、諸肌に脱ぎ落とせば白き柔肌はまだ春を知らず。浅ましくも血の騒ぐを止めもならず、未だ固き乳房を我が手に慰めるしばしの未練、降る花の下での喘ぎ恥ずかし。

下腹柔らかな辺り浅くも割いて、苦痛とても尻腰痺れるほどのもの。流れ出す血にしばし朦朧と夢を見る。すでに手はおぼつかなくも仕損じては恥辱の限り。気を取り直し懐紙を解けば刃は九寸五分頼もしく、胸元にあてがいしばしの躊躇いの後に身体を預ける。手に伝わる肉の痙攣と背までも貫く激痛の後に、安らかな暗闇と静寂が訪れる。

柔肌の背に降る花の死に化粧
  

花の下でのしばしの妄想でした。
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# by kikuryouran | 2006-04-09 18:10 | 女腹切り情景 | Comments(0)

今夜は一人で・・・

夫が慌しく出て行くと、部屋が急に広くなったように思う。煩わしいテレビを消すと部屋は急に静まりかえった。食卓を片付けてしばらく新聞を眺める。
ベッドのシーツを外して洗濯機を回す。チリ箱に捨てられたティッシュの塊りをゴミの下に捨てた。窓を開け放ってベランダに布団を干す。セックスは嫌いじゃないけど、あの後掃除するのは嫌。やっぱりホテルがいいな。

「私って切腹を見るとなんだかキュンとするの。変なのかな。」
彼に言おうかといつも迷って言い出せない。
「自分が切腹するのを考えると私は燃えるの。わかってくれる?」
きっと彼は不思議な生き物を見るように私を見るに違いない。真面目な男って、夫にするのはいいけど、やはりこんな時はつまらない。ちょっとは浮気でもして、遊びを習ってくればいいのに。
別れた男を思い出す。あーあ、お金はなかったけど、あの男だったら冗談ででも言えた気もするな。惜しかったよなー。

洗い物をしながら見ると、彼は屈託なくテレビを見てる。そんなのが面白いの?早く寝ちゃいな。私は心の中で悪態をついた。包丁を片付ける時、ちょっとゾクッとする。今夜は久しぶりに一人でお手習いをしよう。考えただけでもう濡れてきそう。よし、もう寝かせちゃえ。
「ねー、もう一本呑む?」
彼は嬉しそうに頷いた。
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# by kikuryouran | 2006-04-07 03:37 | 女腹切り情景 | Comments(0)

無嗣改易

備中松山藩主池田長常(としまさ)様、俄かの病でご逝去は三日前の事。これから、表の名ある方々が幾人も御殉死なさると聞いております。すでにご寵愛であったお小姓が、ご逝去の夜の内にお後を慕い御切腹なさいました。歳は十五でまだ前髪、私どももお顔は見知っておりました。御同輩お見届けの中で見事にし遂げられたと聞いております。

「遅れては殿様ご不自由でございましょう。皆様、お先に参ります。」
袴の紐を解き緩め、華やかな小袖を脱ぎ落として肌着の前を寛げる。まだ幼さを残す骨立ちながらも、落ち着いた様子はかねてよりの覚悟を窺わせた。腹の切り様は幼い頃より教えられていたものか迷い無く、刃先一寸ほど残して巻き込まれた脇差傍らに、背を立て押し出した腹、脇から撫で揉む。女とも見まがう白き柔肌の、まだ春の盛りを見ぬままに散る花の哀れはあれど、ただ一途主に殉ずるが武士の本懐と信じて、健気にも白刃を手に取る姿のあまりに美くし。
脂肉はつかぬ若者の脇肌、潔くも突き立てる刃一寸ばかり。苦痛に喘ぐ声が漏れ、膝間に血が滴り、前に屈んで切り割く下腹一文字八寸を超える。細腰を震わせ見事に裂いて悶えるを、情けの介錯一閃して首を切り落とした。

翌日になると、長常様の幼い頃からのお側役であった森井半四郎殿が自宅で御殉死、その妻伊久殿も切腹自害を遂げられました。

「聞いてもいようが殿がお亡くなりになった。万一の時にはわしも殉死をとはかねてよりの覚悟であった。」
森井半四郎は御城から下がって、衣服を改めながら妻に何気ない口調で告げた。
「お察し申しておりました。私もあなた様と共にお預けした命、ご一緒に参りとうございます。」
夫の脱いだ着物をたたみながら、妻伊久も普段どおりの口調で答えて夫を見上げた。二人はしばらく無言で顔を見合していたが、やがて互いに頷きあった。

過ぐる年、男は殿様のお側役、女もお側近くに仕えていた。
「この伊久を嫁にと申すか。」
長常は二人を見下ろして怒りに震えていた。前寛げて脇差を抜く男の後ろで、女も躊躇わずに帯を解いて懐剣を抜いた。
「殿がこの女をお望みと知りながらのお願いでござる。お聞き届け下されねば、この場で二人揃うて腹切りお詫び申し上げる。」
長常は二人の様子を暫く睨み付けていた。
「強情な奴、本来ならば手討ちに致すべきところ、それほどまでの覚悟ならば致し方もあるまい。そなたらの切腹はわしが預かる。忠勤に免じてその女を下げ渡す。」
三人だけしか知らぬ秘密であった。
「私もあの折にお預けした切腹、果たしとうございます。」

長常様からお誘いを受けた時は、すでに半四郎様とは言い交わした後の事。長常様は二つ年下、半四郎と契ったことを隠し、私は姉のごとく導いて身をまかせた。奥方様には望むべくも無い身分違いなれど、ご側室ともなれば女の出世、愚かな打算に心が迷わなかったといえば嘘になる。
両三度、秘かにあの方のお情けを受けた頃、半四郎様の知るところとなった。
「主(あるじ)殿とわしをてんびんにかけたか。そのように淫ら不実な女と気付かなかったのはわしの不覚。そなたを斬ってわしも腹切って死ぬる。」
私には言い返す言葉もなかった。
「申し訳ございませぬ、私の不心得でございました。長常様にもお詫びして、お仕置きを受けとうございます。」
半四郎様は命懸けで、長常様に私を妻にと願われた。主のお情けを受けながら、他の男と契るなどとは許されぬ不忠、女としてどのように詫びても許されぬ事であった。半四郎様があの方の前で命懸けで私を妻にと願ったあの時、女ながら私も腹を切って詫びねばならぬと覚悟していた。あの頃はまだ先殿ご存命、あの方も夫も私もまだ若かった。後で思えば、身分違いは承知であの方を私は確かに愛していた。あの時、あの方の手にかかって、私は死にたかったのかもしれない。若い頃を思い出しながら、夫の顔を見上げてみる。今生名残りに抱かれながら、私は目を瞑って夫の逞しい腰に手を回した。

この女にお手が付いたのを知り、想い断ち切れずに命懸けでこの女を願った。あの後、あの方は女をお抱きにならなかった。よほどにこの女をお愛しみなされていたのであろう。長常様はわしに譲りながらもこの女を忘れられなかった。この女とてもあのお方を忘れられなかったのは感じていた。この女は長常様と心底結ばれていたのかもしれぬ。お家が無嗣改易になるやもしれぬ窮地に陥る元凶は、あの時にあったのかと思うと不忠の極み、今更腹を切ったとてお詫びは叶わぬ。あの時、わし一人死んでいれば良かったのかもしれぬ。
また頂に昇り始めて女が声を荒げる。女は目を瞑って忘我の境にかかろうとしていた。わしは腰に力を込めて突き立てた。

明け方の頃、二人は向かい合って座る。
「あの後殿は女をお抱きにならず、お子無く逝かれた。お家はお世継ぎもなきままにお取り潰しになるやもしれぬ。そなたならお子を上げたやも知れぬ。あの時そなたをお譲りして、わしが腹を切っていればと思うと悔やまれてならぬ。思えばわしは不忠者であった。そなたも不忠を詫びる心で逝くがよい。わしはそなたを見届けてから参る。」
「次の世では、ご側室にお譲りなさいますか。」
伊久が、いたずらっぽい目で夫を見る。
「いいや渡さぬ、殿は確かに、わしに下げ渡すと言われたわ。」
「そのお言葉を聞き安堵致しました。これで心安く参れます。」
しばらくの間、二人は真顔で見詰め合った。

伊久が帯を解いて腰の紐押し下げ、前を寛げる。子を産まぬ肌は衰えず、乳房は美しい形を保っていた。腰を立て、腹を見下ろしまさぐり、用意の切腹刀を取る。顔が緊張にこわばり、胸元から紅潮始めた。懐剣の刃先一寸、伊久は未練を振り切るように突き立てる。両手に握った刃を震えながら右に引く。胸元からこぼれる片乳、悩ましくも眉間に刻む苦悶の表情。右の脇まで裂いて懐剣を抜き出し前に屈んだ。敷いた白布にゆっくりと血が広がる。
止めがままならず、悶え苦しむ妻に半四郎がゆっくりとにじり寄り抱き起こす。
「わしとてそなたを置いては死にとうなかった。よういたした、殿もお待ちであろう。」
優しく言いながら、傍らの懐剣を取り胸の谷間に刃先をあてがった。
「私はあなた様と添えて幸せでございました。」
胸にすがって、女の顔は微笑んでいた。夫の刃を受けて伊久は虚しく目を泳がせ、夫は痙攣する妻の身体を抱き続けた。

座に戻った半四郎は前肌押し開いて腹を出す。鍛えられた身体に幾筋もの傷があった。見下ろしながら腹を探る。すでに膝間は妻の血で染まっていた。
次の世でご所望あれば譲らぬわけにもいかぬかも知れぬ。よいわ、蓮の台(うてな)で三人仲良くというのも面白かろう。
遅れてはなるまいと刃を腹に突き立てた。戦傷は数知れぬ身体、槍で脾腹を貫かれた時を思い出した。激痛が走るが思い切って右に割いた。深くも開いた腹から一気に血が噴き力が失せていく。上に鍵裂くと臓腑が溢れ出すのがわかった。そのまま前に伏し手を伸ばすと妻が伏せっている。手を伸ばして意識が薄れていった。束の間の夢に、妻が長常様に抱かれていた。妻の名を呼ぼうとして躊躇われそのまま暗闇に落ちていった。

その後、御殉死いたされたのはご恩を受けた者が二人、無嗣改易と決まって御重役であった方が、御墓前で三人並んで御切腹なさいました。
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# by kikuryouran | 2006-03-19 22:48 | 心中情死 | Comments(0)

桃色の男根

切腹すると決めて、彼のYシャツだけを素肌に着けた。彼の背は高い、シャツの裾は私の膝までとどいて、袖を一折りしてやっと手が出た。胸元は私とそんなには変わらなかった。思い出してもまだ二十歳前の彼の裸体は、ギリシャの彫刻を思わせて美しくも華奢で、無駄な脂肉はついていなかった。細い腰、締まった尻、しなやかで長い脚、濃い繁みの中で男根は萎えても美しいフォルムを保っていた。硬度をもったそれは神とさえ思え、私には彼の体臭さえも芳しかった。以前に彼がくれたナイフを引き出しから取り出した。刃先は鋭く刃渡りは20センチほど、日本刀を思わせる優美な姿で、切腹するには充分と思えた。
好きな女が出来たからこの部屋を出て行くと聞いた時は、仕方ないと思った。彼にはそれが良いことだとも思ったし、恨み言を言うつもりもなかった。けど、あの言葉はきつかった。いまさら変態よばわりするなんて。彼だけには、そんな言い方をされたくなかった。その言葉がどんなに私を傷つけるかを知らないはずはないのに。打ちのめされ、悔しい思いを隠して、私は黙って彼を送り出した。

二人で暮らしてもう一年ばかり、このままでいけるとは私も思っていなかった。彼は根っからホモにはなれないとわかっていたし、彼が私をもう必要としないのも知っていた。いつかはこんな日が来ると、ぼんやりとした予感もあった。
何もかもが灰色のまま、彼の帰ってこない部屋に私は何日もこもっていた。彼を責めずに自分を呪った。彼にはきっとこれでよかったと思いながら恋しくて泣いた。彼はいつも手で慰めてくれ、私も彼を慰め、ひざまずいてよく口で受け止めた。私は彼を抱き締め結ばれて果てたかったのに、いつも身体の交わりを彼は拒んだ。でも、心はきっと通っていると信じていた。
もう何年も前、私は人並みに女を愛そうとして、男性に魅かれる自分に気がついた。自分を偽る苦しさに悩んだ末、私がそんな自分を受け入れるのにどれほどかかったろう。彼と出逢って、もう自分の気持ちを抑えられなかった。彼を愛している。それは確信といってよかった。一年ほども前の桜が咲き始めた頃、私の告白を受け入れ、愛せる喜びを彼は私に教えてくれた。そんな彼の口から出た忌まわしい言葉。自分に正直であろうとするのが変態なのか。男しか愛せない男がそんなにも汚いのだろうか。彼がその言葉を口にした時の、蔑(さげ)すんだ目を思い出して、今も惨めで悲しく辛い。私は彼を責めることなく、自分の性癖を呪い恥じた。彼からそんな目で見られる自分を許せなかった。自分を恥じ消したいと思った、存在した事さえも消してしまえればと。こんなにも呪わしく醜い身体を切り割いて、愛に殉じて死ぬ。きっと汚れた血が噴き出すに違いない。彼のいない世界では、自分にはもうそれしか道は残されていないと思った。

シャーワーを浴びて素肌に長いYシャツだけを着た。ブリーフを穿こうかと少し迷った。呪わしい肉塊を最期に切り取ってしまいたいと思った。すでに狂気になっていたのかもしれない。どうせ死体になって醜い裸で晒される、下着なんてと穿かぬと決めた。彼の写真と最期の乾杯をした。
「さようなら、お前に巡り会えて本当によかった。」
一気に飲み干すと、喉を焼いて苦い塊りが流れ落ちてゆく。別れの言葉を口にすると、笑っている写真の顔が乱れ歪んだ。

床に座って、ゆっくりYシャツのボタンを外し、裾を後ろにはねた。ナイフを抜いてハンカチに包む。見下ろして腹を撫でながら、下着を穿かなかった事を少し後悔した。濃い繁みと萎えた男根が見苦しく見えた。
切っ先を下腹に当てて力を込める。チクリとした痛みが走って血が滲む。緊張で汗が噴き出す。手が震えてズブリとは入らなかった。幾度か躊躇いの傷をつけて刃先を滑らせると、後からふつふつと血が噴き出し、握ったハンカチが赤く染まり始めた。腹に力を込め、臍の下を右の脇まで一筋切り、その下をもう一筋ゆっくりと切った。傷からは、すだれのように血が流れ出していたが、痛みは感じなかった。手がぶるぶると震えて全身の筋肉が痙攣し、頭の中の血管が切れそうに収縮を繰り返した。耳の奥で早鐘が鳴り続けている。私は彼の名を呼び続け、昂ぶりは限界に差し掛かっていた。
くさむらの中で男根が屹立していた。雁首に血がたまり、ぬるぬると濡れている。片手で握り締め、ナイフを根元に当てた。手の中で膨れた肉塊がびくびくと脈打って命を主張していた。ひと掻きすればそれですべてが終わる。忌まわしい同性愛者には相応しい死に方だろう。ナイフを持つ手が震えて定まらない。心の中で覚悟を嘲笑う声が聞こえた。恐怖の瞬間といってよかった。
鈴口先が涙を流しているように見えた。彼に握り締められているように思えて、彼の命を握り締めているようにも感じた。狂ったように指を使った。頭の中を悲鳴に似た咆哮が木霊して、白く淡い液体が噴き出した。Yシャツの裾で拭うと、血に混じった桃色の精液が、悲しくも美しいピンク色の模様をつけた。目くるめく弛緩と虚脱の中で、緊張の糸が切れたのかそのまま眠りに入ったようだ。

喉が渇いて目が覚め、水道の水をたて続けに二杯飲んだ。人の歩く音が聞こえて、外は普段と変わらない日常がもう動き始めているのがわかった。浅かったのか傷口は血がすでに固まりかけている。白いYシャツはあちこちに血がついて黒ずみ、裾にきれいなピンク色の男根が写し取られていた。脱ぎ捨ててシャワーを浴びると、腹の傷がひりひりと沁みる。腹が減ったと感じて、もう何日もまともなものを食べていなかった事に気が付いた。外に出ると歩く度に腹の傷が痛んで歩を緩めた。シャツにつけられた桃色の男根を思い浮かべ、心の殉死を遂げた気がして、脱力感が身体中を覆っていた。街中の喧騒が懐かしい気がして周囲に目をやる。すべてが新鮮に映って、何を食おうかと考えながら、ゆっくりと足を運んだ。見上げると通りの桜がほころびかけている。もう昼近くの空が眩しかった。


この作品は同性愛者の方が読むことを想定して書きました。一部に不穏当不快な表現があるかもしれませんが、決して誹謗中傷のつもりはなく、自分を偽れない男性の悲しみとピュアーな魂の苦悩を表現しようとした結果です。ご理解ください。切腹物というには逸脱した感がいなめませんが、同性愛者の自己破壊願望、偏見への悲痛な叫びが拙い文章からお汲み取りいただければ幸甚に存じます。男であれ女であれ、愛に傷ついた者の悲しみは相通ずるものだと思って書きました。(作者 拝)
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# by kikuryouran | 2006-02-14 12:39 | 同性愛 | Comments(0)