愛と死の妄想  feseppuku.exblog.jp

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by kikuryouran
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女の覚悟

夫が自決してからひと月ほどが経った。
遺品と共に届けられた私宛の遺書には、葬儀供養は無用とあった。
私はすべての弔問を断った。
遺体との対面も許されず葬礼も行わず、私は夫の死を受け入れなければならなかった。
それは私の心の中に認めがたいシコリを残した。
慌ただしい日々が過ぎると、もう秋の気配が濃く感じられる。
部屋の隅に形ばかりの位牌を置いて、私は日がな向かい合って過ごした。

戦局は私にもわかっていた。
この人は死ぬのかもしれない。
ぼんやりと思っていたことが少しづつ確信になっていった。
愛し果てた気怠るさの中で彼は言った。
「俺は腹を切る。」
彼はまだ火照る私の花芯に触れながら言った。
「私を遺して逝くの?」
しばらく見詰め合った。
「潔く俺は死ぬ・・・。」
覚悟をしておけと彼は言った。
夫が従容と切腹の座に就く想像は、不思議な晴れがましさを感じさせた。
私は引き締まったお腹に指を這わす。
「ここを・・・切るの・・・ね。」
彼はされるままになって、私の髪に手を伸ばした。
私は鍛えられた筋肉の一筋一筋に唇を押しあてる。
彼の肉体の全てが愛おしかった。
死の予感は昂ぶりを増幅させる。
勃起した彼がまた私を求めていた。
優しく指で包んでやる。
彼が切腹して、血にまみれた男根が精水を噴く想像は私の頭を真っ白にした。
それは凄惨で美しい光景に思えた。
私の記憶は何度も繰り返され、いつもそこで途切れた。

軍服姿で彼が座っている。
上着の前を開きズボンの前を折り返す。
短剣を握って、膝立ちに腰を上げる。
「見ろ!」
彼は誇らし気に私を見ながら突き立てた。
震えながら引き回す。
真っ赤な血が白い下帯を染めていく。
その時彼は白い光を放っていた。
命を燃やして、崇高な理想に魂を捧げていた。
その瞬間、これが彼の望んでいたものだと私は直感した。
男の大義は美しく死ぬためのものだ。
彼はそのために軍人になった。
私はやっと彼の死を受け入れることができた。

「妻の覚悟・・・。」
形見の短剣を見ながら私は呟いた。
刃先鋭く、冷たい光を放っている。
浮かんだ血曇りは拭っても消えなかった。
刀身に波紋なく刃渡りは八寸余り、平作りで身巾は狭い。
夫が自決用として常に身に着けていたものだ。
これが俺の覚悟だと彼はいつも言っていた。

彼はいつも、貪るように私を犯した。
それは短い命を予感しているような愛し方だった。
どれほど淫らな愛し方も私は受け入れ、私の身体には彼の記憶が刻み込まれた。
私は彼を忘れようと指を使った。
しかしそれは、彼への愛を思い出させた。
短剣が妖しい光を放って誘う。
握る短剣が夫の逞しい男根に思えた。
子宮を貫けば私は彼と一つになれる。
彼が誘っているのかもしれなかった。
自決した夫に殉じて自刃した妻は多い。
この恋しさが女の大儀なのかもしれない。
あの人は今も私にそれを望んでいるのだろうか。
「あなた・・・。」
私はもう一度愛されるために、夫の元に行こうと決心した。


支度を調えて部屋に入る。
そこはもう彼の世界につながっていた。
形見の短剣を前に置いて、しばらく彼との思い出に浸った。
悔いはなかった。
これこそが女の大義だと確信した。
死ぬための苦痛は彼と再会するための代償に思える。
夫は見事に切腹した。
同じ苦しみを味わい彼の元に行きたいと思った。
女の自害の作法を知らぬわけではなかった。
腹切る難しさも知っている。
しかし誘惑を抑えることはできなかった。
古来より女の切腹が無かったわけでもない。

お腹に刃を滑らせる。
痛みは存外軽いと思えた。
「ついに・・切った・・。」
ふつふつとふき出す血に励まされ、前に屈んで深く突き立てる。
「うっくぅぅ・・・。」
さすがに激痛が襲う。
灼熱の炎が噴き上げる。
一気に刃を走らせた。
その時私は日輪を見た。

やがて暗闇に包まれる。
「待っていたよ。」
「やっと来れたわ。」
私たちは固く深く結ばれていた。
「もう放さないで。」
私は彼を抱き締めた。
彼もまた私を強く抱き締めてくれた。

夢か現実かは、もうわからなかった。
心地良いフェイドアウトが訪れた。
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by kikuryouran | 2011-06-15 05:59 | 女腹切り情景 | Comments(13)

自決の知らせ

「本日未明、ご夫君が自決されました。」
夫の部下だった下士官が連絡に来たのはもう昼を過ぎていた。
彼は玄関で直立敬礼してそれを伝えた。
軍人の妻として、常に覚悟するように言われている。
「連絡ご苦労様でございます。」
私は気丈にその連絡を受けた。

夫の自決は軍の機密だった。
私は遺体に会うこともできず、葬儀も許されないと彼は言った。
「最期の様子だけでもお聞きできますか。」
「割腹でした。」
「お腹を・・切ったのですか。」
私はしばらく絶句した。
「見事なご最期でした。」
何故かは軍の機密にかかわるので言えませんと彼は言った。
理由は私にも想像はついた。
「本懐でありましたでしょう。」
それ以上訊く事はもうはばかられた。

数日前から夫の覚悟は気が付いていた。
何日ぶりかで、彼は慌ただしく帰ってきた。
何も言わず、そのまま私を押し倒す。
下着をとるのももどかしく私を抱いた。
私は戸惑いながらそれに応える。
まだ固い口に押し入ってくる。
押し広げられる痛みが快感だった。
彼は獣のように私を貪った。
それは明らかにいつもの愛し方ではなかった。
彼の様子から私は何かを予感した。

私は逞しい胸に顔を埋め、情交の余韻に浸っていた。
「俺はここを・・・。」
彼は自分の下腹に拳を這わした。
それは軍人としての覚悟と思えた。
私は切腹している彼の姿を思い浮かべる。
切り割かれて血まみれのお腹を想像した。

熱いものが私の中でこみ上げる。
私は彼のお腹に唇をあてた。
「その時は立派になさるといいわ。」
目の前でまた彼が勃ち上がる。
それを握ってお腹に這わした。
「私もこうして・・・。」
それは誓いの儀式と思えた。
彼と一つになって私は上昇し、そして奈落に落ちていった。
これが最後なのかもしれないと私はその時直感していた。

「自決にお使いになったものです。」
形見に渡された短刀にはまだ血がこびりついていた。
軍装拵えで家紋が入っている。
夫がいつも身につけていたものだ。

夫の死を漏らすことは許されなかった。
その夜、私は一人で形ばかりの通夜をした。
形見の短刀を前に置き、思い出に耽る。
思案に余った時、彼はこの短刀をよく眺めていた。
刃先鋭く刃渡り八寸余り、家伝の鎧通しを拵え直したと聞いている。
「腹を切り易すそうだ。」
彼は刀身を眺めてそう言った。

目を瞑ると彼の姿が浮かぶ。
短刀を前に置いて、軍服姿で座っている。
「腹を切る。」
「ご立派になさいませ。」
私が礼をして頭を上げると、彼は裸だった。
短刀はすでに抜き身で握られている。
「・・・。」
男根が濃い草むらにそそり勃っていた。
私を見ながら腹を揉んだ。
肩は盛り上がり胸は厚く逞しい。
うっすらと汗が滲んでいる。
膝を開いて引き締まった腰を上げる。
強張った筋肉が腹に浮かび上がった。

夢だとはわかっていた。
それはあまりにも男らしく誇らしい姿に思えた。
私を見ながらゆっくりと刃先を突き立てる。
男の徴(しるし)が小刻みに揺れる。
「見ていろ!」
私を見ながら彼は腹を切り裂いていく。
血が滴り股間を濡らす。
苦しそうに顔を歪めた。
臍の下辺りを八寸ばかり、一文字に切って刃を抜き出す。
短刀を前に置き、血に濡れた手で男根を握った。
私は近付こうとにじり寄る。
「お最期は私が・・・。」
その時、大きく膨れ上がった先から白い命が噴出して散った。
彼は満足そうに笑って崩れ折れた。

気がつくと暗い部屋に一人座る自分がいた。
私の花弁がぐっしょりと濡れているのがわかる。
前に置いた短刀の鞘を払う。
刀身に血曇りが残っている。
夫の魂は、切腹する姿を私に見せたかったのだろう。
彼の死をやっと納得している自分に気が付いた。
お腹に這わした男根の感触を思い出す。
あの時私は、彼と共にお腹を切ると誓ったのかもしれない。

ゆっくりと夜が明け始めた。
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by kikuryouran | 2011-06-02 04:12 | 平成夢譚 | Comments(9)