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by kikuryouran
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自宮

「羅切刑」とは男性器を切除する刑罰である。女犯戒律や男色と結びつく場合が多く、中国では広く行われ世界中に存在した。
日本でも古来より中国から羅切法が伝えられ、広く知られていた。煩悩から逃れるために自ら切除したり、子孫を絶えさせる手段として捕虜の陰茎を切り取った記録も残っている。「自宮」とは自らの意思でその切除を行うことをいう。

その若い僧は女犯の戒めを破ったと告白した。相手は檀家の後家であった。
「女には功徳でも、僧侶には許される事ではない。」
「煩悩を絶てませぬ。」
彼は苦しそうに言った。
「自宮したいと思います。」
「自ら羅切を望むというのか。」
彼はまだ三十前の若さであった。
「そなたの業はよほどに強いのかもしれぬ。」

それは修行として夜陰秘密裡に行われた。精進潔斎の後、彼は数人の僧侶に見守られて席に着いた。
「煩悩が消せぬゆえ、魔羅を切り取ります。お見届けくださいますよう。」
「よい覚悟じゃ。そなたもこれで抜けられよう。」
短刀を載せた三宝が前に置かれる。
「わかっていようが命を落とす者もおる。それも運命、御仏の御意志。手当ての支度は怠りなく致しておる。」
彼一人を残して僧侶達が席を立った。医師が手当ての支度を調えて隣室に控えている。刑罰として羅切を受ける場合は屈辱的に縛られて口を塞がれるが、自宮の場合は介添えが許された。しかし彼はそれを断っていた。
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一人になった彼は裸になり、下帯を外して胡座を組む。濃い恥毛の間から萎えた陰茎が現れる。やり方は教えられていた。魔羅を勃たせ、根元を縛って切り落とす。命の保証はない。後はもう手当てに任すしかなかった。消毒のために強い酒を陰部にかける。残った酒を一気に飲み干した。
目を瞑ってゆっくりしごく。普段ならすぐに硬度を増すものがなかなか勃たなかった。
「未練な・・・。」
気を集め、指先に力を込めてようやく勃起を果たした。そのまま放ちたい誘惑を抑えて、糸を根元に巻きつけ固く縛る。
短刀を取り、見下ろして刃を当てた。締まった腹が大きく波打つ。男根を握る手が震えている。尻が震えた。
「これでもう男としては生きられぬ。」
彼は腹を切る錯覚に捉えられた。確かにそれは男としての自決であった。

亀頭が鬱血して涙を流した。敏感な部分も痺れて感覚がなくなっていた。
「うむっ」
教えられていたように、一気に刃を引いた。痛みはなく、あっけなく血を滴らせて握った魔羅が身体から離れた。堰き止められていた精を放つ不思議な快感が全身を痺れさせた。彼はそのまま気を失った。

隣室で待機していた医師が入った時、血塗れた男根を握り締めて彼は悶えていた。苦痛はそれほどないように見えたという。
しばらく熱が出て痛みが取れなかった。包帯を取ると、陰茎が根元から消失している。縫われた傷口に細竹が差し込まれていた。尿意を感じて栓を抜くと小水が迸る。

煩悩は消えなかった。眠れば必ず淫夢を見た。勃起して握り締め、真っ赤な血と共に精を放つ。何度放っても終わらなかった。目が覚めても、自慰も出来ぬそれは狂いそうな苦しみだった。その苦しみから逃れようと彼は苦行に挑んだ。

「すべてを取るしかあるまい。」
苦しみを訴える彼に師は答えた。それは陰嚢も切除して、男としてのすべてを捨てるということだった。
「この苦しみが生きるということかもしれぬ。」
その僧はそう悟り、あらゆる荒行を果たして高僧として崇められた。彼は自ら炎に入って入滅し、その時彼は小さな箱を大事そうに抱いていたという。
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by kikuryouran | 2008-12-23 21:39 | 平成夢譚 | Comments(0)