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by kikuryouran
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会津白虎隊自刃

彼らは初めて参加した戦闘で、多くの者が死ぬのを見た。恐怖が少年達の誇りと自信を萎えさせ、雨がまた疲れさせた。ぬかるみを歩く足音は重く、時々遠くで砲声が聞こえた。
「死ぬ時は手を貸してくれるか。」
源吉は歩きながら誰にともなく言った。周囲の者達は聞こえなかったように黙って歩いた。
「安心しろ、死ぬ時はみんな一緒だ。」
前を歩く駒四郎が振り返らずに言った。

飯盛山の中腹から立ち昇る煙が望めた。それは既に城が落ち、城下が燃えているように見えたという。孤立した少年達には、会津の武士としてもう死ぬ道しか残されていないと思えた。話し合い自決しようと決まって、彼等は思い思いに散った。

「銃撃されて俺は怖かった。足がすくんで前に進めなかった。」
源吉は下を向いて駒四郎に言った。小さな声だった。
「俺も怖かった。自決すると決まって、俺はほっとしたよ。」
二人は顔を見合して笑った。互いに隣で震えていた姿を思い出した。
周囲ではもう自決の声が上がり始めた。
駒四郎が脇差を抜いて諸肌脱ぐと、源吉もそれに倣った。まだ充分男にはならぬ柔らかく薄い胸だった。左手で互いに肩を抱いた。
「これで俺たちも立派な会津の侍だな。」
刃先を上に向けて、互いに臍の上辺りにあてる。チクリとした痛みと共に刃のひやりとした感触があった。
「腰を引くな、一気に深く突く。いいな。」
膝を絡ませ、顔を上げて互いに頷く。
股間にむず痒い感覚が走る。尻の穴に力を入れた。男の徴(しるし)が帆を張った。
「お前のものが立っているぞ。」
駒四郎が笑った。
「お前こそ。」
源吉がむきになって言い返す。
「いくぞ!」
「おお!」
腕に力を込めると生温かい血が手に伝った。激痛が襲う。前の顔も歪んでいた。力を込めて胸を合わせていく。刃が上に走って胸の骨を断つ。心の臓を切り裂いて、二人の背に刃先が突き抜けた。

「俺は死にたくない。」
取り囲まれて、彼は泣きながら言った。
「会津には卑怯者はおらぬ。いてはならぬのだ。」
立ったまま両腕を取られて腹を露わにされた。
「立派に死なせてやる。」
「俺は嫌だ、死にたくない。」
無理に脇差を握らせた。
「俺達も一緒に死ぬんだ。」
「見ろ、みんな立派に死のうとしている。」
口々に励ましてやる。手を添えて腹に突き立てた。
「母上・・・。」
四人がかりで押さえつけて首を切り落とした。

座して諸肌脱いだ少年が脇差を腹に突き立てている。泣きながら引き回す。
「うむううう・・、あうううううう。・・・。」
前に屈んで肩を震わせた。
「いいか。」
後ろに立つ武治が刀を振り上げた。しばらく震える首筋を見下ろして討てなかった。
「きぇぇい。」
悲鳴のような気合と共に振り下ろした。首が前に落ち、頭部を失った身体は真っ赤な血を噴き上げながら横に倒れた。

勝三郎は深く腹を切り割いて臓腑が溢れた。茂太郎が介錯をしようとしたが、苦しみもがいて首が定まらない。
「おい、手を貸せ。」
近くで腹を切ろうとしている喜代美を呼んだ。
「足を押さえていろ、首を落とす。」
近くにいた二人も手を貸した。大柄な勝三郎を何人もで押さえつける。仰向けに寝かせて馬乗りになり、茂太郎は両膝で肩を押さえた。喉元に太刀をあてた。
「今、楽にしてやる。静かにしろ!」
見上げた勝三郎が、頷いて目を閉じた。身体の重みを太刀に預けて首を押し切った。首がごろりと落ちた。

新太郎は一人離れて座った。周囲を見渡して、誰も自分を見ていないのを確かめた。
肌を寛げて腹を揉む。小さな声で女の名を呼んだ。男の根が目覚めていた。袴の割れ目から手を入れて握り締める。目を瞑ってゆっくりしごいた。心地よい快感が込み上げた。
「義姉さん・・・。逝きます。」
もう一度名を呼んで、ふんどしの中にしたたか吐いた。悪戯をしたように周囲を窺った。
袖で刃を包んで握る。抱えるように腹に突き立てた。横に割いてから胸に刃先をあて、前に伏した。

肩に傷を負い、片手の利かぬ虎之助は手を借りていた。腰まで脱ぎ落として両膝立ちになった。
「いいか。」
向かい合わせに片膝立てた八十治が刃を胸にあてた。虎之助が手を添えて脇腹に導いた。
「腹を・・・、頼む。」
まだ肉の薄い少年の腹だった。
「苦しむとも、大きく切ってくれ。会津の武士として死にたい。」
「わかった。身体を離すな。」
虎之助が腹を前に押し出す。身体を寄せて八十治の腰紐を握った。八十治も膝立ちになって抱き寄せながら突き立てた。抉りながら斜めに割く。肉の喘ぎを感じながら、胸を合わせて刃に力を込めた。膝に生温かい血が降りそそいだ。
「うむううううう・・。」
「虎、苦しいか。」
「うぐううううう・・・・」
虎之助がしがみつくように八十治の腰を抱いた。腹は深く裂かれて、傷口からぬめぬめとはらわたが溢れた。苦しむ胸を貫いてやった。

腹を揉みながら、源七郎は前夜の事を思い出していた。
彼が出陣前に帰宅すると女が待っていた。
「あなたを男にするように、母者殿に頼まれました。」
女は彼を優しく導いて交わった。
「会津の武士として、立派に死んでくれよとのお言付けでございました。」
余韻の中で抱きながら女が言った。奥の部屋で、母は既に自害していた。
「母上・・・。」
彼は腹を切りながら女の肌を思い出していた。男が屹立していた。それはまさしく母に抱かれている夢だった。

「次の世でも逢おうな。」
「ああ、きっと逢おう。」
藤三郎が腹に刃を立てた。雄次も遅れじと突き立てる。見詰め合いながら引き回す。
にじり寄って互いの胸に刃をあてた。
「いこう!」
「うむ!」
相手の持つ刃に身体を投げ出すように刺し違えた。

貞吉は腹に突き立てようとして躊躇い傷を幾つも付けた。苦しむ声があちこちで上がり始めていた。父の顔が浮かんだ。遅れてはならぬと思った。自分だけが生き残る恐怖が頭をかすめる。死ななければならぬと思った。
喉元を突き上げた。口の中が込み上げる血の味であふれた。力を込めて突き入れた。気が遠くなった。母の顔が浮かぶ。姉が笑っていた。

儀三郎は周囲を見渡した。まだ元服前の少年ばかりだった。刺し違えた者、切腹して介錯を受けた者、ほとんどの者がもう見事に死んでいた。流れる血を草が吸い土が吸った。
「会津の武士か・・・。」
苦しむ声が聞こえた。既に腹を切った和助だった。
「あの握り飯は美味かったな。」
抱き起こすと楽しい夢を見るように彼が言った。
「ああ、美味かった。」
顔を合わせて笑った。昼に食べたことを言ったのか、遠い昔のことを言っているのかはわからなかった。胸を突いて止めを刺した。

座を占めて諸肌脱いだ。落ち着いた様子で袖を裂いて刃を巻き込む。
「人生 古より誰か死無からん 丹心を留取して 汗青を照らさん。」
腹を揉みながら文天祥の詩を口ずさむ。
伸び上がって腹に突き立てた。腰を揺らしながら横に割いた。
幼い頃から親しんだ美しい会津の風景が脳裏に浮かぶ。笑い戯れる顔が次々と通り過ぎた。
抜き出して教えられていたように胸元を貫きながら前に伏せった。

遠くで弾けるような銃声が聞こえた。風が通り過ぎて木洩れ日が差した。静寂に包まれて、もう何も動かなかった。
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by kikuryouran | 2007-11-30 04:26 | 白虎隊 | Comments(0)

峰打ちの介錯


部屋には武家風と見える女が待っていた。歳は三十には間があろうか。年増に見えてまだ若いのかもしれぬ。
「ご切腹の介錯と承っておるが。」
平四郎は座に着いて意外そうに言った。
「この首、お願いできましょうか。」
丁寧だが慇懃な言い方だった。
「ひと首一両頂いておる。」
「金子の用意はございませぬ。この簪(かんざし)でお願い申します。」
髪から抜いた簪は、細工も見事に高価なのはすぐにわかる。
「金に換えるが面倒でな。」
平四郎は、もう立ち上がっていた。
「お待ち下さい。それでは他のもので。」
「介錯はなくとも腹は切れよう。女は胸を一突きでも恥にはなるまい。」
冷たい言い方だった。
「いかにも無理を申しました。」
女は諦めたように言った。

大名の姫奥方は金子を扱わぬ。常に付き女中が世話をする。終生金子というものを見ずに過ごした女もいたという。平四郎はこの話に危険な臭いを嗅いでいた。
「平四郎、その簪はわしが金子に替えて進ぜる。そのお方に腕を貸してもらえぬか。」
この寺の和尚が障子を開けて入ってきた。
「坊主、この女性(にょしょう)は常人ではあるまい。その首を討ってこちらも無事に済む保証はない。」
「名は言えぬ。事情もまた言えぬ。この者がここで果てても、おそらくは表には出せぬ。なれど死なねばならぬなら、思うように仕舞わせてやるが情けであろう。」
「そなたが承知で、お代を頂けるなら断る理由はないが。」
古賀平四郎は渋々座に戻った。
「このような末寺に菩提の方とも見えぬが。」
「この寺に知り人が眠っております。その者に義理を立てねばなりませぬ。」
「腹を切るのは苦しい自害、どのような死に様でも義理は立とう。」
「その者は、私ゆえに腹を切りました。」
女はそれだけ言って下を向いた。


まだ日の高い秋の空は抜けるように明るかった。色付いた葉が散り敷かれた墓地の一角に真新しい墓標が立っている。享年は二十三、名は男のもの、ひと月ばかり前のものだった。
「この墓の前で致します。」
女はしばらく手を合わせた。周囲に人の気配はなかった。本堂から読経の声が聞こえてくる。
「あの読経はそなた様を送る心算か。」
「この期には心安らぐ調べ、なによりの心づくし。」
女の声は涼やかで落ち着いている。着物を脱いで傍らに寄せた。
腰紐を緩めて白い襦袢の胸元を開く。高貴な女は肌を露わすのに恥じらいはないという。仕草は優雅で手に迷いはなかった。
肌白く肉はほどよく付いている。乳房は豊かとも見えなかった。頂きの果実はまだ淡く美しく、平四郎は存外若いのかもしれぬと思った。
家紋拵えの懐剣を、ゆっくり抜いて刃をあらわした。家紋は誰でも知る大藩のもの、刃先二寸を残して懐紙で巻き込む。
「非力にて深くは切れませぬ。ただ、この者と同じ痛みを知って逝きとうございました。」
「御覧になられたのか。」
「私の前でこの者は一文字に。我が腹を割く思いでございました。」
「その者も、そなた様と共に割く思いでありましたろう。」
平四郎は墓標を見た。若者の腹切る姿が浮かんだ気がした。

「身分違いを承知で私が懸想致しました。共に死ぬべきところを、死に遅れて・・・。」
前を見ながら女が呟いた。
「この者には不憫な仕儀であったやもしれませぬ。若いに先を摘んでしまいました。恨んでいるやもしれませぬ。」
「惹かれるは前世の因縁、運命と申すもの。」
平四郎は女の後ろに立って言った。
「想いに殉じて逝けるは男にとって今生幸せの極み、その者も悔いてはおりますまい。」
「会えようか・・・。」
「喜んで迎えてくれましょう。惹かれた男女が睦むのは自然の理、想いを凝らしてお逝きなされよ。」
「嬉しい事を言ってくれる。心の迷いが晴れた気がする。」
情事を思い出すように、女が目を瞑って指を這わした。
「仏になれば身分はなく、次の世はまた継ぐと申します。恥じることではございませぬ。蓮の台(うてな)で、はばかりなくお抱きなされよ。」
肩越しに振り返った顔が恥ずかしそうにあどけなく笑った。ほころんだ顔は美しかった。
「そなたは良い介錯人じゃな。心地良く死ねる気がする。」
「そなた様の心は、この世ではすでに果てておられましょう。拙者は心が抜けた虚しい身体を切るばかりでござる。」
「確かにこの身はすでに抜け殻、手を借りて始末いたしましょう。」
覚悟がついたように、女は頷いて目を閉じた。

柔らかな風に乗って読経の声が絶え間なく聞こえる。小春日和の暖かい日差しはのどかとさえ思えた。
腰を上げて押し出した腹を揉む。もう言葉は発しなかった。さすがに細い首が緊張に震えている。なでた肩がゆっくりと息を吸った。緊張の時が流れた。
風の向き加減か読経の声が遠ざかる。一陣の風が流れて静寂が訪れた。その刹那、女が腹に刃を立てた。
「うむっ・・むぅぅぅ・・・。」
ゆっくりと刃を滑らせる。揺れる肩から襦袢が滑り落ちた。細い腕が必死に腹を割こうとしていた。首筋に汗が噴く。髪が乱れて腰が悶えた。
目を泳がせて墓の名前を呼んでいた。名を呼びながら刃を運んだ。
「そなたも・・このように・・・。」
悲壮とも艶とも聞こえる声だった。
風が止んで、読経の声がまた聞こえ始めた。色付いた葉がちらちらと降った。
右の脇まで刃が届いたのを確かめて、平四郎がゆっくりと腰の刀を抜いた。
無言で振り上げたかと思うと、一気に峰で首を打った。女の首は奇妙に折れ曲がり、後ろにのけぞり倒れた。

影から和尚が現われる。
「あの声はお主ではないのか。」
読経が聞こえる方に顔を向けて平四郎が訊いた。
「ここに人を近付かせぬために、門を締め切り、寺の者すべてに読経させておる。」
「なかなか知恵者な。」
「首を切り落とさぬのか、まだ息があるぞ。上を向いて足掻いておる。」
「息はあっても、首の骨が砕かれてすでに夢の中。絶命まではしばらくかかろう。男の夢でも見ているか、まだ腹を切り続けている心算やもしれぬ。」
奇妙に首をねじ曲げ、四肢を開いて女は全身を痙攣させていた。白い乳房が揺れる。腹の傷から血を流して、陰部の叢からは褐色の尿が漏れ出て広がった。
「こう見ると、お姫様でも変わらぬな。長引かせるのは酷くはないか。」
「切り落とせば介錯人の詮議もせねばなるまい。表に出ればそなたも俺も無事では済まぬ。」
平四郎は、わかっていようと言うように和尚を見た。
「細腕で深くはないが、腹には傷が残っている。首の骨が砕かれているのは医師ならばわかるであろうが、これなら病でも自害でも、いかようにも始末できよう。」
見下ろしながら和尚が感心するように唸った。
「書き遺しは預っておる。小坊主にそれと共にお屋敷へ走らせねばならん。」
「大枚の寄進と口止め料が入るということか。相手も口を封じようとするぞ。」
「屋根の修理にも金がかかる。此の度は、そなたにも十や二十の首代は渡してやれよう。」
「危険は承知ということか。商売上手なことだな。」
笑いながら平四郎はもう歩き始めていた。

あらぬ方を眺めながら、女はまだ息があった。夢を見ていた。明るい日の下で恋しい男に抱かれていた。ゆっくりと暗闇が訪れる。微笑みながら闇に包まれた。
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by kikuryouran | 2007-11-24 22:55 | 平四郎 | Comments(0)

畜生成敗


「ご依頼はそなた様か。」
呼び出された寺の離れ、平四郎が部屋に入ると男と女が待っていた。
「古賀平四郎殿か。据え物の腕をお借りして、首二つの始末をお願い申す。ここにおります女と、拙者の首を刎ねていただきたい」
平四郎は値踏みするように二人を見る。浪人者と見える男は三十路前、女は上の年頃か。寺には後の始末を頼んだという。
「首一つ一両申し受けるが。」
「これは我らが有り金すべて、それぐらいは入ってござる。」
男が財布を前に置いた。
「自害出来ぬご器量とも見えぬが。」
「お恥ずかしいが、われ等は不義者、色に狂うた外道でござる。人としてではなく、畜生としてご成敗願いたい。」
覚悟も出来たと見える二人が頭を下げた。
「その首の刎ね様、拙者にお任せ下さるか。」
「お任せ申す。」
「承知いたした。」
平四郎は前に置かれた財布を懐に入れた。

「房事を拝見致したい。」
平四郎は平然と言った。男と女が顔を見合わせた。
「任せると申されたはず、従っていただこう。」
否やを言わせぬ響きが込められていた。
しばらく躊躇った後、男が女の帯に手をかけた。襦袢姿で横たえる。
「色に狂うた畜生なら、恥ずかしくもござるまい。脱がれよ。」
非情な言い様に、女が覚悟を決めたようにすべてを脱ぎ横たわる。年増ながら女の身体は引き締まり、脂肉を感じさせなかった。乳房豊かに柔らかく、女陰を覆う濃い叢が目を惹いた。男は肉薄くも鍛えられたとわかる肉付き。まだ萎えた男根が股間に垂れている。
「お内儀、今生最後と心得られて抱かれるがよい。」
うって変わった優しい声だった。
「醜うございましょう。」
「男と女が睦み合う姿は美くしゅうござる。恥ずかしくはござらぬ。」
「私は淫ら鬼女でございます。地獄の業火に焼かれましょう。」
「その御仁(ごじん)にはそなたは菩薩、必ず共に極楽にお送りいたす。」
女が嬉しそうに微笑んだ。

二人はもう平四郎は見なかった。女の指が男を大事な物のように包み込む。やがて雄々しくも屹立を果たした。
「悔いませぬ。無間地獄に落ちるとも後悔などは致しませぬ。」
うわ言のように女が言ってしがみつく。
「わしとて悔いぬ。共に逝こうぞ。」
今生名残りと思えば愛おしさが募る。もう獣の如く確かめ合い、肌と肉とが溶け合うて歓喜の喘ぎを上げた。大きく開いた女の脚が男を抱え込む。柔らかい肉が下から男を呑み込むように蠢いた。

身体を貼り合わせて、二人の腰が動きを合わせて律動を始めた。
頂きに昇り詰めようとして女が見上げる。見下ろす平四郎と目が合った。男の動きが激しくなる。男が迸るのを感じて、女が男にしがみつく。抱き締めて口を吸った。
光る太刀がゆっくりと落ちてくるのを女は見上げていた。男の首に打ち下ろされた刃がそのまま自分の首を切り落とすのがわかった。口を吸い合って二つの首は重なり落ちた。

「坊主、そこに居るのであろう。入るがいい。」
「平四郎殿も気がきかぬ、庭で仕舞えばよいものを。部屋が血まみれ、後の始末が難儀じゃわ。」
「充分に布施をせしめたであろうが。」
「畳や建具も血に濡れて新しくせねばならぬ。」
平四郎は、男から受け取った財布を二両抜いて放り投げた。
「これだけあれば足りよう。衣類脇差の類も金になる。」
「これはありがたい。懇ろに弔いましょう。」
「生臭さ坊主めが。」
笑いながら平四郎が言った。
「しかし、これは極楽往生間違いなしじゃ。胴は繋がり、首も心地よさそうにまだ吸い合っておるわ。いつもながら見事な手際じゃな。」
重なった二人の首からはどくどくと血が流れ出し、脚はしっかりと絡み合わせて菊座陰部を晒していた。重なる臀部がまだ痙攣を続けている。
「情の濃い女であった。俺も廓にでも繰り出さねば治まらぬ。こちらも物要りな。」
膨れた股間を押さえて、古賀平四郎は苦笑しながら部屋を出ていった。
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by kikuryouran | 2007-11-10 18:14 | 平四郎 | Comments(0)

土壇の腹切り

牢屋敷の奥庭には、塀に囲まれた首切り場が設けられている。首を切られる者は、中央の土壇場といわれる場所で後ろ手に縛られたまま両肩を押さえられ、首を前に伸べて切られる。縛り首と言われる処刑だった。流れる血と共に、落とされた頭部は前に掘られた穴に落ちる。一太刀で首を切り落とすのは難しく、据え物斬りの達者に依頼する場合が多かったという。下使いもほとんど非人が取り仕切った。

「今日は三人か。」
古賀平四郎は、壁際に縄をかけられて座る者たちを眺めて言った。
「旦那も商売繁昌でござんすね。」
顔見知りの非人が話しかけた。首の切り賃は一人幾らと決められていた。

一人目は大きな男だった。足が震えて満足に歩けなかった。両腕を抱えられて土壇場まで引きずるように連れてこられた。後ろ手に縛られたまま獄衣の襟を寛げられ、両肩を押さえつけられた。太い首が前に突き出される。
「死にたくねぇ、助けてくれろ。」
男は泣きながら身体を揉んだ。
平四郎は揺れる首を目で追った。一瞬で男の首が切断されて頭が前の穴に落ちた。両肩を押さえる男たちは、流れ出す血が収まるまで手を緩めなかった。
後ろ手に縛られたままの胴が運び出される。血まみれの頭部が穴から取り出されて、また土壇場が整えられた。検視役の同心が見ている前で、非人たちは慣れた動きで働いていた。

目の前で見た斬首の有様に、二人目の男はもう気を失ったように押さえられた。平四郎は苦もなく首を切り落とした。

三人目は女だった。
「お世話をおかけ申します。」
落ち着いた様子で引き立てられ、会釈して土壇場に座る。
「武家の出か、見事な覚悟だな。」
「恥晒しの縛り首、お恥ずかしゅうございます。」
「拙者は古賀平四郎、名を聞いておこうか。」
「小雪と申します。」
見上げた顔は色白で細面、目鼻立ちが美しく整っている。胸元にかかった縄を緩められ獄衣の襟を開かれて肩を大きく露わにされる。抗う様子もなくされるままになっていた。豊かな乳房がこぼれた。白い肩から細い首が艶を含んで続いている。見下ろす平四郎には、女の背中の奥までが見えた。
「小雪殿と言われたか、言い遺すことがあれば聞いておこう。」
「縛られたまま首討たれるのが口惜しゅうございます。せめて腹を切りとうございました。」
見上げた目に涙が浮かんでいた。
しばらく女を見下ろしていた平四郎が、肩を押さえる非人に言った。
「手を離せ、下っていろ。」
低いが聞き返させぬ響きがあった。男達が離れて下る。持った刀で女を縛った縄を切った。
「古賀平四郎、乱心したか!」
検視同心が慌てて声をかける。
「お裁きは縛り首、縄を解くことは許されぬ。」
「同心殿はお目が遠いと見える。この女はすぐに首になるゆえに、しばらく下を向いていて頂こう。」
この場で彼の腕を知らぬ者はない。同心は黙って下を向いた。
平四郎は脇差を腰から抜いて前に投げてやる。
「助けてはやれぬ。存分にさせてやるほどの時もないが・・。」
「お情けありがとうございます。お借り申します。」
女は深々と頭を下げて脇差を取った。
座り直し、腹を寛げる。勢いつけた刃を、叩きつけるように腹に沈めて前に屈んだ。
「うぐうう・・・。」
突き出した尻を悶えさせ、腹の刃を抉りながら首を前に差し出す。
「うむううう・・・。」
平四郎の太刀が一閃して、鈍い音と共に首が落ちた。形良い尻が何度も揺れて痙攣し前に崩れた。

「旦那、いいものを見せてもらいやした。」
非人の頭が声をかける。
「ここにいる者には、駄賃を弾んで口止めを頼む。表に出れば俺は飯の食い上げだ。」
「安心しなせぇ。そうなりゃこっちも干上がりまさぁ」
「あの同心にも呑ませてやらねばなるまい。俺は今日はただ働きになる。」
「しかし、どうしてまたあんな思い切ったことを。」
「あれほどに見事な覚悟の者はめったにあるまい。柄にもなく惚れたのよ、いい女だった。」
「違いねぇ。いい女でござんした。」
まだ首から血を吐く女の身体を眺めながら、二人は手を合わした。
「さて、あいつの好物は何であったかな。」
平四郎は、同心の方に歩き始めた。
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by kikuryouran | 2007-11-08 18:04 | 平四郎 | Comments(0)

士官候補生割腹自決


「クルト士官候補生、君は本校始まって以来、最も優秀な生徒の一人だ。その君がこのような馬鹿な計画に関係していたとはな。」
指導教官が前で直立して立つ生徒に言った。
軍の反乱計画が明るみに出て、何人もの軍人が逮捕され自決していた。
「ここに居られるのは、憲兵隊本部のリン少佐殿だ。これから君はこの方の取調べを受ける。」
彼はそういうと部屋を出て行った。
ぴったりと身体に合った軍服を着た美しい女性が前の席に座っている。
「君がクルトね。こんな少年とは思わなかったわ。」
二人だけになると彼女は口を開いた。クルトは直立したまま聞いていた。

一年前から政府の情報が漏れ始め、匿名で反乱を煽動する者がネットの世界に出没していた。諜報機関が必死に探索したが、なかなかその正体を掴めなかった。張り巡らされた監視網の隙間を抜けて、反乱計画が配信され、強大な地下組織が関与していると思わせた。それは思想性も実行性もが完璧とみえる計画で、アジテーションは人々の心を充分に揺さぶるものだった。

「指導者のKというのが君で、EV計画なんて存在しないと聞いて驚いたわ。」
「最初は悪戯だったんです。政府の情報網に潜り込んで、反乱計画を夢想しました。」
クルトはそう言って苦笑した。
「その空想を信じた愚かな軍人たちが、実際に行動を起こそうとしたということね。事件が大きくなり過ぎたわ。軍人に年齢はないの。君には責任を取ってもらわなければならないわ。」
「この場で自決させていただきたいと思います。」
彼はきっぱりと言った。
「潔いのね。事情によっては死ななくてもいいのよ。」
「私はこうなることを望んで、軍人になろうと思ったのかもしれません。」
「こうなること?」
「美しく死ぬことです。」
「そうね、軍人というのは最も美しく死ねる職業かもしれないわね。」
リン少佐は前に立つ少年を見詰めて言葉を失った。彼は直立して微動もしなかった。まだ幼ささえも残すこの少年が、忘れていたものを思い出させてくれた気がした。
「若さというのは純粋なものね。」
二人はしばらく見詰め合っていた。

「汚さずに終わるのが幸せかもしれないわね。」
リン少佐は短剣を前に置いた。
「有難うございます。」
クルトは最敬礼してそれを受け取り、床に座った。躊躇うことなく上着を脱ぎ、素肌に着けたシャツの前ボタンを外す。鍛えられた美しい若者の身体だった。
「僕はこんな風に死にたかった気がするんです。」
彼はゆっくりと腹を撫ぜた。
「私も若い頃は、君のように死にたくて軍人になったのかもしれないわね。」

クルトが引き締まった腹に短剣を突き立てた。
「うむっ、うむううう・・・」
震えながらゆっくりと横に切り割く。流れ出す血が膝を染めた。彼はしっかりと前を見て姿勢を崩さなかった。
「立派な自決ね。美しいわ、羨ましいほどに。」
顔を歪めながら彼が微笑んだ。まだあどけない笑顔だった。
「楽にしてあげる。」
彼女は落ち着いた様子で後ろに立つと拳銃を取り出した。
「君は優秀な軍人になったでしょう、残念ね。」
クルトが脇から抜き出した刃を勢いつけて臍の辺りに深く突き立て、抱え込むように前に屈んだ。
「うぐぐうぅぅぅ・・・。」
銃口を後頭部にあてる。震えながら彼は最期の瞬間を待った。
リン少佐は躊躇っていた。後頭部から入った弾丸は、彼の顔に大きな射出口を開けることになる。
「その美しい顔を傷つけたくないわね。」
彼女は彼のこめかみに銃口をあて直して引き金を引き絞った。
部屋に銃声が響いて、クルトの耳の上から入った弾丸が側頭部に通り抜けて脳漿を撒き散らした。

「喜んで死を受け入れた若者を私は何人も見てきた。クルト士官候補生、君はその中でも最も美しい一人だったわ。」
まだ痙攣して横たわる少年に敬礼して、リン少佐は何事もなかったように部屋を出て行った。
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by kikuryouran | 2007-11-06 23:26 | 美しい少年 | Comments(0)

生き胴試し


旗本屋敷の脇口から入り、振袖小姓に導かれて平四郎は奥庭に通された。三十路半ばと見える奥使いの女が待っていた。案内してきた小姓がそのまま控えている。
「そなたにこの刀の斬り試しを頼みたい。」
古賀平四郎は、渡された白木仮拵えの刀を抜いて刀身を検めた。
「試し斬りは拙者の生業(なりわい)、お断りの理由もないが。鍛えも見事、手にも馴染みますが見えぬほどの傷がござる。折れるやもしれませぬ。ご承知ならお引き受けするが。」
「試しなれば、それもいたしかたありませぬ。あれを斬ってもらいたい。」
女が目で示したところに、裸の女が土壇の上に寝かされている。

「当家召使いの者、故あって死罪を申し渡した。」
「生き胴をご所望か。」
古賀平四郎は、寝かされている女を見ながら言った。
「ならば離れていただこう。生き胴は血が飛びますゆえ。」
刀身に水をかけさせ、何度か素振りをくれて寝かされた女に近付いた。歳は二十歳ばかり、顔は細面で美形といえる。杭に手足を括り付けられ、秘所さえも露わに四肢を開かれて横たえられている。まだ幼さを感じさせて、乳房豊かで肉は薄い。よほどの折檻を受けたものか、髪は乱れて身体のあちこちに血が滲んでいるのがわかる。

女がおびえた目で見上げている。
上段に振りかぶった刀をゆっくり振り下ろして、間合いを計るように女の臍に刃をあてた。
「女、そなたの胴は生きたまま二つに断ち割られる。惨いようだが苦しむことなく一太刀で終わる。」
「あなたさまは・・・。」
「古賀平四郎、祟(たた)るか。」
「あなた様にお恨みなどはございませぬ。その刀が恨めしゅうございます。」
見上げながら女が言った。離れた者には聞こえぬほどの小声であった。
「事情は知らぬが、この刀故の仕置きか。そなたの胴を断ってこの刀も折ってくれよう。それで成仏するがよい。」
「ありがとうございます。それで想い遺しはなく・・・。」
もう一度振り上げ、ここを切るというように柔らかい腹に刃を置いた。女の身体が震えて身悶えする。陰部の草叢が震えて失禁の尿が流れた。
「目を瞑っていよ。」
女が固く目を閉じた。腹が波うち震えるのを見ながら女の息を計った。振り上げて振り下ろしたのは見えなかった。女が息を吐ききった瞬間、光芒一閃して鈍い音と共に胴は腹から背まで断ち切られて二つに割れた。女は眼球が飛び出すほどに目を開き、口を開けて叫ぼうとしたが声にならなかった。血が噴き臓腑が一気に飛び散った。赤い血と腸(はらわた)が土壇の土手をうねうねと流れた。
腰を落として平四郎はしばらく動かなかった。ゆっくりと引いた刀の刃先五寸ほどが折れていた。

「折れましたが、切れ味は上、名刀でござった。」
血塗れて折れた刀を小姓に渡して、平四郎は手桶で手を洗う。
「古賀平四郎、何を話していた。」
「生き胴は祟ると申します。引導を渡しておりました。」
「わざと折ったか。」
「拙者は折れるやもしれぬと申したはず。」
「黙れ、あの業物でそなたの腕、折れるはずがあるまい。」
「折れたのは拙者の未熟、お代はいただかぬ。」
土壇で臓腑を撒き散らして、二つになった女に手を合わしながら言った。
折れるかもしれぬ、折れても構わぬというのは胴試しの常套言葉だった。しかし、折れた場合は試した者の未熟とされた。腕を恥じて、その場で折れた切っ先で腹を切った者もいた。
「未熟を恥じて腹を切るか。」
「刀を折る度に腹を切っては、試し斬りの生業(なりわい)が成り立ちませぬ。ご無礼申した。」
平四郎は平然とその場を離れた。
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by kikuryouran | 2007-11-02 09:23 | 平四郎 | Comments(0)