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by kikuryouran
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女人切腹


案内された部屋には、床を背にして女が待っていた。二十歳も半ばになっていようか。細面の美しい女だった。髪は御殿髷に纏めて白の単衣に細帯を締めている。明らかに死に衣装とわかる。
「私は当家の娘、美里と申します。故あって、女の身にて腹せねばなりませぬ。」
涼やかな声だった。
「拙者は古賀平四郎と申す者、ご依頼によりご介錯させて頂く。」
「古賀様と申されますのか、介錯を幾度も果たされたとか。」
「いかにも幾度か経験を積み申した。いささか腕に覚えもござる。差料は備前兼定の業物、ご懸念なくお任せなされよ。」
慣れた口調だった。
「頼もしいお言葉、安堵致しました。非礼な訊き様お許しなされませ。細腕にて果たせようかと心許なく・・・。」
「お覚悟あるなら造作もないこと。」
冷たくも非情な物言いだった。

部屋の中央に支度は調えられていた。白布を敷き三宝に切腹刀が載せられている。美里は落ち着いた様子で座に着いた。
しばらく躊躇って、座ったまま帯を解き単衣を脱いで傍らに寄せる。白い腰布だけになって座を正した。平四郎が無言のまま後ろに立った。
「女ながら存分に致したく、恥ずかしい姿ながらこのように。」
肩越しに振り返って女が言った。はにかむ顔が愛くるしい。
女の肌は透き通るほどに白い。首細くなで肩で脂肉少なく、乳房は形良く整っている。締まった腰と張った尻とが美しい曲線を描いていた。
「声をかけるまでお待ち下さいますように。」
女が前を見たまま頭を下げた。
「承知仕った、存分に致されるがよい。」
女が作法通りに三宝を押し頂き、腰を浮かせて尻下に敷く。切腹刀を手に柔らかい腹を揉んだ。膝割り、座を確かめるように尻を揺らし、背を立てて腹を押し出す。目を瞑って、覚悟を固めるようにしばらく想いを凝らした。
緊張の時が流れた。平四郎はこれまで刎ねた女首を思い出していた。目の前の細い首が切断されて落ちる瞬間を思い描きながら、立ち位置を確かめてもう動かなかった。

女が身体を捻じりながら脇に突き立てる。呻く声が漏れた。
「うむうううう・・・。」
白い背が震える。肩先が揺れ頭(こうべ)が揺れた。
臍の下辺りまで切り裂いて息をついた。
「うぐぐっうぐうううぅぅぅ・・・。」
苦しげな声が部屋に響く。
平四郎はゆっくりと刀を抜き、天井の高さを目で測った。
浅いと思ったのか、女が前に屈んでブスリと深く突き立てた。一気に血が流れ出し、白い腰布が前から赤く染まってゆく。
「うむうう・・・、あぁぁぁーー。」
呻き声に悲鳴が混じる。切腹刀を抱くように刀を引き回そうとして身を捩る。
「おねがい・・・もう・・・。」
女が身を揉みながら必死に苦痛に堪え、尻を後ろに突き出して首を伸べた。髪が乱れて首筋にかかる。全身に汗が噴き、小刻みに震えて介錯の時を待った。
落ち着いた様子で太刀を振り上げた平四郎が、女の首が揺れて定まらぬのを目で追った。
喘ぐ声が息をついた瞬間、女の揺れが止まる。太刀が一閃して、鈍い音と共に首が血を噴き上げながら鋭角に前に折れた。中程まで首を断たれて、膝の間に落ちた頭を抱くように女は静かになった。
斬られた首はしばらく赤い血を膝間に降らせた。むせるような血の臭いが鼻をつく。平四郎は太刀を振り下ろした残心のまま、血が広がるのを見ていた。
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by kikuryouran | 2007-10-29 08:38 | 平四郎 | Comments(1)

スクール水着の切腹 5

翌日、レイコは美希が来るか心配だった。いつもより早くプールに出た。
「レイコ先輩、早いんですね。」
美希の明るい声が響いた。美希はもう泳いでいた。
「吹っ切れたみたいね。」
「お腹の傷が沁みて痛いんですよ。」
水から顔を出して美希が笑いながら言った。
「全力で一本泳いでごらん、タイムを見てあげる。」
彼女の泳ぎは明らかにこれまでと違っていた。力強く気を抜かずに最後まで泳ぎきった。
「凄いじゃない。ベスト更新よ。」
「もうあんな悔しい思いはしたくありませんからね。」
「これじゃぁ私も抜かれるわね。競争しよう、かかってらっしゃい。」
レイコがコースに立つと美希が並んで立った。二人が同時に水しぶきを上げた。レイコは勝ったが、いつもよりも二人の差は小さかった。
「まだまだね。」
レイコは嬉しそうに言った。一緒に泳いで、昨日までの美希とは違う彼女を感じていた。
「先輩に勝って、また切腹させてやるんだから。」
「上等だね、いつでも受けて立つわよ。そっちこそ、また恥ずかしいところを見られないようにするのね。」
「今度は男子にも切腹させちゃいましょうよ。」
美希がおかしそうに笑った。

レイコは流して泳ぎ始めた。後ろから美希が随いて泳いでくるのがわかった。
競泳は孤独な競技だ。周囲を泳ぐ者はすべてが敵だった。しかし本当の敵は自分のベストタイム、スタートした瞬間から自分との闘いだった。それは際限のない自分との孤独な闘いといえた。

あの子はきっと強くなるわ、すぐに抜かれるかもしれない。また恥ずかしい罰を受けなければならないかもしれないと思った。彼女に剃られたところが水に沁みた。抜かせない、こっちがまた剃ってやるわ。負けられないわね。泳ぎながら笑みがこぼれる。
レイコは嬉しくなって速さを上げた。後ろの美希も負けずに水しぶきを上げるのがわかった。
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by kikuryouran | 2007-10-27 08:30 | 平成夢譚 | Comments(0)

スクール水着の切腹 4


「レイコ先輩、私も先輩のようになりたいんです。」
「負けて悔しいと思わないの?ゴール前に諦めない精神力があれば、私なんてすぐ追い越してしまうわよ。」
「そう言われるんですよね、コーチにも。」
美希はいつもそう言って笑っていた。

彼女も自分の弱さがわかっていた。負ける度にいつも自分を責めていた。これで自分も変われる気がした。
「私も切腹して、きっと競泳者として生まれ変わります。レイコ先輩、見届けて下さい。」
レイコはわざと裸のままで前に座った。それは、これから屈辱の罰を受ける美希への思いやりだった。レイコの胸は厚く尻も大きい、引き締まって筋肉もついている。美希に比べてもすでに出来上がった美しいアスリートの身体だった。
彼女の身体からは厳しさだけが感じられて、美希に恥ずかしさを感じさせなかった。この人は私の前にすべてを晒してくれている。自分もすべてを晒さなければならない。自分はこの人にすべてを委ねられると思った。

「悔しさを思い出しながら切るのよ。気をつけないとお腹に傷をつけてしまうわ。」
美希は紺の水着を脇から横に切り裂いた。裂かれた水着が開いて白いお腹が現れる。微かに血が噴き出しているのが見えた。
「少し切ってしまいました。浅いから痛くはありません。」
胸元から刃を潜らせて下まで水着を切り裂いた。肩紐を切り、股間を覆う部分も裂いた。
全裸で脚を広げて横たわった美希には、覚悟を決めた潔さが漂っていた。
「いいのね。」
「はい、お願いします。」
まだ柔らかい下腹部から股間にかけて、漆黒の縮れた草が覆っている。
「美希、恥ずかしいでしょ、負けた悔しさを忘れないで。あなたは負けた罰を受けなければならないの。」
ゾリッゾリッと恥部の濃い草叢が剃られていく。白い肌が震え続けた。美希は目を瞑り口を噛み締めて堪えている。
「もっと広げて、恥ずかしいところを見せるのよ。」
お尻を突き出させ両脚を抱え込ませて、わざと恥ずかしい形をとらせた。折り曲げさせると驚くほど柔らかい身体だった。女性の器官に指を添える。唇の間から美しいピンクの肉が覗いた。固く絞られた後ろの穴の周囲に刃をあてた。この罰の最も恥ずかしい瞬間だった。
「この屈辱を身体に憶えさせるのよ。ゴールの前で思い出すの。」
「はい。私だって悔しいんです。強くなりたいんです。」
美希は泣いていた、泣きながら必死に堪えていた。
初めてこの罰を受けた時の記憶がレイコに蘇った。若い娘にこれがどれほど恥ずかしい事かは、された者にしかわからない。この子はきっと強くなる。彼女はその時そう思った。
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by kikuryouran | 2007-10-26 02:32 | 平成夢譚 | Comments(0)

スクール水着の切腹 3


干してあったスクール水着を二人は着けた。まだ乾いていない水着は身体にピッタリと吸い付いた。
「私は前に紺のスクール水着がダサイと言ったことがあるの。そしたらコーチに叱られたわ。これはお前の戦闘服だってね。今日は戦いに敗れた武士の心境だわ。」
向かい合わせに座ってレイコが言った。彼女は二つ折りの剃刀を前に置いた。理髪店などで使っているものだ。
「この水着でお腹を切るわ。見ているのよ、これが競泳者の切腹よ。」
飾り気のないスクール水着が晴れがましく感じられた。俯いて指で布の重なりを避けながら水着のお腹に刃先をあてた。濡れた水着は力を入れないと切れなかった。刃を潜らせて切り裂くと、紺の水着が開いて下から白い肌があらわれた。右の脇まで切り裂いて剃刀を握りなおす。股間を包む布を切り取って、恥部の繁みを露わにした。
「美希、私の恥ずかしいところを剃ってちょうだい。」
剃刀を差し出してレイコが言った。
「私に罰を与えるのよ。」
躊躇う美希に厳しく言って、脚を大きく広げて横たわった。鍛えられた脚の間に恥部が開かれた。
「こんなところまで見られて恥ずかしいわ。でも、私は罰を受けなければならないの。」
易しく諭すような口調だった。
「私にはもう泳ぐ事は遊びじゃないの。世界に挑戦する命を懸けた闘いなのよ。負ければ切腹するか、死ぬほどの罰を受ける覚悟で泳がなければならないの。今日の私はそれをきっと忘れていたんだわ。」
自分に言い聞かせるようにレイコは話していた。
「私の身体に思い出させてちょうだい。」
レイコは処刑されるように両腕を広げて目を瞑った。

この人はこれほどの覚悟で泳いでいる。美希は自分の弱さを思い知らされた気がした。この人はきっと私にそれを教えようとしているのだと思った。後輩にこんな姿を見せる辛さを思って、もう顔を見なかった。黙って剃刀を手に取った。
ゾリゾリと音をたてながら、下腹の際から縮れた毛を剃っていく。白い恥丘が露わになる。指を添えて女性器の周囲を剃った。刃をあてられる度に身体を震わせて、レイコが恥ずかしさに耐えているのがわかった。
尻の谷間を指で広げる。後ろの穴の周りまで剃られたレイコは涙を浮かべていた。
「以前、厳しい合宿に参加したことがあるの。ノルマのタイムを出せなくて、みんなの前で同じ罰を受けたわ。あなたにはこんな姿を見られたくなかった。」
思い出すように彼女は言った。
「聞いたことはあるけど、本当にあるんですね。」
「恥ずかしくて悔しかったわ。負けた悔しさをこの恥ずかしさが忘れさせない。きっとそれが私をここまでこさせた。」
レイコはオリンピックの候補選手にまでなっていた。
「今日のタイムは自分が自分を許せないほどひどかったわ。」
まだ胸を隠している水着を引き千切って、悔しそうに放り投げた。
「美希、あなたはそこまでしなくていいのよ。水着のお腹を切るだけで。」
「先輩、私も同じ罰を受けます。」
美希は顔を上げてきっぱり言った。
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by kikuryouran | 2007-10-25 09:23 | 平成夢譚 | Comments(0)

スクール水着の切腹 2

翌日の二人の成績は惨々だった。
「一緒に切腹しないとだめだわね。」
レイコが力なく言うと、美希もため息をついて頷いた。
「そうですよねぇ。」
「帰りに私の部屋に来ない?二人で残念会しようよ。」
レイコは実家から離れて一人で住んでいる。

美希は初めて彼女の部屋に入った。
「疲れたね、お風呂を入れるわ。入って行きなさいよ。お風呂の後でビールもあるわよ。」
「水着、乾かしていいですか?」
ベランダに二人のスクール水着が並んで干された。
「私はそれに命を賭けてる。」
レイコが水着を見ながら言った。
「美希、あなたの素質は凄いってコーチも言ってるわ。」
「記録も伸びないし、私なんて・・・。」
今日の結果を思い出して美希は肩を落とした。

お風呂の後で缶ビールを飲みながら、今日の予選の話になった。レイコが水泳の話を始めるとキリがなかった。
「切腹なんて冗談ですよね。」
俯いたまま聞いていた美希がポツリと言った。
「当たり前じゃない、負ける度に切腹してたら命がいくつあっても足りないわよ。」
「でも、悔しいです。」
美希の目から涙がこぼれた。
「本当にお腹を切りたい気分です、こんな情けない成績で・・・。」
「そうだよね。私だって・・・。自分が歯痒くて情けなくて、もう泳げない気がするわね。」
二人は黙って下を向いた。
「水泳って自分との闘いなの。負けて責任を取るのは自分しかないのよね。」
レイコはうなだれている美希をしばらく見ていた。
「負けた責任は、自分が罰を受けて償うしかないわ。」
レイコは手に持ったビールを一気に飲んだ。
「よし、切腹しよう。今日の水着で罰を受けるの、いいわね。」
美希が顔を上げた。
「そして明日から生まれ変わって練習するのよ。」
「はい、私も一緒に罰を受けます。」
もう二人とも酔っていたのかもしれなかった。
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by kikuryouran | 2007-10-24 10:10 | 平成夢譚 | Comments(0)

スクール水着の切腹 1

「美希、いよいよ明日ね、予選落ちでもしたら切腹ものだからね。」
「はい先輩、ベストタイムを出しますよ。」
美希は自信ありげに言った。
明日は高校水泳総体の地方予選がある。勝てば全国大会に出場できる。
プールから上がって二人は一緒にシャワー室に入った。
「先輩こそ頑張ってくださいね。オリッピックを目指してるんでしょ。」
「私も優勝できなかったら切腹ものね。」
レイコも自信ありそうな笑いを浮かべた。

美希は中学の頃から頭角を現し始めて、水泳では県下一のこの高校に進学した。その一年上にレイコがいた。彼女は中学の頃からもうオリンピックを噂された。
「あんたはいい身体をしてるわ。もう少し精神面を鍛えればもっと記録が出るのにね。」
並んでシャワーを浴びながら、レイコが言った。
背はレイコと変わらなかった。肩幅は広く腕も長い。尻は大きく張って筋肉質な太い脚が伸びている。水泳には理想的な体形だった。
「うらやましいほどの身体ね。」
「そんなに見ないで下さいよ。毛深いでしょ、恥ずかしいんだから。」
「そうね、少しお手入れした方がいいわね。私も濃いでしょ。スク水はいいんだけどハイレグの時は気をつけないとね。」
「手入れの仕方を教えて下さいよ。誰にも訊けなくて困ってたんですから。」
二人は互いの繁みを見て笑いあった。

練習の帰りにいつも入るファミレスがある。二人はサンドイッチのセットを頼んだ。
「私はいつも鋏で刈ってるわ。ハイレグの人は剃刀で全部剃るんだって。」
レイコが笑いながら言った。
「剃刀ですか。」
「全部剃ってしまうとみんなとお風呂に入れないわよ。それに、あそこを剃っている時の姿は人に見せられないわね。」
「そうですよねぇ。」
ソーダを飲みながら笑う美希は可愛かった。彼女を好きな男子は多い。レイコも人気では彼女に敵わなかった。
「今度一緒にお手入れしようか。」
「いやだぁ、先輩。」
美希が声を上げて笑った。
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by kikuryouran | 2007-10-23 03:27 | 平成夢譚 | Comments(0)

若い客 2


私たちは、しばらく呑んで近くのホテルに入った。部屋に入ると彼は苦しそうにトイレで吐いた。ベッドに寝かせると、彼はそのまま眠ってしまった。
私は彼をそのままにして風呂に入った。湯に浸かりながら、彼は幾つぐらいだろうと考えていた。私とは一回りは違うだろう。ゆったりと風呂に入るのは久しぶりの気がして、しばらくうたた寝をしてしまった。

風呂から出ると彼は服を着たままで寝ていた。服を脱がせてやる。名前の知っている大学の学生証があった。やはり私より十三も若い。私は備え付けの浴衣で彼の隣で横になる。屈託のない寝顔を見ながら眠りに落ちた。

目が覚めるともう10時に近かった。寝ている男の寝顔をしばらく見ながら記憶を辿った。
昨夜のことが思い出された。若い頃付き合っていた男に似ていると思った。

「よく寝た。何時?」
彼は目を覚ますと、見上げながら言った。
「10時よ。いいの?起きなくて。」
「今日はもう休むからいいです。」
彼が私の首の下に腕を回した。
「もうおばさんよ。」
「おねえさんでしょ。」
彼が笑った。
若者の芳ばしい汗の香りが鼻腔をくすぐる。それだけで目の前が真っ白になった。
若い男の筋肉が私を包んだ。私の身体から力が抜けていった。

下着さえ着けずに、燃え尽きた気だるさの中で私たちは寝そべっていた。
「あれは本気だったの?」
「さあどうかな。随分前から死ぬ事だけを考えていた気がする。」
天井を見上げながら、思い出すように彼は言った。
「死ぬ前に女としようと思った。おねえさんとやって、憑いていたものが落ちたのかもしれない。」
「そうなの、よかったわね。」
「失恋したんだ、俺。惨めで悲しくて辛かった。女がわからなくなって、憎くて怖い気がした。」
身体をずらして乳首を彼に含ませた。頭を優しく撫でてやる。脚を絡ませると、萎えていたものがまた固くなっていくのがわかった。
「とっても上手だよ。あんたをふった女はきっと後悔するよ。」
彼は顔を上げて嬉しそうに笑った。

外に出るともう昼に近かった。明るい都会の喧騒は汚れた女の脚をすくませる。しばらく彼から離れて歩いた。
「きっとまたいい人が見つかるわ。元気でね。」
私は振り切るように早足で彼を追い越した。角を曲がるまで立ち止まらなかった。
もう明るい場所は落ち着かなくなっていた。薄暗い一人だけの部屋に帰って、やっと落ち着いた気がした。着ている物を脱ぎ散らかして、敷かれたままの布団に潜り込んだ。
チラッと見た男の名前を思い出そうとして思い出せなかった。自分の名前も訊かれなかったし言わなかった。所詮は違う世界に棲む男、きっともう会うことはないだろう。顔を思い出そうとしながら私は眠りに落ちていった。
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by kikuryouran | 2007-10-21 11:05 | 平成夢譚 | Comments(0)

若い客 

部屋に入ると客は若者だった。
「あら、お若いのね。私でいい?嫌なら若い子と替わろうか。」
「いいよ、おばさんでも。」
「おばさんで悪うございましたね。」
私は脱ぎながら言った。
「呑む?」
「有難いお客様ね、いただくわ。今日はもう三人相手をして疲れてたとこなの。」
私は下着姿で隣に座って煙草を咥えた。
「いいの?しなくて。お金は先に頂くわよ。」
「その気になったら頼むよ。」
彼はそれほど遊び慣れた風にも見えなかった。
「俺、もうすぐ死ぬんだよ。」
「それはご愁傷様。私だってもう死んだようなものよ。」
コップに注いでくれたビールを飲みながら言ってやる。私は本気にしていなかった。
「何もしないで帰る心算なの?お金は貰っちまったんだから。」
私はズボンを脱がせて横にならせた。
「なによ、若いのに元気がないね。」
指を使って固くさせ、腰を下ろして呑み込んだ。
「良い道具じゃないか。このままでいいのかい?上になるかい?」
彼は哀しい目で私を見上げていた。彼の手が私の胸に伸びた。
ゆっくり揺らせて締めてやる。気をやるように声を上げてやった。
「いいのかい、こっちはいきそうだよ。」
いっぱいに膨らんだものを感じながら、腰を使い始める。若い身体が反応しているのがわかった。そのまま締め付けて一気に腰を振ってやる。
「ああ、いいよ、いく・・・。」
その瞬間、彼の哀しみが私の中ではじけた気がした。なぜかそれは忘れかけた記憶を私に蘇らせた。私にしがみついて彼は放ち続けた。不覚にも気が遠くなりかけて、私は身体を覆い被せた。

しばらく抱き合ってから身体を離した。
「まだ若いんだから、死ぬなんて言うんじゃないよ。」
汚れた股間を拭いてやりながら、私は言った。
「ありがとう、おばさん。」
「お世辞でも、おねえさんって言うもんだよ。」
笑いながら言うと彼も笑った。
「初めて笑ってくれたね。いい男じゃないか。また来ておくれ、待ってるからね。」
部屋を出て行く彼に私は声をかけた。
「もう今日は上がるから、ちょっと待っててよ。ラーメンぐらい奢るわよ。」
彼は振り返って頷いた。私は嬉しくなって、急いで着替えて外に出た。
「おばさん、本当に奢ってくれるの?」
「おねえさんって言いなさい。そしたらお寿司でもいいわよ。」
「それじゃぁおねえさん。俺、お寿司の方がいい。」
私たちは笑いながら歩き始めた。もう人通りは少なかった。一緒に歩くと彼は驚くほど背が高かった。私が腰に手をまわすと、彼は肩を抱いて身体を寄せてきた。
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by kikuryouran | 2007-10-20 10:51 | 平成夢譚 | Comments(0)

悪女の顔

呆然と佇む女の足元に男が倒れていた。
「愛していたのよ、本当に。」
手に持っていた血まみれの包丁を落として、女は男の傍らに崩れるように座り込んだ。男の頭を膝に抱いてしばらく顔を眺めていた。
いい歳をした男と女が命を燃やす恋をした。互いに夫がいて妻がいた。最初は遊びの心算だったが、もう若い頃のように器用には愛せなかった。

あの人はきっと愚痴を言っただけだった。もう心を許せるようになっていたからかもしれない。私も甘えていたのだと思う。
普段なら痴話喧嘩で済んだはずが、言葉の弾みから出た別れ話に、半ばは脅し半ばは本気で私は包丁を握っていた。
「別れるくらいなら、あんたを殺して私も死んでやる。」
「俺だって本望だ。やってみな。」
彼は挑むように肩をいからせた。
見詰め合ったのは一瞬だったが、微笑みながら『一緒に死のう。』と言われた気がした。包丁を握ったまま、私はスローモーションのように彼に駆け寄った。包丁がゆっくりと彼のお腹に吸い込まれていった。

後で考えれば、あの人だってきっと本気ではなかったろう。しかし愛していると思い始めて、いつも私はこんなシーンを意識していた。こんな結末しかなかったのかもしれないと思うと、少し気持ちが軽くなった。この人だって、喜んで死んでくれたに違いない。これで良かったのかもしれない。
着ているものは返り血に染まっていた。上半身裸になって包丁を取った。彼と同じところに突き立てようとした。躊躇い傷を幾つもつけてお腹を切った。不思議なほどに痛くはなかった。

廊下に人の気配がする。気が付くと傍らに男が死んでいた。何があったのか思い出すのに時間がかかった。お腹から血を流して私はまだ生きていた。
喉がからからだった。蛇口に口をつけて水を飲んだ。体中に血がこびり付いていた。シャワーを浴びると、お腹の傷はもう塞がりかけていた。

逃げたのではなかった。死ねる場所を探しに部屋を出た。行くあてもなく電車に乗って彷徨った。数日してからやっと事件が報道された。私はもう離れたところで、関係ないような気持ちでそれを見た。私の顔が稀代の悪女としてテレビに映し出された。
「これが悪女の顔なのか・・・。」
私は不思議な思いで映し出された自分の顔を見ていた。
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by kikuryouran | 2007-10-18 03:23 | 平成夢譚 | Comments(0)

公開処刑

「もうすぐあそこで公開処刑が行われます。」
ガイドはそういってホテルの窓から前の広場を見下ろした。
この国は国交もなく秘密のベールに包まれている。しかし観光客が絶えなかった。その理由の一つが公開処刑だった。
「できれば部屋から出ないで、窓から見てください。群集が興奮して危険があるかもしれません。映像は撮らないで下さい。万一映像を外に漏らすと、国外にいても収監されます。その誓約書にもサインをお願いします。以前ここの処刑がマスコミに流れた事がありました。撮った人は国外に居たのですが、理由を問わず強制収監されました。」
「どのような方法で処刑されるんでしょう。」
「方法はいろいろです。罪の種類や重さ、身分情状でも変わります。斬首、絞首刑、磔刑、いろいろです。短剣を与えて自決を強要させる場合もあります。」
「自殺させるんですか。それが最も寛大ですね。」
「いえ、それが最も残酷です。衆目の中で、人の手を借りずに死ななければならないんですから。」
「しなかったら・・・。」
「水も食料も与えられませんから、餓死するしかないですね。気が狂って身体を切り刻んだ者もいます。自分の肉を食べた者もいました。やはり首を切り落とされるのが最も楽に死ねますから、選べる者はそれを選ぶ場合が多いですね。」
「選べるんですか?」
「身分や情状を酌量して選べる場合もあります。罪を命で償うということでは平等なんです。」


「どうだ、観光客の様子は。」
「はい、世界中で公開処刑をするところはありません。見たいという者は大金を払っても見にきます。」
「一人を殺す事で何千という国民が食べられるわけだ。」
「ただ、何度も訪れる客が同じ処刑ばかりでは飽きてしまうようです。リピーターが減っていますね。新しい処刑方法やサービスを考えないと。」
「先日提案のあった、猛獣に食わせるというのはどうなった。」
「試してみましたが、やはり空腹の猛獣はすぐに殺してしまうので趣きに欠けます。何匹も満腹にさせて同じ檻に入れるのがいいようです。腹が減ってきて得物を狙い始める緊張感がいいですね。やがて、奪い合いながら食べてしまいます。」
「プライベートサービスの方はどうだ。」
「客の好みに応じて、若い女や少年を個室で好きなように処刑させる案が有力です。市場調査では、料金はいくら高くてもいいという客がいます。それを隠しカメラで撮って、後で強請るということもできます。国に帰れば公にはできない者が多いですから。顧客管理はパスポートから行いますから完璧です。ツアーの募集ルートもほぼ出来ています。」
「死刑囚の供給はどうなっている。」
「今のところ問題はありません。治安はよくなっていますが、刑法のハードルを下げればいくらでも。自殺志願者もいますからそれを回す手もあります。違法に入国した者や観光客の中に違法行為をした者もいます。観光客の場合は行方不明にすれば問題ありません。警察と外務省には確認済みです。」
「処刑場所を何ヶ所か増やさないと観光客をさばききれないな。建設を急がせるように。」
観光局の会議は遅くまで続けられた。
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by kikuryouran | 2007-10-15 18:27 | 処刑 | Comments(0)