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ショートな妄想フィクションを書いています


by kikuryouran
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(続)買われた女

私は全裸で壁を背に立たされていた。
「お姉さん、きれいだよ。」
前に立つ少年も裸だった。勃起したペニスを私の下腹にあてて体を押し付けてきた。私たちは目を逸らさずしばらく見詰め合っていた。すぐ側で見る彼の顔はあどけなく美しい目をしていた。
「あなたになら殺されてもいい。」
「僕はお姉さんのブログを前から読んでいて好きだった。自分を売るって書き込まれたのを見て絶対買おうと思った。お姉さんに初めての人になってもらおうと決めたんだ。」
彼は私の乳房に手を伸ばし、身体に指を這わしながら跪いた。私は彼の頭を優しく撫でてやる。彼は私の陰部に口を付けていた。私は脚を少し開いてやった。
「会うまでどんな人か心配だったよ、僕はいろんな想像をしながら何度も自慰をした。思っていた通りの優しいお姉さんで嬉しかった。」
「私もどんな人かと思ってた。こんなに若いのは意外だったけど、君のような人でよかったわ。私をどうして殺すの?」
「愛しているから・・・、この手で殺してあげたいと思った。」
立ったままお腹を裂かれるのを想像して、激しく萌える自分を感じて私は膝が震えた。
「こんなに濡れるんだね。」
彼は音を立てて私の淫水を吸った。

私のブログは死と萌えの妄想に満たされていた。彼は私を愛しているから殺したいと言う。愛するから殺すという理不尽とも思える論理が、私には理解できる気がした。死こそは愛の究極の証しに違いない。

立ち上がった彼の手にはナイフが握られていた。刃先が私のお腹にあてられた。チクリとした痛みを感じて、私は背中を壁にあてて目を瞑った。
「いいね。」
「うん。」
私は微笑みながら頷いた。彼が体を押し付けてくると膚にゆっくりとナイフが食い込んでくるのがわかる。目を開けると彼の顔が近付いてくる。私は背中を壁に押し付けられ、私たちが口を合わせた時、点だけだった痛覚がお腹全体に広がってプツッと音がしたと思った。彼の片手は私の腰を抱いていた。私は両手で彼の肩を抱き寄せた。叫ぼうとする私の口を彼の口が塞いだ。彼のペニスが私の下腹を突き上げた。私は膝ががくがくと震えて、腰が砕けたように力が抜けた。

気が付くと外はもう明るかった。私はベッドに横たわって、窓から入って来る光が部屋を満たしていた。側には少年がまだあどけない顔で眠っている。そっと口付けをしたが、彼は目を覚まさなかった。毛布をはがすと私たちは裸のままだった。彼は華奢で薄い身体をしていた。勃起しているペニスを握るとさすがに目を覚ました。
「おはよう。殺してくれなかったのね。」
お腹に付いた浅い傷を見せて、私は笑いながら言った。
「気が付くと朝になっていたから。朝までの約束だったでしょ。もう一度売ってくれるかな。でも、もうあんなには出せないよ。」
彼も笑いながら言った。
「もう売ってあげない。今度は私が買ってあげる。幾らなら売ってくれるのかしら。」
「お姉さんなら安くしておくよ。」
私たちの目はもう笑っていなかった。
「それならいただくわ。覚悟なさい。」
私は彼の上に跨って、逞しいペニスに腰を下ろしていった。
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by kikuryouran | 2007-01-28 05:57 | 平成夢譚 | Comments(0)

買われた女

女が部屋に入ると、一人の少年が待っていた。
「私を買ったのはあなたなの?」
「僕じゃいけなかったかな。」
「いいえ、少し驚いただけ。メールじゃ二十歳と書いてあったし、あんなにお金をくれるのはどんな人かと思っていたから。あなたは幾つなの。」
「17・・・、いや本当はまだ16なんだ。お姉さんは二十歳だそうだけど、本当の歳を書いたら断られそうな気がしたからね。」
少年は少し虚勢を張るように言った。彼は背が高く、白いYシャツは清潔感を感じさせて、笑うと口元が可愛かった。意外に思いながらも彼の印象に女はほっとしていた。
「そうね、でももうお金も貰ってしまったし。本当は私も23よ、ごめんなさい。」
女は笑いながら言った。或る日ネットオークションを眺めていて、彼女は自分に幾らの値がつくのか試してみたいと思った。眼鏡を外し、いつもはしない化粧でブログに自分を売りたいと書いた。彼は破格の値をつけ、本気かどうか先に振り込んで欲しいとメールを出すと、本当に振り込んできた。幾度かのメールのやり取りの後、ホテルの部屋で待ち合わせた。夕方から翌日の朝まで、彼女は自分のすべてを与えるという約束だった。

「私はプロじゃないから、どうしていいのかよくは知らないの。」
女は少年の前に跪いてズボンを脱がせてやる。彼は恥ずかしそうに立っていた。まだ華奢な身体だったが、下着を脱がせると股間はもう立派な大人だった。黒々とした陰毛から男性自身は見事に勃起し、蒸れた若者の匂いで女は眩暈を覚えた。
「君はもう経験があるの?」
顔を見上げながら女が訊いた。素肌に着けたYシャツだけの姿で、彼は恥ずかしそうに首を振った。

ベッドで女は彼を優しく導いて交わり、震える体を抱きしめて彼の迸りを身体の奥まで受け入れてやった。
「お姉さんは本当に死にたいの?死にたいって書いてたね。」
気持ち良さそうに乳房に顔をつけて彼は言った。
「さあ、自分でもよくわからないの。」
女は彼の頭を撫でながら答えてやる。十幾つも上の男との情事と破局、そして自傷行為。死に憧れ試みた気持ちや死への怖れ。彼女はとりとめもなく、死についてブログに書いていた。
「お姉さんを殺したいな。」
真剣な目をして少年が顔を上げて言った。女の腹を探っていた彼の手が止まった。二人はしばらく無言で見詰め合っていた。この子は本気かもしれないと女は思った。

少年のものがまた侵入してきた。彼はもうためらいなく根元まで一気に貫いた。女は喘ぎ、そして彼の体を抱き締めて呟いた。
「殺していいのよ、殺したいんでしょ。」
少年が激しく腰の律動を繰り返した。
「いいわ、殺して、殺して頂戴。」
狂ったように女は何度も叫び続けていた。

少年の指が女の身体のすべてを確かめていた。女は恥部さえも委ねて、燃え残る気だるさの中で考えていた。『ブログに書き込みながら、自分を殺してくれる相手を私は無意識に探していたのかもしれない。自分は命までも売ろうとしていたのかもしれない。』
「お姉さんはきれいだ。」
「ありがとう。どんな風に殺したいの?」
「お腹を切り裂いてあげるよ。」
彼は女の下腹に口付けしながら言った。

部屋の灯りを落とすと、窓から月の光が入ってきた。
「僕はお姉さんのすべてを買ったんだ、命さえも。」
「そうね、私は君にすべてを買われたのね。」
二人は裸で向き合っていた。少年の手にはサバイバルナイフが握られている。
「本気なのね。」
「ああ、もちろんだよ。」
彼はゆっくりと女の腹に刃先をあてた。
「お姉さん、愛しているよ。だから殺してあげる。」
「さあ、あなたの愛を頂戴。」
女は腹を押し出してにじり寄り、少年を抱きしめた。
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by kikuryouran | 2007-01-22 18:07 | 平成夢譚 | Comments(0)

切支丹磔串刺し

共に捕らえられた者のほとんどが踏み絵を踏んだ。拷問され説得されて残ったのは彼女一人になっていた。
「ご禁制の切支丹が露見すれば、死罪は免れぬとはかねての覚悟。どのようにお仕置き下されるとも、『はらいそ』に参れると思えば怖ろしいとは思いませぬ。ましてや、デウス様と同じ磔柱にかけられてとなれば喜びさえも。」
捕らわれてからの牢内は、誰はばかることなく祈りを捧げられる場所であった。女は処刑の日まで祈りを捧げた。

「どんな手段を用いても構わぬ、あの女を泣き叫ばせよ。見る者たちの前で惨めに泣き叫ばせて許しを乞わせよ。磔柱の上で、切支丹であったことを後悔しながら死なせねばならぬ。」
「どのような手段をと申されても。」
仕置き奉行は考え込んだ。

仕置き場までは裸馬に乗せて刑場まで運ぶのが常であったが、女は後ろ手に括られて、裸素足で歩かされた。
「許しを乞えば着物も着せてやる、馬にも乗せてやる。」
恥ずかしいと泣くかと思うと、ゼウス様もこのようにお歩きなされたと祈りの言葉を口ずさんで、誇らしげに女は歩いた。竹矢来に囲まれた刑場は、見せしめのために近在の者が駆り出されていた。
「盗賊二人が、共に仕置きにかけられる。この者らにお前を衆目の中で犯させる。」
女はまだ生娘、泣き叫んで許しを乞うと皆が思った。
「この身を犯して安らかに死ねるなら、お抱きなさるがよい。」
男達は死を前にした恐怖から女を弄び慰んだ。女は盗賊二人に抗うことなく身を任せ、優しく死は怖ろしくないと慰めてやった。
盗賊二人と共に女は裸で磔柱に架けられた。両脇に並んで架けられた男達は槍で幾度も突き立てられ、泣き叫んで無惨に殺された。
「怖ろしいであろう。次はそなたを女陰から串刺しにしてくれる。許しを乞えば、胸一突きに死なせてやる。」
「苦しみ多ければ、ゼウス様に近付けましょう。」
磔柱の上から、女は神に感謝の言葉さえも口にした。槍の穂先が女陰を裂き貫き、ゆっくりと腹から胸を貫いたが、女は苦しげにも祈りを捧げ続けた。喉元から槍先があらわれた時、祈りの言葉が止んでがっくりと頭を落とした。

この地の隠れ切支丹には、女串刺しの像がキリスト像と共に秘かに守り続けられたという。
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by kikuryouran | 2007-01-17 15:22 | 処刑 | Comments(0)

続 介添え女腹切り

あれから月も変わった頃、件(くだん)の座敷で私は女と向かい合っていた。始末もついて、主(あるじ)の許に行きたいという。女は覚悟の死に装束、既に腹切る支度も調っていた。
「おかげさまにて意地も立ち、私の役目も終わりました。」
「やはりお腹を召されるか。」
「あのお方は元は武家の者ではなく、私は元からの武家者。あのお人にお腹を切らせた上は私とて。」
「菩提を弔う道もあろう。」
「先程仇を討ち果たし、既に私も咎者。ご実家様へのお詫びもございます。」
「そなたなら、手を頼むまでもなかろう。腹切るほどは手を借りずとも容易いと見たが。」
「失礼ながらお介添えの始終、隣の部屋から拝見せていただきました。恥ずかしながら、私もあのように果てたいと・・・。」
女は意味ありげに俯いて頬を染めた。

あの時、女は主(あるじ)を気遣い隠し窓から覗いていたという。抱かれ介添えられて悶える姿を見ながら、女は肌の疼きを覚えた。自分が閨の手ほどきをし、側室勤めの添い寝もして、主の身体の隅々までも女は知っていた。あのお方は、春の喜びをまだ解せぬままの体であったことも知っていた。しかし・・・。
「あなた様に介添えられ、悶え乱れたお姿はまさしく春情に狂うておられました。」
「いかにも、あの腰の震えは女の春、落花淫情の極みであった。」
「実を申せばあのお方は、春を解せぬ石女との謗りを受け・・・、埒も無い妬み苛めではございましたが、側室勤めには辛い言葉でございます。それが御最期にあのように乱れられるとは。せめて春見て逝かれたと嬉しゅうございました。」
女は思い出すように、主最期の場所を見た。俺はあの時、衣服に遮られながらも、最期の瞬間には震える谷間にあてがって精を吐いた。それをこの女は見ていたと言う。抱き締めた女の悶えをまた思い出して股間が疼くのを覚えた。
「死ぬる際の昂ぶりが、女の命を一気に燃え尽きさせたのかもしれぬ。」
「私は短いながら嫁いだことがございますが、あれほどの喜びは知りませぬ。お亡骸のお始末を致しましたが姫所は露溢れるばかりに潤い、かほどなればあのような謗りを受けることもなかったにと、私のご指南が拙いゆえとも申し訳なく存じております。恥ずかしながら御最期を思い浮かべて淫情覚え、女ならばせめて最期はあのように逝きたいものと。」
女はまた恥ずかしそうに下を向いた。

「仇を討ったと言われたが、殺められたか。」
「明日には追手がかかりましょう、手にかかりたくはございませぬ。」
女は目を逸らさなかった。すでに死は免れぬとその目は言っていた。女の命を燃やし尽くして死にたいという。死なねばならぬなら望みのままに死なせてやるのが情けであろう。俺も今一度、腹切りながら悶える女を抱きたいと思った。
「お支度なされよ。お望みに叶うかは知らず、お介添えいたす。」
俺はしばらく考えてから言った。
「お願い申します。」
体を屈めて礼をすると、女はゆっくり肌露わしてゆく。もう三十路も半ばを超えていようか。腰締まり乳房豊か、春情知らぬ身体とも思えなかった。細い指が胸元から肌撫で下ろし腹を揉んだ。躊躇うように見上げる目が妖艶に媚を含んでいた。
「交わり介添える。かくお望みであろう。」
頷いて、女は紐解き脱ぎ落とす。
俺は裸になり、後ろから腰を上げる女に膝を進め、男根を肉厚い尻の谷間にあてがった。すでに女の秘所は息づいて唇開き、熱くも吐息を雁首に吐いた。胸抱き女の握る切腹刀に手を添えて刃先を女の腹にあてる。
「参る!」
尻上げさせ前屈みに、膚を刃先に押し付け突き入ると同時に、熱き唇に猛る肉塊が侵入した。
「うううう・・・。」
前に倒れてのしかかり、刃先が肉を裂いて沈むと、男根一気に根元までも没して白い尻が揺れ悶える。腕の中で乳房震え、呻く声は苦痛ゆえとも艶とも聞こえる。
「あうううう、あううううううう・・・。」
ゆっくりと腹を割けば、震え喘ぐ声は間断なく続いた。浅くも広く血は溢れても臓腑傷つけぬほどに、脇まで八寸を超えるほど切って刃を抜いた。
「すでに腹は充分召された。後はもう・・・。」
刃傍らに置き、抱き上げて絞り芙蓉押し車と攻め立て、駒走るごとく一気に駆けさせ、朦朧として乱れ狂い、頂きもはや近いと見た。座を戻し後ろから抱き締めて刃を執って胸にあてる。
「お覚悟、よいな。」
「はい、もはや・・・。」
女は息乱れながら応える。背を抱き締めて間合いを計り、交合深く固くも犯す男根が膨れ弾ける瞬間、胸に刃を突き立てた。
「ああっ、ああああ・・・・・・。」
痙攣を繰り返しながら女の身体から力が抜けていく。ぐったりとなった身体をしばらく抱き続けて身体を離すと、詰め塞がれていた猥ら口からは淫水と男の精が混じり溢れ、血に染まる草叢を淫靡に濡らした。切腹刀を握らせ、女が独り裸で腹切る態にして伏せさせた。

夜の明ける頃、女ばかり数名が踏み込み、赤く広がる血の中に裸で伏せる姿を発見して立ち尽くした。
「表には出せぬ仕儀なれば男の目には触れぬを承知の上か、春情解さぬと嘲った我らへのあてつけか。尻突き出して菊門はおろか、濡れた秘穴までも晒した恥ずかしき姿で死ぬとは。」
「男の臭いが・・・。」
一人が女陰に手を伸ばし、指で探って女道具の中を掻き出した。
「御覧下され、死ぬる間際に男と交わっております。」
「この男を突きとめよ。事情を知られたなら生かしてはおけぬ。首は持ち帰り、お方様に御覧頂く。」
女ばかりとはいえ、荒事は慣れた様子で女の首を切り落とし、胴は秘かに庭に埋めて始末をつけた。
「あれほどにホトを濡らし顔は喜色さえも浮かべて、やはり男に抱かれ交わりながら腹切ったのであろうか。心地良くも死んだと思えば、小面憎くも羨ましいほどかな。」
首になった顔を見ながら、女の一人が呟いていた。
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by kikuryouran | 2007-01-10 17:47 | 女腹切り情景 | Comments(0)
隊長の日向内記以下、指揮を執れる者はいなかった。二十人ほどの若者が車座になってこれからの思案に各々が意見を述べた。
「山を降りれば地理もわかる、知り人もいる。味方の隊に合流して戦おう。」
「隊長を探そう。きっと近くにいるはずだ。」
言うだけ言うと皆黙り込んだ。
しばらくの沈黙が続いた後に儀三郎が立ち上がった。
「見る通り、すでに城下は火に包まれ、お城からは煙が上がっている。手傷を負った者もいる、疲れて動けぬ者もいる。俺も今一度戦いたい、しかし今敵に遭遇すれば生きて捕らえられるやもしれぬ。それだけは会津の武士として許されぬ。」
聞いている者たちから嗚咽が漏れ始めた。その後の言葉は全員が考えていたことだ。しかし言い出せなかった。
「辱めを受け名を汚してはならぬ。若輩とはいえ俺達は会津武士として戦に加わり、今ここに居る。会津の名を汚してはならぬ。潔くここで・・・。」
彼はそこで言葉を切って、覚悟を確かめるように一人一人の顔を見た。誰もが目を合わして頷いた。それを確かめてから大きく息を継ぎ、彼はしっかりとした声で言った。
「俺はここで死ぬと決めた。」
「俺も腹を切る。」
「俺もここで。」
次々に声が上がった。もう迷う者はいなかった。

飯盛山中腹の高台。そこからは会津の城下とお城が望めた。若者達は居ずまいを正し、お城に向かって別れを告げ、城下に別れを告げた。
「始めよう、次の世でもまたここで会おう。」
儀三郎が言うと、仲の良い者達が二人三人と周囲に散っていった。散った辺りで各々が死ぬ支度を始めた。しばらくざわざわと話す声が聞こえていた。腹の切り方を教えている声も聞こえた。傷ついている者は介添えや介錯を頼んでいた。共に死のうとする相手を探している者もいた。死ぬと決まって緊張が解けたのか、笑う声さえも聞こえて普段のままのざわめきだった。傷ついた者たちは手を借り、刺し違える者は手順を確かめていた。
儀三郎は、黙ってそれぞれが支度をするのを見ていた。儀三郎の側に和助が近付いた。
「にぎやかだな、一緒に死なぬか。お前となら気持ちよく死ねそうだ。」
「死ぬのに気持ちよくもないだろう。」
儀三郎が笑いながら言うと和助も笑った。
「俺に異存はない、少し待ってくれるか。仕損じる奴もいるまいが、傷ついた者もいる。確かめてから逝きたい。」
「最後までご苦労な役回りだ。つき合わせてもらおう。」
藩校日進館で幼い頃から共に学んで、気心もわかった者ばかりだった。指揮官達とはぐれると、儀三郎は信望もあり、自然に彼がまとめる役になっていた。
「お前は想い遺す事はないのか。」
周囲に気を配りながら、和助に訊く。
「俺は医家の出だ。会津の武士として死ぬなら本望かもしれん。」
「お前らしくもない、俺達には武家も医家もあるまい。」
「俺もそう言ってはきたが、元からの武家者にはわからぬかもしれぬ。死ぬとなると武家の者より武士らしく死なねばと思っていた。」
和助はそういいながら辺りを見た。
「石高はあるがほとんどが士分の出だ、どのように死のうとな。」
「潔く死ぬ。それでいいのだろうが・・・。」
儀三郎は言い返そうとしてやめた。自分は家名を傷つけぬために死ぬ。和助は武士として死のうとしている。
「俺は立派に腹を切りたい。お前の側でなら、立派に腹を切れそうに思う。」
和助の目はもう笑っていなかった。
「わかった、誰よりも見事に腹を切らせてやる。」
「最期までお前には世話をかける。」
二人は笑いながら手を握り合った。

散った者たちの中から呻き声が上がった。手を添えられて腹を切る者がいる。
「腕に傷を負いながらも、腹を切ると言ってきかぬようだ。」
後ろから二人が支え、一人が手を添えているのが見えた。違う辺りで、諸肌脱いで腹を切っている者がいる。既に臥せっている者もいた。
「和助、一巡りしよう。付き合ってくれるか。」
儀三郎が立ち上がると和助も後ろから従った。喉を突いて呻く者がいた。刺し違えて重なっている者もいた。今まさに腹を切って苦しんでいる者もいる。そこここで聞こえていた呻く声が少しづつ消えていった。若者たちから流れ出す血を、緑濃い夏草が吸った。既にし遂げている者には手を合わせ、苦しんでいる者には手を貸してやった。
元の場所に戻って来た時は、二人の手は血に赤く染まっていた。周囲からはもう呻き声も聞こえなくなっていた。倒れ伏す体もほとんど動かなかった。
「静かになったな。皆立派に会津の武士として死んだ。もう後は俺達だけだ。」
二人は草の上に座ると、諸肌脱いで腰まで充分に脱ぎ落とした。

篠田儀三郎、供番篠田兵庫二百石の次男として生まれた。幼い頃から信義に厚く、十一歳にして藩校日新館に入り、学によく才をあらわし周囲から信を集めた。
石田和助、父は侍医石田龍玄、若松の城下に住居し、和助はその次男として生まれた。母は産後の肥立ちが悪く、和助五歳のときに没した。幼時から縁者の家を転々として生母の愛を知らなかった。十歳にして藩校日新館に入り性剛直、酒をよく嗜んだ。武家の子弟の多い朋輩からは、時に身分を謗られたという。
「儀三郎、これで俺ももう武士として・・・。」
「ああ、お前が見事に腹切ったことを皆に話してやる。和助、母者にも会えるな。」
武家の厳しいしきたりの中で育てられた生徒の多い日進館では、彼は異端といえた。酒も呑むし遊びもするが学もよくできた。一時継母との折り合いが悪く、酒に溺れて生活を乱したことがある。
「堅物のお前が、俺のようなひねくれ者に心をかけてくれた。あの時、お前のおかげで俺は立ち直れた。」
周囲が離れていく中で、儀三郎は友として彼を見捨てなかった。
「俺はお前の豪放さを羨ましく好きだった。憧れていたといってもいい。」
「あの時から俺は、お前を終生の友と心に誓った。」
もう誰一人聞く者もない、心許した友の会話だった。
「和助、わかっていようが逸って深腹はするな。最期は刺し違えよう。」
「心得た。」
互いに見交わしながら、これから切り割く腹を撫で揉む。儀三郎は細く、和助は柄も大きい。共に鍛えられたとわかるが、肉薄くまだ幼さを感じさせる身体だった。さすがに二人の顔から笑いが消え、互いに緊張するのがわかる。
「生まれ変わっても友でいてくれるか。」
和助が思い詰めた声で言う。
「女に生まれれば妻にもしてやる。」
儀三郎が微笑を浮かべて応えた。
「女か、それもいいな。」
和助は呟きながら刃先を腹にあてた。
「いくぞ、後れるな。」
儀三郎がのしかかるように脇に突き立てる。和助もそれに倣った。二人は苦痛に歪めながらも顔を反らさなかった。身体を揺らしながら、そのまま一気に切り割いた。
「うむっうううう・・・・」
腹から抜き出した刃を持ち直す。
「和助、出来たぞ、見事な切腹だ。さあ、刺し違えよう。」
互いに胸に刃を受けようとにじり寄る。引き寄せ肩を抱き合って胸を合わせた。
「俺は女に決めた。妻に・・・妻に・・・、儀三郎・・・。」
「ああ、約束する、約束するぞ、和助・・・。」
耳元で囁き合って二人は抱く手に力を込めた。

時は慶応四年八月二十三日、飯盛山は蝉の声が喧しかった。
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by kikuryouran | 2007-01-07 10:22 | 白虎隊 | Comments(0)

白虎隊残照

彦四郎と祐之進は坂道を登り、やがて本道を外れて松木立の中に入っていった。山はもうすっかり秋の景色だった。視界が広がる辺りで、手に持った花を置いていく。
「虎之助と駒四郎はこの辺り、武治はここで腹を切った。」
「貞吉が見つけられたのはこの辺りだった。」
周囲を一巡りすると、花はそこここに彩りを添えた。残った花を真ん中に置いて香を焚いた。煙が花を置いた辺りをゆっくりと漂っていった。
「早いものだ、もう三ヶ月も経とうとしている。俺達も会津を追われる。」
「俺は一緒に腹を切りたかった。」
二人はしばらく物思いに耽った。
「新太郎は最後まで落ちようと言って不覚悟者とまで言われたそうだ。離れてこの辺りで一人で死んだ。あいつは命が惜しかったんじゃない。俺たちは一緒に死のうと誓っていた。あの時俺が一緒なら、真っ先に腹を切ったろう。」
彦四郎は新太郎が死んだ場所に座り込んで震える口ぶりで言うと、堪えられずに声を上げて泣き始めた。
「新太郎の腹は立派だったよ。手を頼まずし遂げていたそうだ。あの泣き虫がよくやったと思う。」
泣き続ける彦四郎から離れて、祐之進は城の方角を見ながら慰めるように言った。
新太郎は小柄でよくからかわれた。教練でも皆に遅れてよく泣いた。彦四郎が彼を庇っていたのを祐之進は思い出した。
「恥ずかしいが、俺は新太郎と契っていた。」
彦四郎は頬を染めて下を向きながら言った。衆道男色というものがあるのは知っていたが、祐之進はそれがどういうものかはよくわからなかった。ほとんどの者は、軟弱と言いながらもまだ知らぬ女への興味を自慰でごまかしていた。
「俺達は抱き合い交わった。笑うだろうな。」
自嘲気味に言う彦四郎を見ながら、祐之進は股間が疼くのを感じた。それから二人はしばらく無言になった。
「あいつは女のようにきれいな顔立ちで学問もよくできた。俺達はあいつをよくからかったが、嫉んでいたのかもしれぬ。あいつはきっとお前を思いながら腹を切った。」
「今でも恋しくて新太郎の夢を見る。あいつは立派な会津の武士だったよ。」
「俺は儀三郎を好きだった、織之助も捨蔵も和助も。あいつらといると楽しかった。出陣の時、一緒に会津の武士として死のうと誓い合った。そして俺だけが生き残った。こいつらが死んだと聞いて俺は死のうとして止められた。犬死にだと言われたよ。しかし犬死にでもよかった。あの時すぐに俺も死ぬべきだった。」
聞かすともなく祐之進は話しながら、花が置かれた場所をひとつひとつ確かめて歩いた。
「ここが悌次郎と源吉、ここで源七郎と勝三郎と雄次。」
一巡りすると、もう一度数を数えて漏れのないのを確かめた。
「与四郎、俺はこれから腹を切る。後れたがやはりここで俺も死のうと思う。」
泣いていた彦四郎が顔を上げた。
「祐之進・・・。」
秋の日はもう傾こうとしていた。

祐之進は諸肌脱いで周囲を見渡した。懐かしい顔が笑っていた。
「みんなが迎えにきてくれている。藤三郎も茂太郎もいる。喜代美も俊彦も。お前には新太郎しか見えぬのではないか。」
「馬鹿を言うな、俺にも見えるぞ。勝太郎も八十治もおるわ。」
二人は顔を見合して笑った。
「これで、俺達もみんなと会えるな。」
「負けぬように腹を切らねば笑われよう。」
「お前と新太郎はからかわれるだろう。」
「かまわぬ、もう隠さぬ。俺は新太郎と契った仲じゃ。文句を言う奴がいたら叩きのめしてやる。」
彦四郎は嬉しそうに笑った。祐之進は新太郎の顔を思い浮かべて羨ましいとさえ思った。
「さあ、逝こう。皆が待っている。」
二人は脇差を懐紙に巻き込んで腹にあてた。

山の端に日が沈んで雲が赤く染まった。暮れ残りの日が落ちて月が昇る。会津の町に灯が燈り始めた。静寂に包まれた飯盛山の一角高台に、見事に腹掻っ捌いた若者が二人臥せっていた。



作者注
この話はあくまでフィクションです。実際の白虎隊の方々の名前を使わせては頂きましたが、彼らの名誉を傷つける意図はなく、若くして会津の士魂に殉じた若者達を悼み、その死に赴く心情を表そうとしたものです。筆者の筆拙く、ご不快あればお詫び致します。
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by kikuryouran | 2007-01-04 15:50 | 白虎隊 | Comments(0)

はなむけの情け

戦支度の三人の若者は山小屋でしばしの休息をとりながら無言だった。味方を見失い、山を彷徨ってすでに周囲は敵に囲まれていた。
「俺達と歳も違わぬ会津の若者は、敵に囲まれて腹を切ったそうだ。我等も腹を切ろうではないか。」
「俺達はいいが、徳子殿がおる。」
「女でもそなた等よりは年嵩ぞ。腹を切るに不足はないわ。」
徳子と呼ばれた若者が言い返した。女ながら剣に覚えもあり、男袴に髪も結い直して凛々しい戦支度であった。

会津の近藩でも若者達が死を賭して参陣した。徳子は十八男勝りの性格、子供の頃から男にひけをとらなかった。信二郎は二才下、小十郎もまた同年、三人は幼い頃からの馴染みだった。喧嘩もしたが仲もよく、兄弟のように育った。二年前、徳子は家中の武士に嫁いだが、夫は一年ほどして京で横死を遂げ実家に返されていた。藩存亡の時至り、信二郎小十郎は若者男子として、徳子は婦女子として戦に身を投じたが、乱戦に追われる内にいつか三人だけが取り残された。
「この上はどこまでも生死を共にしようぞ。」
信二郎の言葉に二人は頷き、行を共にしてここまできた。追われるように山に入って日も暮れかけ、山小屋を見つけて休息をとった。外は微かな月明かり、灯りを覆って漏れぬように気遣いながら息を潜めた。

各々出陣する時から生きては帰らぬ覚悟、一度死のうという言葉が出るともう覚悟は定まった。
「私は女の身、敵に捕らえられ辱めを受けてはなりませぬ。ここで腹切ると決めました。」
「徳子殿が同意なら異存はない。俺もここで潔く腹を切る。」
「よし決まった。三人共にここで腹を切ろう。」
三人車座で見交わし、覚悟を確かめ手を取り合った。
「私が年長、女の身で死に遅れてはならぬゆえ先に参ります。」
男姿の徳子が胸元押し開き、下腹大きく露わにすると、前の二人が驚いた風に見詰めていた。
「幼い頃は共に裸で泳いだ仲、女の身体が珍しいのか。」
徳子が笑いながら二人を見た。
「私らはまだ女を知りませぬ。」
二人は目を反らして俯いた。
「弟とも思い、気安いばかりにこのように。そなたらは女の肌を知らず死ぬのか。もう立派な男(おのこ)であろうに。」
徳子はしばらく考えてから腰紐を解き始めた。
「私は既に後家の身の上。よければ、今生名残りに抱くがよい。」
袴下着も脱ぎ落とし、脱いだ着物を敷いて横になった。二人は顔を見合し、躊躇い下を向いていた。
「知らぬ仲でもない。ましてや共に死のうとするのではないか。信二郎殿からおいでなさい。小十郎殿は呼ぶまで外に。」
名指されて信二郎がにじり寄り、小十郎は外に出た。
徳子は優しく教え導いて体を開いた。決して淫ら心からしたことではなかったが、夫を失ってから一年の歳月、涸れた草木が水を吸うように若者の精を吸った。二人の若者は交互に何度も果て、やがて三人は重なり抱き合ってしばらくのまどろみを見た。
月が傾き、夜明けが近いと教え急かせた。身仕舞い正した徳子が、改めて切腹の支度をする。
「今生のはなむけでした、そなたらはもう男(おのこ)になられた。立派に最期を飾られよ。先に参ってお待ちしております。」
凛々しいと見えた男姿も今は艶かしく、二人に見守られて前を寛げる。胸元からこぼれる乳房肌露わに押し開いて、未練見せずに脇に突き立てた九寸五分苦しげにも引き廻す。言葉なく二人は見詰めていた。
「あむぅぅ、むううう・・・。」
徳子は抜いた刃を前に体を起こし、膝に手を置き背を立てた。臓腑はあらわれぬほどながら切り口広く、脇から脇に八寸ばかり、臍下は血に濡れて見事な切腹。
「見るほども怖ろしくはありませぬ。最期は武士の情け、二人の手で送って下さるか。」
苦しげな声で二人を見る。信二郎が背から支え抱き、小十郎が前から胸に刃を当てる。導きながら急所を教えて小十郎を抱き寄せれば、刃は胸の谷間を裂いて心の臓までも貫いた。挟まれ抱かれ、徳子は肉震わせ声を殺して虚しくなった。

徳子の横たわる姿を見ながら、二人は女の匂い柔肌、交わり果てる時の苦しいほどの快感を思い出していた。
「楽しかったな。生まれ変わっても俺はこのように生き、このように死ぬ。」
「幼い頃から俺はこの人を姉とも思い、憧れていた。」
「俺もだ、美しい人であった。また会えると思えば、黄泉とても怖ろしいとは思わぬ。」
「負けずに腹掻き切って果てようぞ。」
どちらからともなく頷き合い、向かい合って諸肌脱いだ。まだ十六の身体は幼さを残しながらも、すでに胸は男の逞しさを感じさせた。
「後れるな・・、逝こうぞ。」
信二郎が腹に脇差突き立てて顔を歪めた。小十郎も負けじと脇に突き立てる。
「うむっ・・、うむうううう・・・。」

月傾き空白く明け始めて、武運ここに尽きるを知る。
腹割いて友逝き、また腹を割く朋に倣う。
生を享けて十有余年、今まさに義に殉じて刃を執る紅顔の若者。
武士として死ぬるを望み、腹を割くは美しくもまた悲壮。
夢は故郷に遊び、また友とまみえんと腹を屠る。
既に情を知る男(おのこ)勃ちて逞しく、血は淋漓流れて白き肌を伝う。
「さあ、刺し違えて共に逝こうぞ。」
「また次の世で会おう。」
「ああ、必ずな。」
苦はすでに消え、情を交わす喜びを思い恍惚の境。
来世を約して迎え導く血濡れの刃が、互いに抱き寄せる胸を切り裂いて背までも貫いた。

名を残せし白虎隊と共に、残さぬながら名を惜しんで幾多の若者が屠腹して終わる。
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by kikuryouran | 2007-01-02 16:59 | 白虎隊 | Comments(0)