愛と死の妄想  feseppuku.exblog.jp

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by kikuryouran
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奥方様御自害

夜陰、皆が寝静まった頃、私は奥方様の寝所に呼ばれておりました。
「参りました。」
「待っていました。入るがよい。」
中に入って戸を閉める。
「人は遠ざけてあります。ご苦労ですが見届けて下さい。」
奥方様は白単衣、前に懐剣を置いて閨布団に座しておられました。見ればひと目で御自害とわかる。事情は心得ているゆえお止めもならぬ。しばらく無言で見詰め合い、頷くしかなかった。
「御介錯は。」
「手は借りぬ心算ではあるが、見苦しいようなら頼みます。」
「お供は叶いましょうか。」
「供は要らぬ。後の始末が済めば、生きる道を探すがよい。」
「此度の御生害は、お側の私にも責めのある事。お供のお許しがなくとも・・・。」
しばらく考えておられましたが、やがて・・・。
「そうですか・・・。では、望みのように。」
「ありがとうございます・・。」
言葉を交わしたのはそれだけでございました。

膝を縛り胸を押し開げられると、白い谷間があらわになります。鞘を払った懐剣の刃先が、仄暗い灯りの中で妖しくも光っておりました。見下ろしてしばらく、心の臓を確かめるように胸元探られて、袖で包むように刃の中程を握られ、胸にあてられます。御最期に顔を上げて目を合わせたお顔は、忘れられぬほどの美しさでございました。
目を閉じて気を満たされます。瞑目数瞬とは申しましても、息も詰まるような長い時であった様に思われました。懐剣の柄を膝に逆立て、胸を反らせてゆっくり前に屈まれました。前に座る私には、胸の谷間の奥が覗けて、豊かな乳房が悩ましくも見えたものでございます。肩を震わせながら刃先に胸を押し付けられて、前に身体を預けてゆかれます。刃先がゆっくりと白い肌に沈んで、血が伝い滴るのが見えました。膝が赤く染まり始めて、腰全体に広がってゆきます。前に屈み伏せ、悲しげにも苦しそうな呻き声を立てられました。
「ああ・・うむむぅぅ・・・・。」
お背が悶え喘いで、突き出したお尻がゆれ痙攣を繰り返し、やがて斜めに崩れられました。

呻き声が絶えるまで私はそのまま動けませんでした。息が絶えたのを確かめ、お姿を整えて旦那様にお知らせ申しました。旦那様は起きておられて、すぐおいでなさいました。
「そうか、見事に仕舞うたのう。」
「奥方様は御潔白でございました。」
「わかっておる。わしは疑うたこともないわ。しかし、女があのような噂を立てられては、武家にはこれより仕様がなかった。無念であったろうがな。」

朝のまだ明けぬ頃の墓地に女が訪れた。片隅で帯を解き、衣類をたたみ、書き遺しを置いた。死に装束で新しい墓標の前に額ずく。
「お側にありながらお守りもならず、腹切りお詫び申し上げます。」
胸元押し広げて両袖を抜く。肌着の前を開き、胸元の双丘から下腹までも露わにした。見下ろして、脇肌から臍の下柔らかい小山の辺りを右脇まで撫で揉み、しばらく瞑目して気を満たせる。まだ春を知らぬ乳房は形よく整い、脂肉少なく引き締まり、白き柔肌が白み始める景色に美しく浮かび上がった。懐剣の刃を懐紙に巻き込み、前に立つ新しき墓標を見る。
「参ります。」
膝を割り座を確かめて腰尻を上げる。伸び上がったと見えると、くぐもる気合の声を上げた。
「うむっ、うむむむうううう・・・。」
首肩が悶え揺れ、苦痛の激しさをしのばせる。腰を揺らせ、一文字に切り裂く腹から血が流れ出す。静かな墓地に女の苦しみ喘ぐ声が響いた。抜き出した刃を胸元に当て、前に身を投げる。しばらく悶え苦しんでやがて動かなくなった。

すでに事情は聞いているのか、静かになるのを待って僧侶が近付いてくる。
「見事に仕舞われたな。」
息が絶えたのを確かめて経を読んだ。
寺役人が呼ばれてその場で検死が行われた。
「書置きを読めば事情もわかるが、検死吟味は決まりゆえ。」
寝かして腹の傷を確かめる。腰巻は用いず、恥部はふんどしで包んでいた。すでに血で赤く染まっている。
「まだ若いに、女ながらも見事な腹切りでござるな。」
胸に刺さった懐剣を抜くと、血がゆっくりと流れ出す。刃は五寸を超えて乳房の下にもぐっていた。腰紐切り、前を開いてふんどしを外す。血まみれの四肢を開いて切り口を計る。
「用意はよいか、始めるぞ。髪は武家髷の女、身の丈は五尺二寸、細身。」
書き役が書くのを振り返って確かめる。
「突き立ては左脇に深さ一寸ほど、切り終わりは右に浅くも五分ほど。内腑もいささか覗いておる。臍下五分の処を通り切り幅八寸右上がり。抜き出して胸元左乳房下右寄りの辺りを、斜め上に五寸突き通しておる。刃先は上向き、九寸五分懐剣拵え中程を懐紙に巻いて、突き立てたまま両手で握り締めておった。躊躇い傷はないような。」
側で書き役が控えてゆく。慣れた様子で秘部に指を挿し込む。
「まだ温もりが残っておる。肉も柔らかい。息絶えてまだ一刻も経たぬほどであろう。淫ら口内湿るが未通じゃ。尿水漏れは少量、菊門開くが汚れておらぬ、死ぬ直前に手水を使ったとみえる。覚悟の自害に紛れもない。」
確かめるように書き役を見る。淫ら心を感じさせぬ事務的な言い方だった。手桶で手を洗い、書き留めたものを確かめる。
「検死はこれで済み申した。後はそちらでよいように。」
立ち会う僧侶に言うと、遺骸に手を合わせて役人は帰っていった。

女の身で追い腹とは、武家の勤めも惨いもの。すでに暇(いとま)をとらせ、縁無い者ゆえ無縁の墓にでも葬れと、主家では冷たい応対であったとか。美しい女であったが惜しい事じゃ。僧侶は寺男に遺骸を無縁墓に葬らせた。
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by kikuryouran | 2006-06-04 15:51 | 女腹切り情景 | Comments(0)