愛と死の妄想  feseppuku.exblog.jp

ショートな妄想フィクションを書いています


by kikuryouran
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カテゴリ:心中情死( 34 )

紅葉山心中


細い山道を、彼は無言で前を登っていく。
私は、揺れる彼の背中だけを見て歩いた。
しばらく歩いて、小さな滝壺の傍らに出る。
私が草の上に横になると、彼が覆いかぶさってきた。
彼の後ろに、紅葉に彩られた山と小さな空が見えた。
もう私は、すべてを委ねて目を瞑った。


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by kikuryouran | 2015-11-05 00:28 | 心中情死 | Comments(0)

幸せな朝の気配


この世で添えぬのなら、いっそ死のうと二人は決めた。
覚悟を確かめ合い、何度も愛し合って眠ってしまった。
女が目を覚ますと、男はまだ眠っていた。
彼女はキッチンに立って、彼のために食事の支度を始めた。
男は心地良い音と匂いで目を覚ました。
幸せな朝の気配を聞きながら、死にたくないと彼は思った。


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by kikuryouran | 2015-10-08 02:00 | 心中情死 | Comments(0)

少し遅参


「貴方の手で死なせて。」というのが彼女の口癖だった。
「一緒に逝こうな。」と私が言うと彼女は嬉しそうに頷いた。
腕の中で息絶えたのを確かめてから、私はゆっくり結合を解いた。
病み衰えていた彼女が、若い頃のように美しい死に顔に見えた。
私は彼女の姿を整えてから医者を呼んだ。
「俺は少し遅れる。」と私は彼女に言い訳をした。


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by kikuryouran | 2015-10-03 01:40 | 心中情死 | Comments(0)

心中の傷痕



十年ぶりの再会だった。
「時々、まだ痛む気がするの。」と女が言った。
女の首にはスカーフで隠した傷痕がある。
「俺も・・」と男は腹を撫でた。
それだけで彼らには充分に思えた。
二人には心中に失敗した過去があった


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by kikuryouran | 2015-09-13 11:15 | 心中情死 | Comments(4)

運命の鍵と鍵穴


鍵穴に、ピッタリあった感じと言えばわかってもらえるでしょうか。
彼と初めて交わった時、私の襞のすべてと彼の凹凸がビッタリと噛み合ったのがわかりました。
私は彼が運命の人だと確信しました。
そしてその時、彼も同じことを感じていたのです。
あの瞬間から、二人はもう離れられなくなりました。
私達は今、一緒に死ぬことを至福の喜びと感じているのです。


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by kikuryouran | 2015-09-12 00:48 | 心中情死 | Comments(0)

安らかな時間


彼は若い女の首に手をかけて絞め続けた。
冷静になった彼の前に、裸の女が横たわっていた。
結局彼に残ったのはその美しい死体だけだった。
夜が明けるまでの数時間、彼女を見てぼんやりと過ごした。
それは彼の人生で、最も安らかな時間に思えた。
彼は律儀に服装を整えて、三十メートル下の道路にダイブした。

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by kikuryouran | 2015-08-29 03:10 | 心中情死 | Comments(0)

心中未遂


「苦しませないでね。」と言いながら、睡眠薬で彼女は眠りに落ちた。
美しい寝顔は心中をためらわせた。
気が付くと俺は病院のベッドに寝ていた。
彼女が覗き込んで、「一人で死のうとしたのね。」と言った。
「君を殺せなかった。」と俺は目を逸らせた。
「私、やっぱり死にたくない。」と彼女は俺の手を握った。

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by kikuryouran | 2015-08-28 11:56 | 心中情死 | Comments(0)

密通の制裁


村の広場の真ん中に大きな銀杏の木がある。
ある朝、二人の男女が裸で首を吊って発見された。
風に揺れて二人の体は時々触れ合った。
「心中だな。」と村長が言った。
女はその村長の嫁、男はその家の使用人だった。
医者が適当な病名をつけて死亡診断書を書いた。

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by kikuryouran | 2015-08-18 01:26 | 心中情死 | Comments(0)

情事の始末


愛しているわと叫びながら、女は男の身体を刺し続けた。
緊張の糸が切れて女は気を失い、気がつくと男は血まみれでもう動かなかった。
返り血を洗い流して、強い酒を飲みながら死んだ男をしばらく眺めていた。
大した男でもなかったけれど、あんな別れ方は女のプライドが許さなかった。
逃げる心算も自首する心算もなかった。
下着姿で、女は短刀を自分のお腹に突き立てた。

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by kikuryouran | 2015-08-05 18:08 | 心中情死 | Comments(0)

不義の始末


女は三十路、若者はまだ二十歳前だった。
この美しい若者が本気で自分に恋をしたとは、彼女はまだ信じられなかった
「あなたまで死ぬことはないのよ。」
その言葉は最後に彼を試したのかもしれない。
それでも彼は見事に腹を割き、立派に不義の始末をつけた。
女は男を見届けて、満足そうに自分も腹を切った。

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by kikuryouran | 2015-07-31 14:00 | 心中情死 | Comments(0)