愛と死の妄想  feseppuku.exblog.jp

ショートな妄想フィクションを書いています


by kikuryouran
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カテゴリ:男のharakiri( 7 )

愛の証し


「命懸けであなたを愛しています」と男が告白した。
「それならここで証しを立ててごらん。」と女は冷たく言った
彼は躊躇うことなくその場で腹を切った。
男の苦しみ悶える姿を見ながら女が言った。
「お前の愛を信じてあげるよ。」
女は彼に優しく口付けをしてやった。


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by kikuryouran | 2015-10-15 03:01 | 男のharakiri | Comments(0)

皺腹

「人生五十年・・・」、『敦盛』の一節を口ずさみながら諸肌脱ぎ落す。
もう若い身体ではなかった。
皺腹を撫で下ろしながら、桜散る春の景色を思い描いた。
若者の如く愛に殉ずる妄想は、恥ずかしくも男であることを思い出させた。
慰めは間遠になっても、昂ぶる想いは変わらなかった。
時は重陽菊花の季節、共に散る夢を見て逝かん。

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by kikuryouran | 2015-09-07 03:22 | 男のharakiri | Comments(2)

或る軍人の遺文

開戦の責任は軍にあり、敗戦の責任もまた我ら軍人が負うべきものである。
自分はここに一命を以てその責任の一翼を担う。
身命を捧げて重責を全うするは軍人の本懐にして、喜びとするところ。
散り逝きし英霊と国民に対し、我が非才不明を詫びて潔く腹を割く。
国を窮地に陥れし罪は万死に値すれど、願いは国家悠久の安寧を祈る。
想いは断腸なれども、心清明として想い遺す事なし。

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by kikuryouran | 2015-08-14 01:45 | 男のharakiri | Comments(0)

終戦記念日

今年もまた8月15日がやってくる。
あの日、軍人であった私の祖父が自決して国に殉じ、祖母は夫に殉じて自害した。
その時十五歳だった母は、気丈にも二人の最期を見届けた。
毎年この日が来ると、彼女はその時の様子を今も語り続ける。
祖父は見事な切腹、祖母は懐剣で胸を突いて死にきれず、母が介錯したという。
今年もまたあの日がやってくる。

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by kikuryouran | 2015-08-13 17:46 | 男のharakiri | Comments(0)

切腹前夜


男は翌日死ぬことが決まっていた。
わしが死んだらお前はどうすると訊かれて、妻が再婚いたしますと応えた。
「他の男にやりとうなければ、その手で殺して逝かれませ。」
女はからかい挑むように言って背を向けた。
男はその場で女を殺したい衝動と闘っていた。
その時女は、男の手で殺されることを願った。

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by kikuryouran | 2015-08-10 08:33 | 男のharakiri | Comments(0)

老人の未練


猪狩将監五十才、島田嘉介十九才、二人は並んで殉死の席に着いた。
「将監様はそのお歳なれば、世の春秋を満喫され、想い遺しはございますまい。」
「嘉介殿には、まだ春秋を知らぬゆえ、一途に死ねましょう。」
若くして死ぬ幸せは、失うものが少ないことだ。
若者は潔く死ねるが、老人はただ運命を受け入れて死ぬだけである。
老人がこの世に残す未練を、彼は理解することができない。

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by kikuryouran | 2015-07-25 11:16 | 男のharakiri | Comments(0)

皺腹

「貴女様への淫ら懸想断ち難く、腹切りお詫び申し上げます。」
彼はそう言って礼をした。
「そなたの想い見せて貰いましょう。」
立ち会いは姫一人、一間余り離れて座している。

肩から脱ぎ落とした白衣の袖を膝に敷き込む。
鍛えられたとわかる肩と胸、見下ろして引き締まった腹を揉んだ。
家伝来の備前長船尺三寸、刃先を残して懐紙に巻き込む。

「参る。」
刃先を滑らせて脇から切り入る。
御前での覚悟の切腹、無念腹になってはならぬ。
浅ければ苦痛は少ない、甘美陶酔の痛みだという。
左脇から下腹八寸余り右脇までも切り割いた。

緊張と失われた血が、意識を朦朧とさせた。
俺は今、姫の前で切腹している。
それは彼が長い間夢見たことだった。

彼は欲情の兆しを感じた。
手を股間に這わせると、彼のそれはもう硬度を持って勃っている。
血に濡れた指がぬるぬるとそれを握った。
「果てるがよい。」
姫の声がした。
握っているのが自分の指か姫のそれかはもうわからなかった。
苦しみはなかった。
長い間幸せな夢を見ていたように思った。

姫が慈悲の刃で介錯をされ、彼の魂は一気に宇宙に弾け散った。
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by kikuryouran | 2012-09-11 03:50 | 男のharakiri | Comments(20)