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by kikuryouran
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カテゴリ:平四郎( 7 )

不義妻始末

招ばれた寺の離れ座敷、平四郎は女と向かい合っていた。
昼下がりの静けさの中で、獅子脅しが石を叩いている。
「和尚様とは御昵懇とおうかがいしておりました。」
彼は女の素性さえも教えられてはいなかった。
女は三十路にかかった頃か。
目に哀しげな色が漂い、粗末な装いながら女の艶を感じさせた。
「自害に手をお貸し下さるとか。」
古賀平四郎、据え物切りを看板にして試し斬りや介錯を請け負っている。
「首一つ一両頂戴しておる。」
女が懐紙の包みを前に置く。
作法が染みた手の捌きと見えた。
しばらく考えてから、彼は包みに手を伸ばした。
「場所と時刻をお聞きしようか。」
「この裏手の墓地にて一刻ほども後。」
「どなたのご自害か。」
「お手を煩わさぬ覚悟ながら。」
女が自分の腹に拳を這わした。

まだ暮れるまでには間があった。
空は澄み切って高く、時々鳥の声が聞こえた。
和尚の配慮か墓地に人影は見えなかった。
まだ新しい墓標の前で女が端坐していた。
白単衣肌着に細帯、長い髪は櫛笄を外して紙縒りで纏めている。
すでに死に装束とわかる。
「女の腹切り、御不審でございましょう。」
「武家の覚悟なれば止める心算はない。」
「前の墓標は夫であった者。私は不義を犯しました。」
女は呟くように話し始めた。

男と共に逐電して一年ほどが経った頃、縁者から送ってきた金を持って男は姿を消した。
夫に詫びを言いたくて、彼女は戻ってきた。
「夫の手で死にたいと思いましたが、それは自分への言い訳。恋しかったのでございます。」
夫は女が逃げた後、お役を辞し縁戚の者に家督を譲った。
「女敵討ちの願いも出さず、私が戻る少し前に自害したそうでございます。」
戻ってきてその話を聞き、女は自分の罪の大きさを知った。
「不義の相手はつまらぬ男でありました。」
思い出すように彼女は言った。

夫の腹の切り様はすさまじく、腸を引きずり出した無念腹。
見つかった時はまだ息があった。
長い間苦しんで死んだ。
書き置きはなく、前に手鏡が置かれていた。

「気の弱いばかりの人でした。腹を切れようとは思いませんでした。」
よほどに私を恨んでいたのだろうと女は言った。
「もう私には、あの人に詫びて腹を切る他には道がないのです。」
前の墓標を見ながら腹を撫でた。

「そなたを恋しゅうて腹を切られたのであろう。」
「恋しゅうて・・・?」
女が顔を上げる。
「女敵討ちを願わず、恨みごとも書き遺さず腹を切った。憎かったからではあるまい。」
平四郎は目を見なかった。
「前に置かれた鏡はそなたの形見であったろう。」
「それが真(まこと)なら嬉しいこと・・・。」
女の目から涙が溢れた。
「早う行って確かめとうございます。」

本堂からのどかに読経の声が流れ始めた。
「お見送り下さっているような。」
聞き入るようにしばらく顔を上げた。
「拙者は夫殿に代わってそなたの首を討つ。」
「嬉しいこと、おかげで心地良う逝けまする。」
「きっとお待ちでござろう。」
肩越しに礼をして女は前を押し開く。
肌は白く柔らかく、乳房は程よく熟している。
刃を懐紙で巻き込み腹を揉む。
「あなた・・・。今参ります。」
それは艶めかしい声と聞こえた。
膝立ちに突き立てる刃は脇のつぼ。
「うむっ・・うむぅぅ・・うぐぅぅぅ・・。」
肉震え痙攣して手を緩めなかった。
「ううう・・・うむうぅぅぅ・・・。」
臍下を横に割く。
「あぁぁ・・・。」
前に屈んで首が伸びた。
「逝かれよ!」
振り下ろした太刀が首を切り落とした。

「いつもながら見事な腕前じゃな。」
木の陰から和尚が現れる。
「生業(なりわい)だからな。」
驚く風もなく平四郎が応えた。
「幸せそうな顔で首になっておる。」
まだ血を流す躯(むくろ)を見下ろして和尚が言う。
しばらく彼は経を唱えた。
「側に葬ってやらねばならぬ。」
「よいのか。」
「故意か失念か離縁の届けは出ておらぬ。他出していた妻が戻ってきた、かまうまい。十年もすれば全て土に戻る。一人余分でも墓の供養は変わらぬ。」
日が暮れる頃、女は夫の傍らに密かに葬られた。
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by kikuryouran | 2009-10-23 03:11 | 平四郎 | Comments(4)
旗本屋敷の脇口から入り、振袖小姓に導かれて平四郎は奥庭に通された。三十路半ばと見える奥使いの女が待っていた。案内してきた小姓がそのまま控えている。
「そなたにこの刀の斬り試しを頼みたい。」
古賀平四郎は、渡された白木仮拵えの刀を抜いて刀身を検めた。
「試し斬りは拙者の生業(なりわい)、お断りの理由もないが。鍛えも見事、手にも馴染みますが見えぬほどの傷がござる。折れるやもしれませぬ。ご承知ならお引き受けするが。」
「試しなれば、それもいたしかたありませぬ。あれを斬ってもらいたい。」
女が目で示したところに、裸の女が土壇の上に寝かされている。

「当家召使いの者、故あって死罪を申し渡した。」
「生き胴をご所望か。」
古賀平四郎は、寝かされている女を見ながら言った。
「ならば離れていただこう。生き胴は血が飛びますゆえ。」
刀身に水をかけさせ、何度か素振りをくれて寝かされた女に近付いた。歳は二十歳ばかり、顔は細面で美形といえる。杭に手足を括り付けられ、秘所さえも露わに四肢を開かれて横たえられている。まだ幼さを感じさせて、乳房豊かで肉は薄い。よほどの折檻を受けたものか、髪は乱れて身体のあちこちに血が滲んでいるのがわかる。

女がおびえた目で見上げている。
上段に振りかぶった刀をゆっくり振り下ろして、間合いを計るように女の臍に刃をあてた。f0035462_155610.jpg
「女、そなたの胴は生きたまま二つに断ち割られる。惨いようだが苦しむことなく一太刀で終わる。」
「あなたさまは・・・。」
「古賀平四郎、祟(たた)るか。」
「あなた様にお恨みなどはございませぬ。その刀が恨めしゅうございます。」
見上げながら女が言った。離れた者には聞こえぬほどの小声であった。
「事情は知らぬが、この刀故の仕置きか。そなたの胴を断ってこの刀も折ってくれよう。それで成仏するがよい。」
「ありがとうございます。それで想い遺しはなく・・・。」
もう一度振り上げ、ここを切るというように柔らかい腹に刃を置いた。女の身体が震えて身悶えする。陰部の草叢が震えて失禁の尿が流れた。
「目を瞑っていよ。」
女が固く目を閉じた。腹が波うち震えるのを見ながら女の息を計った。振り上げて振り下ろしたのは見えなかった。女が息を吐ききった瞬間、光芒一閃して鈍い音と共に胴は腹から背まで断ち切られて二つに割れた。女は眼球が飛び出すほどに目を開き、口を開けて叫ぼうとしたが声にならなかった。血が噴き臓腑が一気に飛び散った。赤い血と腸(はらわた)が土壇の土手をうねうねと流れた。
腰を落として平四郎はしばらく動かなかった。ゆっくりと引いた刀の刃先五寸ほどが折れていた。

「折れましたが、切れ味は上、名刀でござった。」
血塗れて折れた刀を小姓に渡して、平四郎は手桶で手を洗う。
「古賀平四郎、何を話していた。」
「生き胴は祟ると申します。引導を渡しておりました。」
「わざと折ったか。」
「拙者は折れるやもしれぬと申したはず。」
「黙れ、あの業物でそなたの腕、折れるはずがあるまい。」
「折れたのは拙者の未熟、お代はいただかぬ。」
土壇で臓腑を撒き散らして、二つになった女に手を合わしながら言った。
折れるかもしれぬ、折れても構わぬというのは胴試しの常套言葉だった。しかし、折れた場合は試した者の未熟とされた。腕を恥じて、その場で折れた切っ先で腹を切った者もいた。
「未熟を恥じて腹を切るか。」
「刀を折る度に腹を切っては、試し斬りの生業(なりわい)が成り立ちませぬ。ご無礼申した。」
平四郎は平然とその場を離れた。
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by kikuryouran | 2008-06-05 01:54 | 平四郎 | Comments(0)

峰打ちの介錯


部屋には武家風と見える女が待っていた。歳は三十には間があろうか。年増に見えてまだ若いのかもしれぬ。
「ご切腹の介錯と承っておるが。」
平四郎は座に着いて意外そうに言った。
「この首、お願いできましょうか。」
丁寧だが慇懃な言い方だった。
「ひと首一両頂いておる。」
「金子の用意はございませぬ。この簪(かんざし)でお願い申します。」
髪から抜いた簪は、細工も見事に高価なのはすぐにわかる。
「金に換えるが面倒でな。」
平四郎は、もう立ち上がっていた。
「お待ち下さい。それでは他のもので。」
「介錯はなくとも腹は切れよう。女は胸を一突きでも恥にはなるまい。」
冷たい言い方だった。
「いかにも無理を申しました。」
女は諦めたように言った。

大名の姫奥方は金子を扱わぬ。常に付き女中が世話をする。終生金子というものを見ずに過ごした女もいたという。平四郎はこの話に危険な臭いを嗅いでいた。
「平四郎、その簪はわしが金子に替えて進ぜる。そのお方に腕を貸してもらえぬか。」
この寺の和尚が障子を開けて入ってきた。
「坊主、この女性(にょしょう)は常人ではあるまい。その首を討ってこちらも無事に済む保証はない。」
「名は言えぬ。事情もまた言えぬ。この者がここで果てても、おそらくは表には出せぬ。なれど死なねばならぬなら、思うように仕舞わせてやるが情けであろう。」
「そなたが承知で、お代を頂けるなら断る理由はないが。」
古賀平四郎は渋々座に戻った。
「このような末寺に菩提の方とも見えぬが。」
「この寺に知り人が眠っております。その者に義理を立てねばなりませぬ。」
「腹を切るのは苦しい自害、どのような死に様でも義理は立とう。」
「その者は、私ゆえに腹を切りました。」
女はそれだけ言って下を向いた。


まだ日の高い秋の空は抜けるように明るかった。色付いた葉が散り敷かれた墓地の一角に真新しい墓標が立っている。享年は二十三、名は男のもの、ひと月ばかり前のものだった。
「この墓の前で致します。」
女はしばらく手を合わせた。周囲に人の気配はなかった。本堂から読経の声が聞こえてくる。
「あの読経はそなた様を送る心算か。」
「この期には心安らぐ調べ、なによりの心づくし。」
女の声は涼やかで落ち着いている。着物を脱いで傍らに寄せた。
腰紐を緩めて白い襦袢の胸元を開く。高貴な女は肌を露わすのに恥じらいはないという。仕草は優雅で手に迷いはなかった。
肌白く肉はほどよく付いている。乳房は豊かとも見えなかった。頂きの果実はまだ淡く美しく、平四郎は存外若いのかもしれぬと思った。
家紋拵えの懐剣を、ゆっくり抜いて刃をあらわした。家紋は誰でも知る大藩のもの、刃先二寸を残して懐紙で巻き込む。
「非力にて深くは切れませぬ。ただ、この者と同じ痛みを知って逝きとうございました。」
「御覧になられたのか。」
「私の前でこの者は一文字に。我が腹を割く思いでございました。」
「その者も、そなた様と共に割く思いでありましたろう。」
平四郎は墓標を見た。若者の腹切る姿が浮かんだ気がした。

「身分違いを承知で私が懸想致しました。共に死ぬべきところを、死に遅れて・・・。」
前を見ながら女が呟いた。
「この者には不憫な仕儀であったやもしれませぬ。若いに先を摘んでしまいました。恨んでいるやもしれませぬ。」
「惹かれるは前世の因縁、運命と申すもの。」
平四郎は女の後ろに立って言った。
「想いに殉じて逝けるは男にとって今生幸せの極み、その者も悔いてはおりますまい。」
「会えようか・・・。」
「喜んで迎えてくれましょう。惹かれた男女が睦むのは自然の理、想いを凝らしてお逝きなされよ。」
「嬉しい事を言ってくれる。心の迷いが晴れた気がする。」
情事を思い出すように、女が目を瞑って指を這わした。
「仏になれば身分はなく、次の世はまた継ぐと申します。恥じることではございませぬ。蓮の台(うてな)で、はばかりなくお抱きなされよ。」
肩越しに振り返った顔が恥ずかしそうにあどけなく笑った。ほころんだ顔は美しかった。
「そなたは良い介錯人じゃな。心地良く死ねる気がする。」
「そなた様の心は、この世ではすでに果てておられましょう。拙者は心が抜けた虚しい身体を切るばかりでござる。」
「確かにこの身はすでに抜け殻、手を借りて始末いたしましょう。」
覚悟がついたように、女は頷いて目を閉じた。

柔らかな風に乗って読経の声が絶え間なく聞こえる。小春日和の暖かい日差しはのどかとさえ思えた。
腰を上げて押し出した腹を揉む。もう言葉は発しなかった。さすがに細い首が緊張に震えている。なでた肩がゆっくりと息を吸った。緊張の時が流れた。
風の向き加減か読経の声が遠ざかる。一陣の風が流れて静寂が訪れた。その刹那、女が腹に刃を立てた。
「うむっ・・むぅぅぅ・・・。」
ゆっくりと刃を滑らせる。揺れる肩から襦袢が滑り落ちた。細い腕が必死に腹を割こうとしていた。首筋に汗が噴く。髪が乱れて腰が悶えた。
目を泳がせて墓の名前を呼んでいた。名を呼びながら刃を運んだ。
「そなたも・・このように・・・。」
悲壮とも艶とも聞こえる声だった。
風が止んで、読経の声がまた聞こえ始めた。色付いた葉がちらちらと降った。
右の脇まで刃が届いたのを確かめて、平四郎がゆっくりと腰の刀を抜いた。
無言で振り上げたかと思うと、一気に峰で首を打った。女の首は奇妙に折れ曲がり、後ろにのけぞり倒れた。

影から和尚が現われる。
「あの声はお主ではないのか。」
読経が聞こえる方に顔を向けて平四郎が訊いた。
「ここに人を近付かせぬために、門を締め切り、寺の者すべてに読経させておる。」
「なかなか知恵者な。」
「首を切り落とさぬのか、まだ息があるぞ。上を向いて足掻いておる。」
「息はあっても、首の骨が砕かれてすでに夢の中。絶命まではしばらくかかろう。男の夢でも見ているか、まだ腹を切り続けている心算やもしれぬ。」
奇妙に首をねじ曲げ、四肢を開いて女は全身を痙攣させていた。白い乳房が揺れる。腹の傷から血を流して、陰部の叢からは褐色の尿が漏れ出て広がった。
「こう見ると、お姫様でも変わらぬな。長引かせるのは酷くはないか。」
「切り落とせば介錯人の詮議もせねばなるまい。表に出ればそなたも俺も無事では済まぬ。」
平四郎は、わかっていようと言うように和尚を見た。
「細腕で深くはないが、腹には傷が残っている。首の骨が砕かれているのは医師ならばわかるであろうが、これなら病でも自害でも、いかようにも始末できよう。」
見下ろしながら和尚が感心するように唸った。
「書き遺しは預っておる。小坊主にそれと共にお屋敷へ走らせねばならん。」
「大枚の寄進と口止め料が入るということか。相手も口を封じようとするぞ。」
「屋根の修理にも金がかかる。此の度は、そなたにも十や二十の首代は渡してやれよう。」
「危険は承知ということか。商売上手なことだな。」
笑いながら平四郎はもう歩き始めていた。

あらぬ方を眺めながら、女はまだ息があった。夢を見ていた。明るい日の下で恋しい男に抱かれていた。ゆっくりと暗闇が訪れる。微笑みながら闇に包まれた。
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by kikuryouran | 2007-11-24 22:55 | 平四郎 | Comments(0)

畜生成敗


「ご依頼はそなた様か。」
呼び出された寺の離れ、平四郎が部屋に入ると男と女が待っていた。
「古賀平四郎殿か。据え物の腕をお借りして、首二つの始末をお願い申す。ここにおります女と、拙者の首を刎ねていただきたい」
平四郎は値踏みするように二人を見る。浪人者と見える男は三十路前、女は上の年頃か。寺には後の始末を頼んだという。
「首一つ一両申し受けるが。」
「これは我らが有り金すべて、それぐらいは入ってござる。」
男が財布を前に置いた。
「自害出来ぬご器量とも見えぬが。」
「お恥ずかしいが、われ等は不義者、色に狂うた外道でござる。人としてではなく、畜生としてご成敗願いたい。」
覚悟も出来たと見える二人が頭を下げた。
「その首の刎ね様、拙者にお任せ下さるか。」
「お任せ申す。」
「承知いたした。」
平四郎は前に置かれた財布を懐に入れた。

「房事を拝見致したい。」
平四郎は平然と言った。男と女が顔を見合わせた。
「任せると申されたはず、従っていただこう。」
否やを言わせぬ響きが込められていた。
しばらく躊躇った後、男が女の帯に手をかけた。襦袢姿で横たえる。
「色に狂うた畜生なら、恥ずかしくもござるまい。脱がれよ。」
非情な言い様に、女が覚悟を決めたようにすべてを脱ぎ横たわる。年増ながら女の身体は引き締まり、脂肉を感じさせなかった。乳房豊かに柔らかく、女陰を覆う濃い叢が目を惹いた。男は肉薄くも鍛えられたとわかる肉付き。まだ萎えた男根が股間に垂れている。
「お内儀、今生最後と心得られて抱かれるがよい。」
うって変わった優しい声だった。
「醜うございましょう。」
「男と女が睦み合う姿は美くしゅうござる。恥ずかしくはござらぬ。」
「私は淫ら鬼女でございます。地獄の業火に焼かれましょう。」
「その御仁(ごじん)にはそなたは菩薩、必ず共に極楽にお送りいたす。」
女が嬉しそうに微笑んだ。

二人はもう平四郎は見なかった。女の指が男を大事な物のように包み込む。やがて雄々しくも屹立を果たした。
「悔いませぬ。無間地獄に落ちるとも後悔などは致しませぬ。」
うわ言のように女が言ってしがみつく。
「わしとて悔いぬ。共に逝こうぞ。」
今生名残りと思えば愛おしさが募る。もう獣の如く確かめ合い、肌と肉とが溶け合うて歓喜の喘ぎを上げた。大きく開いた女の脚が男を抱え込む。柔らかい肉が下から男を呑み込むように蠢いた。

身体を貼り合わせて、二人の腰が動きを合わせて律動を始めた。
頂きに昇り詰めようとして女が見上げる。見下ろす平四郎と目が合った。男の動きが激しくなる。男が迸るのを感じて、女が男にしがみつく。抱き締めて口を吸った。
光る太刀がゆっくりと落ちてくるのを女は見上げていた。男の首に打ち下ろされた刃がそのまま自分の首を切り落とすのがわかった。口を吸い合って二つの首は重なり落ちた。

「坊主、そこに居るのであろう。入るがいい。」
「平四郎殿も気がきかぬ、庭で仕舞えばよいものを。部屋が血まみれ、後の始末が難儀じゃわ。」
「充分に布施をせしめたであろうが。」
「畳や建具も血に濡れて新しくせねばならぬ。」
平四郎は、男から受け取った財布を二両抜いて放り投げた。
「これだけあれば足りよう。衣類脇差の類も金になる。」
「これはありがたい。懇ろに弔いましょう。」
「生臭さ坊主めが。」
笑いながら平四郎が言った。
「しかし、これは極楽往生間違いなしじゃ。胴は繋がり、首も心地よさそうにまだ吸い合っておるわ。いつもながら見事な手際じゃな。」
重なった二人の首からはどくどくと血が流れ出し、脚はしっかりと絡み合わせて菊座陰部を晒していた。重なる臀部がまだ痙攣を続けている。
「情の濃い女であった。俺も廓にでも繰り出さねば治まらぬ。こちらも物要りな。」
膨れた股間を押さえて、古賀平四郎は苦笑しながら部屋を出ていった。
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by kikuryouran | 2007-11-10 18:14 | 平四郎 | Comments(0)

土壇の腹切り

牢屋敷の奥庭には、塀に囲まれた首切り場が設けられている。首を切られる者は、中央の土壇場といわれる場所で後ろ手に縛られたまま両肩を押さえられ、首を前に伸べて切られる。縛り首と言われる処刑だった。流れる血と共に、落とされた頭部は前に掘られた穴に落ちる。一太刀で首を切り落とすのは難しく、据え物斬りの達者に依頼する場合が多かったという。下使いもほとんど非人が取り仕切った。

「今日は三人か。」
古賀平四郎は、壁際に縄をかけられて座る者たちを眺めて言った。
「旦那も商売繁昌でござんすね。」
顔見知りの非人が話しかけた。首の切り賃は一人幾らと決められていた。

一人目は大きな男だった。足が震えて満足に歩けなかった。両腕を抱えられて土壇場まで引きずるように連れてこられた。後ろ手に縛られたまま獄衣の襟を寛げられ、両肩を押さえつけられた。太い首が前に突き出される。
「死にたくねぇ、助けてくれろ。」
男は泣きながら身体を揉んだ。
平四郎は揺れる首を目で追った。一瞬で男の首が切断されて頭が前の穴に落ちた。両肩を押さえる男たちは、流れ出す血が収まるまで手を緩めなかった。
後ろ手に縛られたままの胴が運び出される。血まみれの頭部が穴から取り出されて、また土壇場が整えられた。検視役の同心が見ている前で、非人たちは慣れた動きで働いていた。

目の前で見た斬首の有様に、二人目の男はもう気を失ったように押さえられた。平四郎は苦もなく首を切り落とした。

三人目は女だった。
「お世話をおかけ申します。」
落ち着いた様子で引き立てられ、会釈して土壇場に座る。
「武家の出か、見事な覚悟だな。」
「恥晒しの縛り首、お恥ずかしゅうございます。」
「拙者は古賀平四郎、名を聞いておこうか。」
「小雪と申します。」
見上げた顔は色白で細面、目鼻立ちが美しく整っている。胸元にかかった縄を緩められ獄衣の襟を開かれて肩を大きく露わにされる。抗う様子もなくされるままになっていた。豊かな乳房がこぼれた。白い肩から細い首が艶を含んで続いている。見下ろす平四郎には、女の背中の奥までが見えた。
「小雪殿と言われたか、言い遺すことがあれば聞いておこう。」
「縛られたまま首討たれるのが口惜しゅうございます。せめて腹を切りとうございました。」
見上げた目に涙が浮かんでいた。
しばらく女を見下ろしていた平四郎が、肩を押さえる非人に言った。
「手を離せ、下っていろ。」
低いが聞き返させぬ響きがあった。男達が離れて下る。持った刀で女を縛った縄を切った。
「古賀平四郎、乱心したか!」
検視同心が慌てて声をかける。
「お裁きは縛り首、縄を解くことは許されぬ。」
「同心殿はお目が遠いと見える。この女はすぐに首になるゆえに、しばらく下を向いていて頂こう。」
この場で彼の腕を知らぬ者はない。同心は黙って下を向いた。
平四郎は脇差を腰から抜いて前に投げてやる。
「助けてはやれぬ。存分にさせてやるほどの時もないが・・。」
「お情けありがとうございます。お借り申します。」
女は深々と頭を下げて脇差を取った。
座り直し、腹を寛げる。勢いつけた刃を、叩きつけるように腹に沈めて前に屈んだ。
「うぐうう・・・。」
突き出した尻を悶えさせ、腹の刃を抉りながら首を前に差し出す。
「うむううう・・・。」
平四郎の太刀が一閃して、鈍い音と共に首が落ちた。形良い尻が何度も揺れて痙攣し前に崩れた。

「旦那、いいものを見せてもらいやした。」
非人の頭が声をかける。
「ここにいる者には、駄賃を弾んで口止めを頼む。表に出れば俺は飯の食い上げだ。」
「安心しなせぇ。そうなりゃこっちも干上がりまさぁ」
「あの同心にも呑ませてやらねばなるまい。俺は今日はただ働きになる。」
「しかし、どうしてまたあんな思い切ったことを。」
「あれほどに見事な覚悟の者はめったにあるまい。柄にもなく惚れたのよ、いい女だった。」
「違いねぇ。いい女でござんした。」
まだ首から血を吐く女の身体を眺めながら、二人は手を合わした。
「さて、あいつの好物は何であったかな。」
平四郎は、同心の方に歩き始めた。
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by kikuryouran | 2007-11-08 18:04 | 平四郎 | Comments(0)

生き胴試し


旗本屋敷の脇口から入り、振袖小姓に導かれて平四郎は奥庭に通された。三十路半ばと見える奥使いの女が待っていた。案内してきた小姓がそのまま控えている。
「そなたにこの刀の斬り試しを頼みたい。」
古賀平四郎は、渡された白木仮拵えの刀を抜いて刀身を検めた。
「試し斬りは拙者の生業(なりわい)、お断りの理由もないが。鍛えも見事、手にも馴染みますが見えぬほどの傷がござる。折れるやもしれませぬ。ご承知ならお引き受けするが。」
「試しなれば、それもいたしかたありませぬ。あれを斬ってもらいたい。」
女が目で示したところに、裸の女が土壇の上に寝かされている。

「当家召使いの者、故あって死罪を申し渡した。」
「生き胴をご所望か。」
古賀平四郎は、寝かされている女を見ながら言った。
「ならば離れていただこう。生き胴は血が飛びますゆえ。」
刀身に水をかけさせ、何度か素振りをくれて寝かされた女に近付いた。歳は二十歳ばかり、顔は細面で美形といえる。杭に手足を括り付けられ、秘所さえも露わに四肢を開かれて横たえられている。まだ幼さを感じさせて、乳房豊かで肉は薄い。よほどの折檻を受けたものか、髪は乱れて身体のあちこちに血が滲んでいるのがわかる。

女がおびえた目で見上げている。
上段に振りかぶった刀をゆっくり振り下ろして、間合いを計るように女の臍に刃をあてた。
「女、そなたの胴は生きたまま二つに断ち割られる。惨いようだが苦しむことなく一太刀で終わる。」
「あなたさまは・・・。」
「古賀平四郎、祟(たた)るか。」
「あなた様にお恨みなどはございませぬ。その刀が恨めしゅうございます。」
見上げながら女が言った。離れた者には聞こえぬほどの小声であった。
「事情は知らぬが、この刀故の仕置きか。そなたの胴を断ってこの刀も折ってくれよう。それで成仏するがよい。」
「ありがとうございます。それで想い遺しはなく・・・。」
もう一度振り上げ、ここを切るというように柔らかい腹に刃を置いた。女の身体が震えて身悶えする。陰部の草叢が震えて失禁の尿が流れた。
「目を瞑っていよ。」
女が固く目を閉じた。腹が波うち震えるのを見ながら女の息を計った。振り上げて振り下ろしたのは見えなかった。女が息を吐ききった瞬間、光芒一閃して鈍い音と共に胴は腹から背まで断ち切られて二つに割れた。女は眼球が飛び出すほどに目を開き、口を開けて叫ぼうとしたが声にならなかった。血が噴き臓腑が一気に飛び散った。赤い血と腸(はらわた)が土壇の土手をうねうねと流れた。
腰を落として平四郎はしばらく動かなかった。ゆっくりと引いた刀の刃先五寸ほどが折れていた。

「折れましたが、切れ味は上、名刀でござった。」
血塗れて折れた刀を小姓に渡して、平四郎は手桶で手を洗う。
「古賀平四郎、何を話していた。」
「生き胴は祟ると申します。引導を渡しておりました。」
「わざと折ったか。」
「拙者は折れるやもしれぬと申したはず。」
「黙れ、あの業物でそなたの腕、折れるはずがあるまい。」
「折れたのは拙者の未熟、お代はいただかぬ。」
土壇で臓腑を撒き散らして、二つになった女に手を合わしながら言った。
折れるかもしれぬ、折れても構わぬというのは胴試しの常套言葉だった。しかし、折れた場合は試した者の未熟とされた。腕を恥じて、その場で折れた切っ先で腹を切った者もいた。
「未熟を恥じて腹を切るか。」
「刀を折る度に腹を切っては、試し斬りの生業(なりわい)が成り立ちませぬ。ご無礼申した。」
平四郎は平然とその場を離れた。
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by kikuryouran | 2007-11-02 09:23 | 平四郎 | Comments(0)

女人切腹


案内された部屋には、床を背にして女が待っていた。二十歳も半ばになっていようか。細面の美しい女だった。髪は御殿髷に纏めて白の単衣に細帯を締めている。明らかに死に衣装とわかる。
「私は当家の娘、美里と申します。故あって、女の身にて腹せねばなりませぬ。」
涼やかな声だった。
「拙者は古賀平四郎と申す者、ご依頼によりご介錯させて頂く。」
「古賀様と申されますのか、介錯を幾度も果たされたとか。」
「いかにも幾度か経験を積み申した。いささか腕に覚えもござる。差料は備前兼定の業物、ご懸念なくお任せなされよ。」
慣れた口調だった。
「頼もしいお言葉、安堵致しました。非礼な訊き様お許しなされませ。細腕にて果たせようかと心許なく・・・。」
「お覚悟あるなら造作もないこと。」
冷たくも非情な物言いだった。

部屋の中央に支度は調えられていた。白布を敷き三宝に切腹刀が載せられている。美里は落ち着いた様子で座に着いた。
しばらく躊躇って、座ったまま帯を解き単衣を脱いで傍らに寄せる。白い腰布だけになって座を正した。平四郎が無言のまま後ろに立った。
「女ながら存分に致したく、恥ずかしい姿ながらこのように。」
肩越しに振り返って女が言った。はにかむ顔が愛くるしい。
女の肌は透き通るほどに白い。首細くなで肩で脂肉少なく、乳房は形良く整っている。締まった腰と張った尻とが美しい曲線を描いていた。
「声をかけるまでお待ち下さいますように。」
女が前を見たまま頭を下げた。
「承知仕った、存分に致されるがよい。」
女が作法通りに三宝を押し頂き、腰を浮かせて尻下に敷く。切腹刀を手に柔らかい腹を揉んだ。膝割り、座を確かめるように尻を揺らし、背を立てて腹を押し出す。目を瞑って、覚悟を固めるようにしばらく想いを凝らした。
緊張の時が流れた。平四郎はこれまで刎ねた女首を思い出していた。目の前の細い首が切断されて落ちる瞬間を思い描きながら、立ち位置を確かめてもう動かなかった。

女が身体を捻じりながら脇に突き立てる。呻く声が漏れた。
「うむうううう・・・。」
白い背が震える。肩先が揺れ頭(こうべ)が揺れた。
臍の下辺りまで切り裂いて息をついた。
「うぐぐっうぐうううぅぅぅ・・・。」
苦しげな声が部屋に響く。
平四郎はゆっくりと刀を抜き、天井の高さを目で測った。
浅いと思ったのか、女が前に屈んでブスリと深く突き立てた。一気に血が流れ出し、白い腰布が前から赤く染まってゆく。
「うむうう・・・、あぁぁぁーー。」
呻き声に悲鳴が混じる。切腹刀を抱くように刀を引き回そうとして身を捩る。
「おねがい・・・もう・・・。」
女が身を揉みながら必死に苦痛に堪え、尻を後ろに突き出して首を伸べた。髪が乱れて首筋にかかる。全身に汗が噴き、小刻みに震えて介錯の時を待った。
落ち着いた様子で太刀を振り上げた平四郎が、女の首が揺れて定まらぬのを目で追った。
喘ぐ声が息をついた瞬間、女の揺れが止まる。太刀が一閃して、鈍い音と共に首が血を噴き上げながら鋭角に前に折れた。中程まで首を断たれて、膝の間に落ちた頭を抱くように女は静かになった。
斬られた首はしばらく赤い血を膝間に降らせた。むせるような血の臭いが鼻をつく。平四郎は太刀を振り下ろした残心のまま、血が広がるのを見ていた。
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by kikuryouran | 2007-10-29 08:38 | 平四郎 | Comments(1)