愛と死の妄想  feseppuku.exblog.jp

ショートな妄想フィクションを書いています


by kikuryouran
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カテゴリ:同性愛( 12 )

胸の傷痕


「私と死ねるかい?」と彼女が訊いた。
「試してみたら?」と私は胸を開いた。
彼女は刃先を私の胸元に当てる。
「さあ、殺って・・・。」私は挑むように言った。
彼女の眼に、一瞬凶暴な光が宿った。
私の胸の傷痕が、今も彼女を懐かしく思い出させる。


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by kikuryouran | 2015-11-11 06:35 | 同性愛 | Comments(0)

同じ性の共感


彼は「お前を好きだ。」と私に言った。
男同士がどんな風に愛し合うのか、私はまだ知らなかった。
しかし彼なら、何をされても許せる気がした。
私は横たわり、すべてを委ねて目をつぶった。
彼は私のものを指で慰めながら、自分の勃ったものを触らせた。
それは女性とのそれとは違う、同じ性の連帯感を感じさせた。


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by kikuryouran | 2015-11-10 01:13 | 同性愛 | Comments(0)

ボーイズラブの告白

放課後の校庭のベンチに私たちは座っていた。
お前を好きだと彼は恥ずかしそうに告白した。
私はどう返事していいのかわからずに、黙って下を向いていた。
夕闇がゆっくりと周囲を覆い始めて、俺を嫌いかと彼は呟くように訊いた。
ズボンの上から私が勃起しているのを確かめて、彼は唇を重ねてきた。
私は彼の腰に手をまわした。

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by kikuryouran | 2015-08-19 01:36 | 同性愛 | Comments(0)

友達以上の予感


山奥の薄暗い湯治場は私たち二人だけだった。
彼女はもう大人のような乳房をしていた。
私は「すごいね。」と言いながら柔らかいそれに触らせてもらった。
彼女は私の少年のような胸に触りながら「好きよ。」と呟いた。
私たちはしばらく見詰め合ってから、どちらからともなく唇を寄せた。
彼女が友達以上になる予感に、私の中で何かが弾けた。

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by kikuryouran | 2015-08-16 05:11 | 同性愛 | Comments(0)

初陣の契り

若者たちは初陣だった。
「恥ずかしいが、俺は怖い。」
「死ぬ時は一緒だ。」
励ますように抱くと、戦いを前にした昂揚で互いに勃っているのがわかる。
「俺は明日死ぬかもしれない。」
死の予感が、男同士の慰め合いを駆り立てた。

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by kikuryouran | 2015-07-30 01:17 | 同性愛 | Comments(0)

女同士の恋


ペニスのない交わりがいつも二人を不安にさせた。
「私はあなたを殺したい時がある」
「私もあなたに殺される予感がするわ。」
「いつかきっと、暴走する自分を止められなくなる。」
「その時が来れば私はあなたの手にかかるわ。」
女同士の恋人は、抱き合いながら悲劇の結末を夢に見ていた。

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by kikuryouran | 2015-07-22 08:49 | 同性愛 | Comments(0)

女同士の恋


女同士の恋は果てなく。
貪るように愛し合って倦むことがなかった。
「あなたはきっと、いつか男と恋に落ちるわ。」
「いっそこのままあなたの手で・・・。」
刺し違える結末は甘美な夢だった。
悲劇の予感が二人をまた萌えあがらせた。
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by kikuryouran | 2015-07-14 01:54 | 同性愛 | Comments(0)

魂の縁(えにし) 前編

 癌

「私はあなたを愛しているの。」
一年ほど前の或る日、、ヨーコは酔って私に告白した。
「ごめんね。私には彼がいるの。」
その頃私は男と一緒に住んでいたし、同性を愛したいと思ったこともなかった。
「いいの、私酔ってるの。」
彼女は悲しそうな目をした。
ヨーコは同じ職場に居たが、彼女がレズビアンだとはそれまで思わなかった。
しかししばらくして、私は男と別れた。行くあてのなかった私はヨーコのマンションに転がり込んだ。
「あんな男はこりごりよ。」
「ここに一緒に住まない?嫌になったらいつでも出て行けばいい。」
私には有難い話だった。
「私はレズらないからね。」
「無理強いなんてしないから。」
彼女は笑いながら言った。

私は一緒に住むことになった。彼女は普通の女と変わらなかった。
「あなたは男を愛したことはないの?」
「小さい頃は普通だったわ。或る日暴行されたの、小学生の頃。近所の男で誰にも言うなって脅された。まだ意味がわからなくて、すぐにトイレに駆け込んだことだけ憶えてる。」
彼女は目を逸らしたまま話し続けた。
「それからだったと思うわ、男が怖くなったのは。」
「生まれつきじゃないんだね、そんな人もいるようだけど。」
慰めになるのかどうかと思いながら私は言った。彼女にそんなトラウマを植え付けた男を私は憎いと思った。
「誰にもあることだって思おうとしたわ。普通に男を好きになろうとして・・・。でもいざとなると駄目だった。好きな女の人に告白したことがあったけど、変態って言われたわ。」
ヨーコは普通に魅力的な女性にしか見えなかった。
「男を愛せない女って変なのかな。」
彼女は恥ずかしそうに笑った。
「ごめんね、私はその気になれないの。」
「いいの、側に居てくれるだけで。」
大切にされて、私には彼女との生活は心地良かった。彼女は私が嫌がることはしなかった。

一緒に住み始めてしばらくして、私の身体に癌が見つかった。
「私はもう長くは生きられないんだって。」
ウィスキーを呑みながら私は言った。
「癌・・・。」
ヨーコは絶句して顔を上げた。
「入院して治療を受ければ一年ほどは生きられるかもしれないって、でも私は嫌。叔母が癌だった。あんな風には死にたくないの。」
私は煙草の煙を吐きながら言った。
「レイ、私が側にいてあげる。」
彼女は手を握ってくれた。
「もう両親もいないし、行く所なんてない。でも、あなたに迷惑はかけたくないわ。」
私はまたグラスをあおった。静かだった。秒針が確実に時を刻んだ。

翌日彼女は仕事を辞めて帰ってきた。
「あんたの世話をさせてちょうだい。もういつも一緒にいる。」
私を抱き締めてヨーコは言った。
「もう決めたんだ、あんたがどう言おうと、もう放さないからね。」
それから私たちは、二人だけの生活を始めた。

診察にも彼女は付き添った。
「妹さんですか?家で看るのは大変ですよ。これからだんだん大変になる。」
「望むようにしてやりたいんです。」
彼女が言うと、医者は頷いてそれ以上言わなかった。

「似てるのかな。」
外に出ると、彼女は嬉しそうに言った。
「本当はこっちの方が若いのにな。」
私は不満そうに言った。彼女は小柄で若く見える。
「それなら、姉ですって言えばよかったのに。」
彼女は腕を取って歩きながら笑って言った。
「どうせ私は先のない年寄りよ。これからは娘ですって言いなさいよ。」
外に出ても、私はわざと病人らしくゆっくりと歩いた。
「女同士、こうして腕を組んで歩けるっていいね。」
「レズだとわかっても私はもういいわよ。ここでキスしようか。」
身体を摺り寄せて、悪戯っぽく笑いながら私が囁いた。


 同性の愛

間もなく私が死ぬことは、もう私たちには疑いもないことだった。
「あなたが死ぬって、私にはきっとラッキーだね。あんたをもう誰にも取られる心配をしなくていいからね。」
彼女はそう言って無理に笑った。
「骨の一かけらだって誰にもやらない。」
「私のお骨(こつ)・・・。」
「きっと食べちゃうね。」
彼女は明るく言った。
「食べちゃうの?」
私は苦笑しながら睨みつけてやる。彼女は涙を浮かべていた。
「待ってるようだね。」
「そうだよ、あんたは私のために死ぬのさ。」
ヨーコは私を抱き締めた。
「レイは永遠に私のものになるために死ぬのさ。」
彼女の言葉だけが、私にとって救いの気がした。逃れられぬ死が、意味有ることに思えるのは甘美な想像だった。

私はまだヨーコに身体を許してはいなかった。日常の接触以上はさりげなくかわした。
「ごめんね、その気になれないの。」
偏見はないつもりでも、同性で愛し合うことに私が嫌悪を感じているのを彼女も知っていた。これだけは自分でもどうしようもなかった。
彼女を受け入れることは、私には女としての性を捨てることのように思えた。それでも私は彼女にすべてを与えようと思った。私にはもう彼女しか残されていなかった。

私は、生贄のようにベッドに横たわった。初めて男に身をまかせた時のように、不安と期待が入り混じった気分だった。これで彼女と同じ世界に踏み入れる。もう後には戻れない予感があった。それは不思議にも私を心地よい安堵に包んだ。
「愛してちょうだい。もうあなたにすべてをあげる。」
それだけで、彼女は私の気持ちをわかってくれた。
「レイ・・・、いいのね。」
私が微笑みながら頷くと、大切なものを扱うようにゆっくりと私を脱がした。最後の物も取り去られて、すべてを奪われる予感に私は目を瞑った。

彼女の愛技は長い口付けから始まった。拡げた腕の付け根から胸に唇を這わされた。繰り返される愛咬は、私の身体に無数の痕跡をつけながら少しずつ移動していく。彼女は気遣うように私の様子を窺った。
「もういいのよ、思う通りにして。私はあなたに愛して欲しいの。」
私が彼女の頭を撫でながら言うと、彼女は安心したように頷いた。
ゆっくりと移動する愛撫に、私は何度も声を上げた。その度に私のこだわりが消えていった。私の中で淫ら血がくすぶり始める。
「ありがとう、レイ。愛しているわ。」
「ごめんね、待たせて。」
彼女が私の中心に到達したのがわかった。優しく愛されて、それは永遠に続くかと思えた。なぜか涙が止められなかった。すべてをゆだねて、私はもう声を堪えなかった。官能は解き放たれ、昇り詰め、何度も気が遠くなった。美しい花園を見た。それは愛されて逝く幸せな死の体験だった。


 愛と死の試行

その時、私はイラつく自分を抑えられなかった。
「私が死んだら、あなたはきっと忘れてしまうわね。」
「一緒に死のうか。」
ヨーコが顔を上げて言った。彼女は笑っていなかった。

彼女が漆塗りの短刀を前に置いた。
「以前、死にたいと思った時に買ったの。」
「本物なの?」
彼女は頷いて私に持たせた。私は真剣を間近に見るのは初めてだった。ずしりと重く、鞘から抜くと銀色の光を放った。
細身の刃は微かに曲線を描いて、先は鋭く尖り、中程に銀河を思わせる無数の星が燻し銀に走っている。私に刀剣の知識はない。しかし、妖しく光るその美しさは私を魅了して離さなかった。
「吸い込まれてしまいそうね。」
買った時のことを彼女は話していた。しかし私は聞いていなかった。刃に浮き出た模様の一つ一つが私の心を揺り動かした。眠っていた何かが目覚めたような気がした。彼女は夢中になって話し続けていた。
私は昂ぶった苛立ちを抑えられなかった。
「本当に死ねるの?」
自分でもどうしようもなかった。
「さあ、見せてちょうだい。」
挑むように言って、私は抜き身の短刀を前に置いた。
彼女は一瞬言葉を失って私を見た。私は自分の口から出た激しい言葉に自分でも驚いていた。私たちはしばらく無言で見詰め合っていた。

「私は、あなたと一緒に死にたいと思ってた。」
いつもは茶化しながら話す彼女が、目に涙を浮かべながら言った。
「ヨーコごめんね。この短刀を見ていたら・・・。」
「きっとそれがあんたの本当の気持ちなんだよ。」
そうかもしれないと思った。
「もう一人は嫌、一緒に死ぬよ。」
彼女がぶつかるように抱きついてきた。
「レイ、愛してるの、愛しているから。」
疑ったのではなかった。彼女が本気だとは私にもわかっていた。
私は彼女を愛しいと思った。一緒に死ぬと言ってくれる彼女がただ愛しかった。すべてを確かめ奪いたいと思った。それは異性への愛と変わらなかった。
「愛しているわ、私も。」
もう躊躇わなかった。貪るように唇を吸い、脱がせた。狂ったように肉体の隅々までも確かめ犯した。彼女はすべてを開いて受け入れてくれた。しかし燃え上がった炎は消えなかった。彼女は私の中心を激しく愛撫して鎮めてくれた。猥らな叫びを上げながら私は昇り詰めた。

気が付くと、私たちは床で抱き合っていた。私は恥ずかしくて彼女の胸に顔を埋めた。
「嬉しかったわ。」
彼女は優しく髪をなぜてくれた。満ち足りて幸せな気分だった。
「一緒に死んでくれるの?」
顔を上げて訊くと、彼女は私の手を握って頷いた。
それからベッドで私たちは愛し合った。男との愛の行為は男が欲望を吐き出して満足し終結する。しかし、女同士のそれはそのような終わりがなかった。互いの愛撫が永遠に続くかと思えた。流れる時間さえもがないようだった。
彼女の身体はスポーツに締まって筋肉を感じさせる。触るとほど良い柔らかさがあった。しっとりと汗ばむ草叢が芳しい。それはまさしく彼女固有の匂いだった。
「きれいだわ。」
私は自分と比べながら苦笑した。私の身体は白くて柔らかいばかりのように思った。
「あなたもきれいよ。」
互いにもうすべてを開いて隠さなかった。
「私はね、自分の身体が嫌だった。でも、レイに愛されてそうじゃなくなったよ。」
終点なく犯し合うそれは、男との交わりとは明らかに異質なことに思えた。

「私は切腹するよ。」
そうすれば、きっと永遠の愛を得られるとヨーコは言った。
「お腹を切って、あなたへの想いを魂に刻み込むの。」
苦しむヨーコの姿を想像して、私は血の沸くような興奮を覚えた。彼女は懐剣を握ったように拳を固め、ゆっくりとお腹を切る仕草をした。
「見てレイ、こんな風に・・・こんな風に、きっと。」
幻の短刀をお腹に突き立てて、彼女は愛のために死ぬ瞬間の妄想に捉えられていた。
それは彼女を高いエクスタシーに導いた。彼女にとって切腹は究極の愛の行為と思えた。それは愛と死の完全な結合の儀式だった。
「レイ、レイ・・・。」
私は後ろから抱いてやる。それは私にとっても歓喜の瞬間だった。今まさに彼女は私にすべてを捧げようとしていた。しっかりと抱き締め、耳元で彼女の名を呼んでやる。
「ヨーコ、ヨーコ・・・、愛しているわ。一緒に・・・。」
経験したこともない快感が全身を貫いた。私の腕の中で、彼女が強張り痙攣し続けていた。魂が一つになり、私たちは同時に頂点を極めて気を失った。
それは生の完全な燃焼の後に訪れる、満ち足りて安らかな死の試行だった。
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by kikuryouran | 2007-08-22 09:45 | 同性愛 | Comments(0)
 もう一本の短刀

私はネットで短刀を手に入れた。白木の仮拵えだったが写真を一目見て心魅かれ、それを買った。丁寧に梱包して送られてきたそれには、礼状が添えられてあった。

『お買い上げ有り難うございました。
この短刀はわが家に伝えられていたものです。元は長さも30cmほどあったそうですが、刃先は折れ、刃こぼれも激しかったそうです。江戸末期、刃先を付け直し傷を削り落とすと、丈縮み身幅狭まり肉も薄くなったといわれています。すでに懐剣の体を成さず、拵えもされなかったそうです。勝頼妻が所有のものであったと伝わっていますが、真偽のほどはわかりません。末永くご愛蔵下されば嬉しいです。』

長さは20cmほどで、思っていたより細く薄い。美しい波紋が浮かび上がって、華奢に見えながら頼もしい力強さを感じさせる。手に持つと私にも扱い易く、単に切るための道具とは一線を画す気品を備えていた。
「勝頼の妻というと、確か自害したんだよね。もしかするとこれで・・・。」
「そうかもしれないね。」
私は肌にそっと押し当ててみた。ヒンヤリとして鋭利な刃が吸い付く様に心地よい。確かにこの刃で自害した女がいると感じた。それは確信に近い感応と思えた。
美しい女が前をはだけて腹を切ろうとする姿が見えた。腰元らしい女に後ろから支えられて、ゆっくりとお腹を切り、妖艶に身悶えして天を仰いだ。その時、この短刀がここにあるのは運命のような気がした。

無理な治療を受けなかったからか、私は急激には衰弱しなかった。
私は一日中、好きな音楽を聴いて過ごし、気の向くままに彼女を愛した。新聞もテレビも見なかった。外の世界にはもう興味はなかった。
「ここにいたら、戦争があってもわからないね。」
「人類みんなを道連れか、それもいいな。」
ヨーコはそう言って笑った。

彼女もたまの買い物以外は外に出なかった。私には昼も夜もなかった。ベッドで眠って覚めるといつも彼女がいた。時間も気にならなくなっていた。私はいつも彼女の身体に触れていたかった。
「もう私も立派にレズだね。」
「レズかどうかなんて、もうどうでもいいよ。私はレイを愛しているだけだもの。」
愛し合いながら、時々男とのセックスを思い出した。
「あれって何だったんだろう。男が欲望を吐き出すためだけだった気がするね。」
「そうなの、私はよく知らないから。」
「あんたはね、最初にあたった男が悪かっただけさ。」
「血のおしっこだと随分後まで思ってた、痛かったしね。恥ずかしくって誰にも言えなくて。誰にも言うなって、怖い顔で脅されたし。」
私は彼女を抱き締めてやる。
「同じようなもんよ、最初は私だって。無理やり入れられてさ。何がいいんだろうと思ったもの。」
彼女は私の胸に顔を埋めて話していた。泣いているのがわかった。私は頭を撫ぜてやる。
「前からレイを好きだって思ってて、言わない心算だったのに酔ってつい。あんたは、次の日もそれまでと同じで嬉しかった。」
「あんたに好きと言われた時、別に変とは思わなかった。女ばかりの学校だったし、これでも昔は女性からもラブレターを貰ったわ。男と別れてあの時、あんたなら置いてくれると思ってね。」
乳首を噛まれて私は呻きを上げた。
「やっぱりあんたは、女にももてたんだね。」
もう笑いながらヨーコが顔を上げた。
「妬ける?」
私も笑いながら唇を合わせた。

「あんたが見たお腹を切る女だけど・・・。後ろから支える女がいたって言ったよね。」
「腰元みたいだったわね。」
「それは私かもしれない。」
彼女が呟くように言うのを聞いて、私の手が止まる。
「私も同じような夢を見た気がする、随分前に・・・。」
背筋を冷たいものが走った。私たちはもう笑っていなかった。理屈ではなかった。遠い過去に戻った様な不思議な懐かしさを感じた。
無言で見つめ合い、同じことを考えているのがわかった。心の奥に埋められていた箱が開かれたように感じて、しばらく言葉も出なかった。それは明らかに魂に刻まれた前世の記憶だった。
人の魂は生まれ変わりながらも求め合うという。此の世では短くても、私たちは前世からの縁に違いない。それはもう確信といえた。
「生まれる前から決まっていたのね。」
私はヨーコを抱き締めて呟いた。


 前世の縁

天正10年(1582年)織田徳川軍に追われ、武田勝頼は天目山近くの田野で果て、甲斐の名流武田はここに滅亡した。最期まで同行した正室北条夫人は北条氏康の娘、従う女中十人ばかりと共に切腹したと伝えられている。戦国の雄、北条早雲の血を引く女としては頷ける最期である。

すでに逃れる道は閉ざされていた。奥方は十四で嫁ぎ、歳はまだ二十歳にもならなかった。子はなかったが仲睦まじい夫婦(めおと)であったという。
「生きて捕らえられてはならぬ。妾(わらわ)は腹いたします。」
奥方は女中達を見渡して言った。
「最期までお供が叶い嬉しゅうございました。」
年嵩と見える女が言うと、居並んだ者たちは揃って頭を下げた。
奥方は一人の女を従えて部屋に入られ、次の間に残された者たちは思いのままに座を占める。
「来世もまたお会いいたしましょう。」
一人が声をかけると、皆が頷き合い声をかけ合った。若い女ばかりの華やかにも和んだ空気が流れる。共に死ぬ気安さに心が馴染んだ。
女とはいえ覚悟の者ばかり、胸から腰までも押し開いて腹を切る者もいた。抱き合い刺し違える者もいた。次々と柔肌に刃を立て、くぐもる声が上がっていった。

「あの者たちも潔く死んでくれましょう。」
隣の部屋からは呻く声が重なり聞こえてくる。
「ここまでお供してきた者ばかり。ご懸念はいりませぬ。」
奥方は落ち着いた様子で前肌を寛げる。美しい女であったという。幼くして嫁ぎ、若いながらすでに春情を知る身体。子を産まぬ柔肌悩ましく、女の艶は匂い立つばかり。女が後ろに添うて控えた。
「腹切れば、名を汚さずに逝けよう。」
苦痛激しくとも、それが誇り高き武家の意地と思えた。
胸元から撫で下ろし、下腹を揉み緩めた帯を押し下げる。束の間目を瞑って想いを凝らした。ゆっくりと膝割り腰を浮かし、脇坪に当てた懐剣の刃に身体を預けて滑らせる。
「うむっ、うむむむぅぅ・・・。」
肩震わせて呻きながらも切り割く腹、流れる血が膝を染めた。しばし堪えて身をもんだ。
「手を添えさせて頂きましょう。」
後ろに控えていた女が、後ろから抱いて手を添えた。力を込めて深く突き立てる。
「うぐぐぐうううう・・・。」
尻揺らし悶えて夫に抱かれ貫かれる夢を見た。もがく奥方を抱き抱えて、女は胸の谷間を深くも抉った。肉のすべてが震え痙攣していた。震える身体がおさまるまで、女は背を抱き続けた。
奥方の死に姿整えて、女は次の間を確かめる。部屋は血の海、手を貸し合い刺し違えて、すでにもう呻く声さえもなかった。一人一人確かめ、乱れた裾を整えてやった。

女はお輿入れに従い武田の家に入った。姫が女になられた時も控えていた。いかなる時も奥方の側を離れぬのが役目であった。生涯女の春を求めず、すべてを奥方に捧げて悔いなかった。
座って両肌脱ぎ、腰までも脱ぎ落とした。二十歳半ば、武に鍛えられた身体と見える。脂肉なく引き締まり美形といえた。瞑目して想いを凝らし、落ち着いた様子で懐剣を握り腹を揉む。
「次の世も必ずお側に。」
伏せる奥方に目を走らせて、ゆっくりと腰を浮かす。
「参ります。」
勢いつけた刃先を叩きつけるように突き立てた。両膝立ちに伸び上がり、苦痛を堪え身をもんだ。悲壮な呻きを漏らしながらの深腹、女はゆっくりと刃を運んでいった。

同じ夢を見ていたのかもしれない、しかし私とヨーコは魂に刻まれた記憶だと信じた。
悠久の時の中ではこの世はひと時の夢、生まれ変わる魂の輪廻を信じるなら、死ぬのはひと時の眠りにすぎない。想いを凝らして逝けば、魂に刻んで次の世に想いを繋げる。想う人を念じて腹を切れば、必ず次の世の縁(えにし)になると思えた。
苦痛に堪え、切腹し殉ずるが究極の愛の行為だと思った。腹切り果てれば、次の世も、きっと私たちは巡り逢えると確信した。



 夢の縁

私たちにとって、切腹は死ぬためではなく愛を確かめる行為だった。あのままで行けば、二人は幸せな最期を遂げていたはずだ。しかし、投げやりだった私が彼女を愛し始めた頃、私の中の悪魔が分裂し萎縮を始めた。医者は奇跡だと言った。しかしその頃、ヨーコが交通事故に遭った。命は取りとめたが、昏睡状態が続いて覚めなかった。まるで私の身代わりになったようだった。私は彼女の側を離れずに世話を続けた。
彼女が病院のベッドで眠り続けてもう三年が経っていた。

「脳波から見るとまだ脳死とはいえません。感情域が活発に動いていますから、きっと夢を見ているんでしょうね。」
「覚めるんでしょうか。」
「数十年も経って覚める例もありますからね。」
医者はそう言ってベッドで眠るヨーコを見てため息をついた。

私はいつもヨーコの側に居た。『あなたが死ぬって、私にはきっとラッキーだね。』彼女の言った意味がわかった気がした。あれはきっと最高の愛の告白だった。
眠り続ける以外は、彼女は生きていることのすべてを備えていた。私にはそのすべてが愛おしく尊いものに思えた。
「あなたはもう私だけのものよ。」
今はもう、女である私が同性である彼女を愛していることに疑いを感じなかった。彼女のすべてを所有できて私は幸せだった。ヨーコがこのまま永遠に覚めないことを私は願った。
常に取り付けられている脳波計の変化から、私にも彼女が夢を見ている時がわかるようになっていた。或る一定の波形の後で、彼女の女性器が潤い始める。私には彼女の見ている夢がわかる気がした。
私は彼女がお腹を切る姿を想像した。それは激しい生の燃焼とその後に訪れる甘美な死の妄想だった。いつか私自身もそんな死に憧れを感じるようになっていた。彼女が淫夢を見ている時、その側で私は自分を慰めた。

その時、いつものように私は彼女の手を握っていた。
「レイ・・・。」
ヨーコはうわ言のように呟いた。私は耳を疑った。しかしそれが目覚める前兆だった。
しばらくして彼女は何事もなかったように目を覚ました。
「やっぱり待っていてくれたのね。」
自然な口調だった。
「夢を見ていたのね。」
私は彼女の手を握り締めて、ただそれだけを言った。

ヨーコの回復は目覚しかった。数ヶ月のリハビリの後、二人はまた元の部屋に戻ってきた。
「周りは随分変わったのね。リハビリを受けながら、眠っていた間のことを聞いたわ。あなたは私を愛しているって公言していたそうね。誰にも私を触らせなかったって。」
窓から外を見ながら陽子は言った。
「いけなかった?」
私が後ろから笑いながら答える。
「恥ずかしかったけど、本当に嬉しかったわ。」
「あなたが眠っている間に、私の病気はすっかり治ったわ。奇跡だと言われたけど、私はあなたの愛が救ってくれたと信じているわ。」
話しながら、傍に立って手を握る。
「もう離れないわね、いつまでも。」
どちらからともなく唇を重ねた。
私はもう自分の中心が潤い始めたのに気がついていた。窓のカーテンを引いてベッドに誘った。
愛し合いながら、すべてが夢なのかもしれないと私は思った。
「まだ夢を見ている気がするわ。」
「そうよきっとすべてが夢ね。」
私たちはいつまでも愛し続けた。

  完


 あとがき

お読み下さった皆様へ

ヨーコは、幼い頃のトラウマから男性を愛せなくなっていました。レイと知り合い好意を伝えます。しかしそれはまだ、同性愛の対象というより、少女期の憧れに近いものであったのかもしれません。二人が同居するようになっても、しばらくは二人の関係は友人の域を出ませんでした。
レイは普通に異性と愛し合う喜びを知っています。ヨーコの気持ちはわかっていても、同性である彼女の肉体への愛撫を受けることには抵抗がありました。しかし死を意識して、彼女の愛を受け入れようとします。

ヨーコが切腹する姿を見せます。それは生命の完全な燃焼の後に訪れる死の妄想でもありました。完全な達成感と満ち足りて安らかな終結の予感。彼らはそこに永遠の愛と死の結合を感じます。
レイは短刀から啓示を受けます。魂に刻まれた記憶は、輪廻して次の世に繋がる。それは夢想かもしれません。しかし死を前にして、それこそはただ一つの救いに思えたのです。
切腹した勝頼の妻と、それに殉じた女を自分達の前世と信じることで、次の世をまた信じることができるのです。夢妄想であろうと、時空を超えた同じ記憶を共有すると信じることで二人の心は深く結ばれます。幼い頃に受けた陵辱さえもが、二人を導いた運命とさえ思えるのです。

愛に目覚めたレイの肉体は、生命の奇跡を起こして死を逃れます。しかし、身代わりになるようにヨーコが事故に遭い、ヨーコは眠ったままベッドに横たわることになります。
看病をするレイに、ヨーコの肉体のすべてがゆだねられます。それはまた、レイに捧げられた生贄であったのかもしれません。すでにもうレイには、同性を愛することの後ろめたさはなくなっていました。夢と現実、眠りと覚醒、愛と死。レイの中ですべてが結びついていきます。
やがて、ヨーコが目覚めます。もう前世からの運命を疑うことはありません。愛し合いながらすべてが夢かとも思います。深くも結ばれた魂は次の世もまた巡り逢う。二人は永遠に離れる事はないと確信するのです。
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by kikuryouran | 2007-08-22 05:48 | 同性愛 | Comments(0)

奇形の恋 前編


 第一回 ペニスを持つ女

シャワーを浴びて大きな鏡の前に立つ。いろんなポーズで自分に訊いて確かめる。
「どう?きれい?」
悪くは無いわね。胸の膨らみ、しまったウエスト、お尻の張りを確かめて鏡の中の顔が少し微笑む。うん、パーフェクト、一箇所だけを除いてね。私のピーちゃんが恥ずかしそうに黒い繁みから覗く。私はよしよしと撫ぜてやった。私は完璧な女性の身体にペニスを持っていた。
「エリカ、用意が出来たわよ。」
きっこが部屋に入って来る。後ろから抱いて首筋に唇を付けた。鏡を見たままで後ろ手に腰を抱き、首を曲げて口付けを受けてやる。鏡の中で並んだ顔が微笑んで目を合わす。
「きれいだわ。」
鏡に写った私の身体を見て彼女が言った。
「締めてあげるわね。」
私の返事も聞かずに、彼女は白い布を取って私の前に跪(ひざまづ)く。私は脚を広げて彼女の肩に手を置いた。慣れた手つきで私の股間に締め込みを着ける。
「まだ可愛いじゃない、あんなに大きく逞しくなると思えないわね。」
顔の前のペニスに軽く口付けして、膨らみの中に納めてくれた。彼女がかいがいしく私に白い単衣を着せる間、私は鏡の中の自分の姿を見ていた。

きっこと二人の切腹プレイはもう何度目だろう。。窓も壁もカーテンで囲い、床には白いシーツが敷かれ、三宝に置かれた切腹刀が中央に置かれている。私のマンションの一室は切腹部屋に拵えられていた。私は座に着いて控える。芝居がかりな彼女の言葉で切腹の申し渡しを受ける。
「お情けで賜る切腹、有難くお受け申します。」
私も調子を合わさなければならない。帯を解いて傍らに寄せ、腰紐押し下げて前を寛げる。逸る気を静めるようにゆっくりと、胸元の谷間から下腹のふくらみまでもあらわすと、部屋の空気が少しづつ重くなり、外の世界とは異次元の空間になっていく。プレイのはずの切腹がリアルな死の儀式になり、緊張高まり、擬刀は真剣の妖しい光を放っているように見える。気の昂揚がまさに昇り詰めようとする時、私は切腹刀を腹に当てた。私は息が詰まるような切腹プレイのこの瞬間が好きだ。

きっこを見ると、彼女も息を殺して私を見詰めている。無言のままに頷き合って、私は見下ろして腹を探り、両膝立ちに腰を浮かした。力を込めて突き立てた切腹刀が、はらわたまでも貫いた気がした。
「うむううう・・・。」
両手で握って切り回し悶えるうちに、片襟滑って豊満な乳房があらわれ揺れた。この時、私は演技のはずが死の影を見ていた。死の臨場感に生命が凝縮され、ヴァギナが震え収縮し、眠っていた男の性が猛り始める。膝元乱れてすでに男根は大きく膨らみ、締め込みを跳ね除けて雁首を覗かせていた。私は下帯を解いて、濃い草叢から逞しく屹立する男根を握り締める。噴き上げる快感を感じながら私は前に座る女と見詰め合い、指が恥ずかしい律動を始めていた。女の肉体が今、男の自決を遂げようとしていた。
「逝く・・・・。」
全身が震え痙攣して、私の男は精を吐き続けた。その瞬間、ヴァギナもまたアヌスと共に収縮を続けているのがわかる。張り詰めていた気が途切れて、私はゆっくりと前に倒れ込み、全身を覆う快感に身をゆだねて魂が降りるのを待った。

男の性を燃焼させて横たわる完全な女の造形に女はにじり寄った。すべてを脱がせて仰向けに寝かせ、萎えたペニスをなだめるように清めて愛液が溢れ出す女陰を拭ってやる。二つの性を燃え尽くさせて、エリカは目を瞑ってなされるままになっていた。
「あなたはやはり神よ。」
目を潤ませて、きっこは横たわる肉体を愛おしそうに撫ぜた。

陰の性をしか持たぬゆえに陽を求め、陽もまたしかり。陰も求めず陽も求めず、陰にも応じまた陽に応える。両性を併せ持つ神とも見える完全な性。浅ましくも淫らと見える他者との性の交合が一つの肉体で完結していた。


 検査

半年前、私は両性具現者の医療研究機関に法外な報酬で協力を求められた。自分の身体を知りたいと思う気持ちがあった私は、匿名であることを条件に承諾した。
私は身体の隅々まで調べられ、恥ずかしい局部の映像も撮られていた。
「驚きましたね、これほど完璧に両性を持っておられる例を私は知りません。」
担当の医師は検査の結果を見ながら言った。
「あなたのスペルマと卵子をいただきたいのでが、よろしいですか。後の事を考えて、採取するところを記録します。勿論公表する事はありません。」
もう決まった事のように彼は了承を求めた。私に異存はなかった。自分でも調べて欲しい気持ちはあったし、法外な報酬も貰っている。
「私はここに来る時に、どんな検査も受ける覚悟で来ています。」

冷たい婦人科の処置台のようなところに裸で寝かせられ、私は脚を広げて足首を固定された。
「念のために採取するところを映像に撮ります。合成だと言われないようにすべての覆いはかけません。恥ずかしいでしょうが我慢して下さい。では、卵子の採取をさせてもらいます。」
担当医師が冷たい声で言った。周囲をみると幾つものカメラのレンズをみとめられた。事前に陰毛はすべて剃られている。ここでは私はただの研究材料の個体でしかなかった。
冷たい器具が挿入されて、ヴァギナが大きく開かれた。固定カメラが股間を撮影しているのを見て、私は目をつぶった。近くの部屋ではきっと、モニターの前で多くの人が私の局部を見詰めているのだろう。無遠慮に奥まで器具が挿入されていく。もう恥ずかしさは感じなかった。楽しい事を考えようとしたが、涙が溢れて止まらず自分の身体を呪う事しか出来なかった。
「はい、終わりましたよ、ご苦労様でした。では、スペルマの採取にかかります。」
彼等には感情がないのだろうか。相変わらずの冷たい声だった。まるで映像に解説をつけるような口調だった。
「女性の看護士の手で採取しますがいいですね。」
自分の手で自慰をするつもりもなかったので、私は天井を見たまま頷くしかなかった。大きなマスクをかけた看護婦が入ってくる。手にはゴム手袋を着けていた。目に見覚えがあったが誰かはわからなかった。ジーッと乾いた音を立ててカメラが動くのがわかった。
薄いゴム手袋を透して、看護婦の指が男性器を触っていたが萎えたままピクリとも動かなかった。
「先生、マスクを外していいですか。」
聞き覚えのある優しい声だった。私は声の方を見た。剃毛をしてくれた看護婦だった。
「ごめんなさい。手袋は取れないの。」
彼女は私の横に身体を添わし、私の手が自分の身体に触れる位置に移動した。
「私がここに立てば、せめてあなたの顔はカメラから見えないわ。」
彼女は悲しそうな目で私を見た。ここに来て初めて、私を人間として見てくれる人がいた。
「もう死にたい。殺して・・・。」
どうしてあの時、そんな言葉が口をついたのかはわからないけれど、確かに私はそう言った。
「いいわ、私も切腹してあげる。」
「切腹・・・。」
私は彼女の目を見た。彼女は私から目を逸らさなかった。
「逝かせて、あなたの手で・・・。」
私は目を瞑って、ペニスをこする指に神経を集中した。手を伸ばすと白衣を透して肌温もりが伝わる。指の動きにつれて彼女の腰が揺れた。私が腰に手を回すと彼女は私を見て微笑んだ。
「逝って頂戴、恥ずかしい事なんてないのよ。」
やがて突き上げる快感が訪れ、男として私は果てた。


 完全な性

一応の検査を終えて、私はマンションに帰ってきた。研究機関が私のために用意してくれた部屋だった。しばらく私は週に一度検査に通わなければならない。翌日彼女が部屋に訪れてきた。
「約束を果たしにきたわ、入れてくれる?」
インターフォンから流れる声で誰かはすぐにわかった。

「あなたの剃毛をした時、お腹の傷痕を見たの。切腹プレイの痕だとわかったわ。私にも同じ傷痕があるの。」
白衣を脱いだ彼女はどこにでもいる地味な印象の女性だった。ブラウスを持ち上げて白い腹部を私に見せた。
「最近お肉がついてしまって恥ずかしいけどね。」
彼女には下腹に私と同じ微かな痕があった。
「あなたの男性が私の手の中で逞しくなったあの時、私はあなたに受け入れてもらえたと思った。あなたが死ぬのなら、私も一緒に死んでもいいと本当に思ったわ。どうしてそんな気持ちになったかは自分でもわからない。あなたはとても悲しい目をしていたわ。」
彼女は真剣な目で私を見ていた。
「私は奇形よ、生きている資格も無いわ、愛される資格さえも。」
「私はあなたの検査の結果を知っているの。あなたは完全な女で・・・、そして完全な男だったわ、肉体も機能も。」
「私は完全な女でなく、男でもなかったということなのね。」
「いいえ違うわ、あなたはわかっていない、あなたこそが完全なの。あなたこそが完璧な人間なの。すべての人に愛される資格があるということなのよ。」
「ありがとう、そんな風に考えた事もなかった。本当の友達になってくれる?」
「あなたの側にいられるなら私はどんな形でもいい、僕(しもべ)でも恋人でも友達でも。」

それまで、私には心を許せる友はいなかった。常に私は一人だった。自分は奇形だという意識が常に人を遠ざけ怖気づかせた。彼女にはすべてを知られ見られている事が、私の気持ちを和ませた。
「あなただけに恥ずかしい思いをさせているのは片手落ちだものね。」
彼女は本当に切腹プレイを私の前で見せてくれた。ふくよかとも見えた身体が萌え悶える様子は、私の男である部分を目覚めさせ、導かれるように男性として私は初めて女性との経験を持った。初めて抱く人肌は心地よく、抱かれれば心溶かせた。私は彼女にだけは身体も心もゆだねる事ができた。
「男と寝た事はあるの?」
私の胸から顔を上げて彼女は訊いた。直截な言い方だった。私は黙って首を振った。


 想い

私が精液採取のために部屋に入った時、彼女は悲しい目をしていた。剃毛する時に陰部はすでに知っていたが全身を見たのは初めてだった。ペニスが付いている以外は完璧な美しい女の身体だった。乳房は程よい大きさでお腹は無駄な脂肉を感じさせず、美しいヒップからはしなやかな脚が伸びていた。全裸で股間を広げられ足首を固定されて、男にはわからない惨めな姿勢だった。何台ものカメラが見える。彼女は心を閉ざしていた。私は同情の気持ちを伝えようとした。私の手の中で見事に屹立して精を放ったのはまさしく男のそれだった。私は不思議なものを見るように、改めて彼女の美しい女の肉体を眺めた。
初めての交わりは、私が導いて結ばれた。私は数人の男性との経験はあったが、女性と愛し合った事はなかった。憧れたことのある女性を思い出して抱き愛撫し、身体は男に抱かれた時を思い出していた。不思議な感覚だった。自分が男のように錯覚してしまう事もあった。自分が男に望んだ様に愛撫し、性具も使った。彼女はあくまでも女で、彼女の中に男の性が潜んでいた。私の性癖を受け入れてくれた事も嬉しかった。私はいつか彼女の身体に夢中になっていた。

きっこは私の唯一の友であり夫であり妻になっていた。私の子供を産みたいとさえ言ってくれた。彼女は切腹プレイを好み、私も同じ趣味だと思っていた。私は男として彼女と交わり、同性愛のように愛し合い、同じ趣味の者として切腹プレイを見せ合った。
若い頃、自分の奇形に絶望して私は自殺を企てた。男らしく死にたいとお腹を切った事があった。お腹に残っていた傷痕は、彼女が思ったような切腹プレイの痕ではなかった。彼女は、私が切腹プレイを自慰の手段としていると誤解していたが、彼女がそれを望むなら、私は本当に切腹してもいいとさえ思って彼女の望むままに切腹プレイを繰り返した。
私は自分の身体の変調に気がついていた。愛し合う度に女としての潤いが増え、男性としての喜びが大きくなった。一人で自分を慰めていた頃は女として果てる時と男として果てる時が別だったが、彼女と愛し合うと必ず両方の性が譲らなかった。私は私のすべてで彼女を受け入れ愛していた。
ゴム手袋を透して受けた指の愛撫を思い出す。マスクを取って身体を寄せてくれたのは、彼女の精一杯の優しさだと感じた。手に伝わる温もりだけが私の救いだった。あの時、私は彼女の思いやりに心を開いた。あの優しさを思い出すだけで私はすべてを許せた。あの時、私には彼女こそが神だった。
私には彼女しかいなかったし、もう彼女だけがいればよかった。
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by kikuryouran | 2006-04-14 09:51 | 同性愛 | Comments(0)