愛と死の妄想  feseppuku.exblog.jp

ショートな妄想フィクションを書いています


by kikuryouran
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2015年 10月 09日 ( 2 )

素面


もう長くはないと聞いて見舞いに行った。
「病院では化粧ができないの。」と彼女はハンカチで口元を隠した。
素っぴんの彼女は年齢以上に老けて見えた。
「こんな顔を見たら、きっとする気も起きないわね。」
「試して見るか。」と笑いながら手を握った。
「きっとよ。」と握り返して、彼女は涙を溢れさせた。


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by kikuryouran | 2015-10-09 09:10 | 平成夢譚 | Comments(0)

妻の呼び方


最初の頃、彼女は私のことを『ボク』と呼んだ。
彼女と一緒に住むようになって『キミ』になった。
結婚して『アナタ』と呼ばれ、酔うと『オマエ』になる。
彼女は私より一回り年上で、美しくて才能がある。
私は尊敬の念を込めて、最初から『レイコさん』で通している。
愛し合う時だけは『レイコ』と呼び捨てにすることを許されている。


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by kikuryouran | 2015-10-09 02:41 | 平成夢譚 | Comments(0)