愛と死の妄想  feseppuku.exblog.jp

ショートな妄想フィクションを書いています


by kikuryouran
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女人切腹


案内された部屋には、床を背にして女が待っていた。二十歳も半ばになっていようか。細面の美しい女だった。髪は御殿髷に纏めて白の単衣に細帯を締めている。明らかに死に衣装とわかる。
「私は当家の娘、美里と申します。故あって、女の身にて腹せねばなりませぬ。」
涼やかな声だった。
「拙者は古賀平四郎と申す者、ご依頼によりご介錯させて頂く。」
「古賀様と申されますのか、介錯を幾度も果たされたとか。」
「いかにも幾度か経験を積み申した。いささか腕に覚えもござる。差料は備前兼定の業物、ご懸念なくお任せなされよ。」
慣れた口調だった。
「頼もしいお言葉、安堵致しました。非礼な訊き様お許しなされませ。細腕にて果たせようかと心許なく・・・。」
「お覚悟あるなら造作もないこと。」
冷たくも非情な物言いだった。

部屋の中央に支度は調えられていた。白布を敷き三宝に切腹刀が載せられている。美里は落ち着いた様子で座に着いた。
しばらく躊躇って、座ったまま帯を解き単衣を脱いで傍らに寄せる。白い腰布だけになって座を正した。平四郎が無言のまま後ろに立った。
「女ながら存分に致したく、恥ずかしい姿ながらこのように。」
肩越しに振り返って女が言った。はにかむ顔が愛くるしい。
女の肌は透き通るほどに白い。首細くなで肩で脂肉少なく、乳房は形良く整っている。締まった腰と張った尻とが美しい曲線を描いていた。
「声をかけるまでお待ち下さいますように。」
女が前を見たまま頭を下げた。
「承知仕った、存分に致されるがよい。」
女が作法通りに三宝を押し頂き、腰を浮かせて尻下に敷く。切腹刀を手に柔らかい腹を揉んだ。膝割り、座を確かめるように尻を揺らし、背を立てて腹を押し出す。目を瞑って、覚悟を固めるようにしばらく想いを凝らした。
緊張の時が流れた。平四郎はこれまで刎ねた女首を思い出していた。目の前の細い首が切断されて落ちる瞬間を思い描きながら、立ち位置を確かめてもう動かなかった。

女が身体を捻じりながら脇に突き立てる。呻く声が漏れた。
「うむうううう・・・。」
白い背が震える。肩先が揺れ頭(こうべ)が揺れた。
臍の下辺りまで切り裂いて息をついた。
「うぐぐっうぐうううぅぅぅ・・・。」
苦しげな声が部屋に響く。
平四郎はゆっくりと刀を抜き、天井の高さを目で測った。
浅いと思ったのか、女が前に屈んでブスリと深く突き立てた。一気に血が流れ出し、白い腰布が前から赤く染まってゆく。
「うむうう・・・、あぁぁぁーー。」
呻き声に悲鳴が混じる。切腹刀を抱くように刀を引き回そうとして身を捩る。
「おねがい・・・もう・・・。」
女が身を揉みながら必死に苦痛に堪え、尻を後ろに突き出して首を伸べた。髪が乱れて首筋にかかる。全身に汗が噴き、小刻みに震えて介錯の時を待った。
落ち着いた様子で太刀を振り上げた平四郎が、女の首が揺れて定まらぬのを目で追った。
喘ぐ声が息をついた瞬間、女の揺れが止まる。太刀が一閃して、鈍い音と共に首が血を噴き上げながら鋭角に前に折れた。中程まで首を断たれて、膝の間に落ちた頭を抱くように女は静かになった。
斬られた首はしばらく赤い血を膝間に降らせた。むせるような血の臭いが鼻をつく。平四郎は太刀を振り下ろした残心のまま、血が広がるのを見ていた。
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Commented by 川崎真琴 at 2009-12-07 23:51 x
女性切腹の現実性を出した平四郎

女性切腹への期待が大きいほど現実性を失っています

下腹部の左から右まで女性が傷つけるとすると深さは5mmであってほしいです

だから女人切腹のように正中線を改めて深く刺したいです

しかし三島由紀夫さんでも傷が4cmだと伺っています

だから女は平四郎の介錯が不可欠です

最後の絵はとっても美しいです
by kikuryouran | 2007-10-29 08:38 | 平四郎 | Comments(1)