愛と死の妄想  feseppuku.exblog.jp

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by kikuryouran
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スクール水着の切腹 5

翌日、レイコは美希が来るか心配だった。いつもより早くプールに出た。
「レイコ先輩、早いんですね。」
美希の明るい声が響いた。美希はもう泳いでいた。
「吹っ切れたみたいね。」
「お腹の傷が沁みて痛いんですよ。」
水から顔を出して美希が笑いながら言った。
「全力で一本泳いでごらん、タイムを見てあげる。」
彼女の泳ぎは明らかにこれまでと違っていた。力強く気を抜かずに最後まで泳ぎきった。
「凄いじゃない。ベスト更新よ。」
「もうあんな悔しい思いはしたくありませんからね。」
「これじゃぁ私も抜かれるわね。競争しよう、かかってらっしゃい。」
レイコがコースに立つと美希が並んで立った。二人が同時に水しぶきを上げた。レイコは勝ったが、いつもよりも二人の差は小さかった。
「まだまだね。」
レイコは嬉しそうに言った。一緒に泳いで、昨日までの美希とは違う彼女を感じていた。
「先輩に勝って、また切腹させてやるんだから。」
「上等だね、いつでも受けて立つわよ。そっちこそ、また恥ずかしいところを見られないようにするのね。」
「今度は男子にも切腹させちゃいましょうよ。」
美希がおかしそうに笑った。

レイコは流して泳ぎ始めた。後ろから美希が随いて泳いでくるのがわかった。
競泳は孤独な競技だ。周囲を泳ぐ者はすべてが敵だった。しかし本当の敵は自分のベストタイム、スタートした瞬間から自分との闘いだった。それは際限のない自分との孤独な闘いといえた。

あの子はきっと強くなるわ、すぐに抜かれるかもしれない。また恥ずかしい罰を受けなければならないかもしれないと思った。彼女に剃られたところが水に沁みた。抜かせない、こっちがまた剃ってやるわ。負けられないわね。泳ぎながら笑みがこぼれる。
レイコは嬉しくなって速さを上げた。後ろの美希も負けずに水しぶきを上げるのがわかった。
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by kikuryouran | 2007-10-27 08:30 | 平成夢譚 | Comments(0)