愛と死の妄想  feseppuku.exblog.jp

ショートな妄想フィクションを書いています


by kikuryouran
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風の中で

夏の長い休暇の間は寮も静かになる。ほとんどの者が家に帰るか旅行に出かけた。
「この広い寮で、今日はもう二人だけだ。贅沢に朝風呂に入るか。」
「いいですね。」
1年生の野村が笑いながら言った
「二人だけならやっぱり広いですね。」
俺は風呂上りに庭のリクライニングチェアーに寝そべった。
「パンツぐらい履いて下さいよ。」
「男同士で恥ずかしいのかよ。いい気持ちだぞ。」
芝生の庭は広くて、木陰を風が抜けていた。笑いながら彼も裸で隣に寝そべった。
「本当ですね。まるで避暑地みたいだ。」
俺は隠していた缶ビールを出した。
「いいんですか?」
「いいさ、今日は二人だけなんだ。」
俺達は乾杯した。
「いい気持ちですね。」
「ああ、いい風だ。」
俺は思い切って彼の手を握った。
「俺はお前を前から好きだったよ。」
「はい、僕もです。」
彼も握り返した。
「いい気持ちだな。」
「はい、いい気持ちです。」
手を握り合ったまま、俺たちは流れる雲を目で追った。
二人の上を心地良い風が流れていた。
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by kikuryouran | 2007-09-29 03:30 | 平成夢譚 | Comments(0)