愛と死の妄想  feseppuku.exblog.jp

ショートな妄想フィクションを書いています


by kikuryouran
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買われた女

女が部屋に入ると、一人の少年が待っていた。
「私を買ったのはあなたなの?」
「僕じゃいけなかったかな。」
「いいえ、少し驚いただけ。メールじゃ二十歳と書いてあったし、あんなにお金をくれるのはどんな人かと思っていたから。あなたは幾つなの。」
「17・・・、いや本当はまだ16なんだ。お姉さんは二十歳だそうだけど、本当の歳を書いたら断られそうな気がしたからね。」
少年は少し虚勢を張るように言った。彼は背が高く、白いYシャツは清潔感を感じさせて、笑うと口元が可愛かった。意外に思いながらも彼の印象に女はほっとしていた。
「そうね、でももうお金も貰ってしまったし。本当は私も23よ、ごめんなさい。」
女は笑いながら言った。或る日ネットオークションを眺めていて、彼女は自分に幾らの値がつくのか試してみたいと思った。眼鏡を外し、いつもはしない化粧でブログに自分を売りたいと書いた。彼は破格の値をつけ、本気かどうか先に振り込んで欲しいとメールを出すと、本当に振り込んできた。幾度かのメールのやり取りの後、ホテルの部屋で待ち合わせた。夕方から翌日の朝まで、彼女は自分のすべてを与えるという約束だった。

「私はプロじゃないから、どうしていいのかよくは知らないの。」
女は少年の前に跪いてズボンを脱がせてやる。彼は恥ずかしそうに立っていた。まだ華奢な身体だったが、下着を脱がせると股間はもう立派な大人だった。黒々とした陰毛から男性自身は見事に勃起し、蒸れた若者の匂いで女は眩暈を覚えた。
「君はもう経験があるの?」
顔を見上げながら女が訊いた。素肌に着けたYシャツだけの姿で、彼は恥ずかしそうに首を振った。

ベッドで女は彼を優しく導いて交わり、震える体を抱きしめて彼の迸りを身体の奥まで受け入れてやった。
「お姉さんは本当に死にたいの?死にたいって書いてたね。」
気持ち良さそうに乳房に顔をつけて彼は言った。
「さあ、自分でもよくわからないの。」
女は彼の頭を撫でながら答えてやる。十幾つも上の男との情事と破局、そして自傷行為。死に憧れ試みた気持ちや死への怖れ。彼女はとりとめもなく、死についてブログに書いていた。
「お姉さんを殺したいな。」
真剣な目をして少年が顔を上げて言った。女の腹を探っていた彼の手が止まった。二人はしばらく無言で見詰め合っていた。この子は本気かもしれないと女は思った。

少年のものがまた侵入してきた。彼はもうためらいなく根元まで一気に貫いた。女は喘ぎ、そして彼の体を抱き締めて呟いた。
「殺していいのよ、殺したいんでしょ。」
少年が激しく腰の律動を繰り返した。
「いいわ、殺して、殺して頂戴。」
狂ったように女は何度も叫び続けていた。

少年の指が女の身体のすべてを確かめていた。女は恥部さえも委ねて、燃え残る気だるさの中で考えていた。『ブログに書き込みながら、自分を殺してくれる相手を私は無意識に探していたのかもしれない。自分は命までも売ろうとしていたのかもしれない。』
「お姉さんはきれいだ。」
「ありがとう。どんな風に殺したいの?」
「お腹を切り裂いてあげるよ。」
彼は女の下腹に口付けしながら言った。

部屋の灯りを落とすと、窓から月の光が入ってきた。
「僕はお姉さんのすべてを買ったんだ、命さえも。」
「そうね、私は君にすべてを買われたのね。」
二人は裸で向き合っていた。少年の手にはサバイバルナイフが握られている。
「本気なのね。」
「ああ、もちろんだよ。」
彼はゆっくりと女の腹に刃先をあてた。
「お姉さん、愛しているよ。だから殺してあげる。」
「さあ、あなたの愛を頂戴。」
女は腹を押し出してにじり寄り、少年を抱きしめた。
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by kikuryouran | 2007-01-22 18:07 | 平成夢譚 | Comments(0)