愛と死の妄想  feseppuku.exblog.jp

ショートな妄想フィクションを書いています


by kikuryouran
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女士官切腹

「お前も軍人として、責任の取り方はわかっているわね。」
河南誠子少佐は厳しい口調で言った。
山口レイカ中尉は直立して聞いている。
女だけの部隊だった。
K国スパイの若者が、中尉に近付き情報を盗み出した。
彼女は被害者とも言えるが、機密漏洩の責任は免れない。
「自分はどのような処分もお受けする覚悟です。」
「できれば、事件を公にしたくないの。」
事件が公になれば、女性部隊の威信が傷ついてしまう。。
「軍の威信を守るために、自決してもらえるとありがたいわ。」
「それは、命令でしょうか。」
「あなたの身の処し方で、女でも軍人の覚悟はあると認めさせてやれるわ。」
少佐が諭すように言った。
中尉は、少佐の意図がやっとわかった気がした。

最近では女性士官も珍しくないが、軍の上層部にはまだ男たちの偏見がある。
『女に腹が切れるか。』
事に当たって切腹の覚悟があるか否かは、幹部士官の資質に大きな問題だとする空気があった。

「このままでは、女は認めてもらえないの。」
「私が腹を切れば変わると。」
「女でも切腹できると証明できるわ。」
しばらく沈黙の後で、中尉が最敬礼しながら言った。
「山口レイカ中尉は、機密漏洩の責任を取らせて頂きます。」
彼女は軍服の上から腹に拳を這わせた。

自室に戻って中尉は身辺の整理をした。
数通の遺書を書き、支度が済んだのはもう深夜に近かった。

彼女は、悔しいとは思わなかった。
自分が軍人になったのは、美しく死にたいと思ったからだ。
そして今、自分は最も軍人らしい最期を迎えようとしている。
これが自分に最も相応しい死に方かもしれないと思っていた。
女の覚悟を、男達に示すための先駆けとして腹を切る。
それは心地良い想像だった。

部屋はコンクリート作りで、隣室に音の漏れる心配はなかった。
軍人官舎であるこの部屋なら、血まみれになっても了とされるであろう。
最期の衣装は素肌に白の軍服を着けた。
鏡に写った姿にレイカは陶然として満足した。
「なんて美しいんでしょう。」

古来、切腹にはその方法に伝承がある。
士官学校では、自決の心得として腹の切り方を教えられた。
上着とズボンの前ボタンを外して、下腹までも露わにする。
短刀は自決用として用意していた。
刃は七寸余り、身幅狭く先鋭く手に馴染む。
腹を切るには申し分ないと思えた。
刀身に白布巻き付け、逆手に握る。
膝立ちに腰を上げて、腹を揉む。
全ての神経はこれから切り割く辺りに集められた。
処刑するのは自分、腹を割かれるのもまた自分。
それは自らの手で魂を昇華させる崇高な戦いだった。
軍人として立派に死を全うする事に精神は高揚し、もう躊躇いはなかった。

息を計って、叩きつけるように腹に突き立てる。
「ウムゥ・・・、アゥゥゥ・・・。」
一寸余りも刃先が沈んで血が滴る。
呻きを漏らし、腰を揺らしながら刃を横に引く。
「アグゥ、ウムゥゥゥ・・・。」
筋肉の全てが硬直し、震えていた。
頭の中で進軍ラッパが響き続けた。
それはまさに孤独な戦闘だった。
膝間は赤く染まり、敷き詰めた布団が血を吸っていく。
レイカは手を緩めない。
狂ったようにお腹を割き続けた。


「見事な切腹ね。」
モニターを見ながら河南少佐が呟いた。
官舎の全ての部屋に隠しカメラが仕掛けられている。
一部の幹部だけが知っている秘密だった。
そう遠くないいつか、自分もまた切腹する予感が彼女にはあった。
画面の中で、レイカが女の中心を刺し貫いている。
すでに狂艶の頂を見て、彼女の表情は穏やかな笑みさえも浮かべていた。
「美しいわ。」
それはエロスの極まりに思えた。
河南少佐は女の芯が疼き始めたのがわかる。
マグマをもう止めることはできなかった。 
思わず指が延びる。
魂は快感とシンクロして昇り詰めようとしていた。
「もうすぐよ、もうすぐ私もいくわ。」
苦痛と喜びが溶け合う死の陶酔に感応していた。
「あああっ、いい・・・。」
白い光を放って、魂が一気に弾け散った。


その半年後に、河南少佐は自決を迫られた。
彼女は拒むことなく見事な切腹を果たした。


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Commented by kirikiri2010 at 2017-10-20 00:54
いつもながらに、美しい腹切りの姿。
待ち焦がれていました。
Commented by soruto at 2017-10-21 06:31 x
キク様 長い間お待ちいたしました。。これからも、少しずつで構いませんので女性切腹のこころを綴ってください。。秋の夜長、旧作品も読みながら手習いさせていただきます。
Commented by kikuryouran at 2017-10-24 23:36
kirikiriさん、sorutoさんお久しぶりです。
まだ忘れずにいて下さったのですね。
感謝、感謝。
長い間書かなかったので、正直けっこう大変でした。
次作が出せるかどうかはわかりません。
(笑)
by kikuryouran | 2017-10-15 05:57 | 女腹切り情景 | Comments(3)