愛と死の妄想  feseppuku.exblog.jp

ショートな妄想フィクションを書いています


by kikuryouran
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奇形の恋 前編


 第一回 ペニスを持つ女

シャワーを浴びて大きな鏡の前に立つ。いろんなポーズで自分に訊いて確かめる。
「どう?きれい?」
悪くは無いわね。胸の膨らみ、しまったウエスト、お尻の張りを確かめて鏡の中の顔が少し微笑む。うん、パーフェクト、一箇所だけを除いてね。私のピーちゃんが恥ずかしそうに黒い繁みから覗く。私はよしよしと撫ぜてやった。私は完璧な女性の身体にペニスを持っていた。
「エリカ、用意が出来たわよ。」
きっこが部屋に入って来る。後ろから抱いて首筋に唇を付けた。鏡を見たままで後ろ手に腰を抱き、首を曲げて口付けを受けてやる。鏡の中で並んだ顔が微笑んで目を合わす。
「きれいだわ。」
鏡に写った私の身体を見て彼女が言った。
「締めてあげるわね。」
私の返事も聞かずに、彼女は白い布を取って私の前に跪(ひざまづ)く。私は脚を広げて彼女の肩に手を置いた。慣れた手つきで私の股間に締め込みを着ける。
「まだ可愛いじゃない、あんなに大きく逞しくなると思えないわね。」
顔の前のペニスに軽く口付けして、膨らみの中に納めてくれた。彼女がかいがいしく私に白い単衣を着せる間、私は鏡の中の自分の姿を見ていた。

きっこと二人の切腹プレイはもう何度目だろう。。窓も壁もカーテンで囲い、床には白いシーツが敷かれ、三宝に置かれた切腹刀が中央に置かれている。私のマンションの一室は切腹部屋に拵えられていた。私は座に着いて控える。芝居がかりな彼女の言葉で切腹の申し渡しを受ける。
「お情けで賜る切腹、有難くお受け申します。」
私も調子を合わさなければならない。帯を解いて傍らに寄せ、腰紐押し下げて前を寛げる。逸る気を静めるようにゆっくりと、胸元の谷間から下腹のふくらみまでもあらわすと、部屋の空気が少しづつ重くなり、外の世界とは異次元の空間になっていく。プレイのはずの切腹がリアルな死の儀式になり、緊張高まり、擬刀は真剣の妖しい光を放っているように見える。気の昂揚がまさに昇り詰めようとする時、私は切腹刀を腹に当てた。私は息が詰まるような切腹プレイのこの瞬間が好きだ。

きっこを見ると、彼女も息を殺して私を見詰めている。無言のままに頷き合って、私は見下ろして腹を探り、両膝立ちに腰を浮かした。力を込めて突き立てた切腹刀が、はらわたまでも貫いた気がした。
「うむううう・・・。」
両手で握って切り回し悶えるうちに、片襟滑って豊満な乳房があらわれ揺れた。この時、私は演技のはずが死の影を見ていた。死の臨場感に生命が凝縮され、ヴァギナが震え収縮し、眠っていた男の性が猛り始める。膝元乱れてすでに男根は大きく膨らみ、締め込みを跳ね除けて雁首を覗かせていた。私は下帯を解いて、濃い草叢から逞しく屹立する男根を握り締める。噴き上げる快感を感じながら私は前に座る女と見詰め合い、指が恥ずかしい律動を始めていた。女の肉体が今、男の自決を遂げようとしていた。
「逝く・・・・。」
全身が震え痙攣して、私の男は精を吐き続けた。その瞬間、ヴァギナもまたアヌスと共に収縮を続けているのがわかる。張り詰めていた気が途切れて、私はゆっくりと前に倒れ込み、全身を覆う快感に身をゆだねて魂が降りるのを待った。

男の性を燃焼させて横たわる完全な女の造形に女はにじり寄った。すべてを脱がせて仰向けに寝かせ、萎えたペニスをなだめるように清めて愛液が溢れ出す女陰を拭ってやる。二つの性を燃え尽くさせて、エリカは目を瞑ってなされるままになっていた。
「あなたはやはり神よ。」
目を潤ませて、きっこは横たわる肉体を愛おしそうに撫ぜた。

陰の性をしか持たぬゆえに陽を求め、陽もまたしかり。陰も求めず陽も求めず、陰にも応じまた陽に応える。両性を併せ持つ神とも見える完全な性。浅ましくも淫らと見える他者との性の交合が一つの肉体で完結していた。


 検査

半年前、私は両性具現者の医療研究機関に法外な報酬で協力を求められた。自分の身体を知りたいと思う気持ちがあった私は、匿名であることを条件に承諾した。
私は身体の隅々まで調べられ、恥ずかしい局部の映像も撮られていた。
「驚きましたね、これほど完璧に両性を持っておられる例を私は知りません。」
担当の医師は検査の結果を見ながら言った。
「あなたのスペルマと卵子をいただきたいのでが、よろしいですか。後の事を考えて、採取するところを記録します。勿論公表する事はありません。」
もう決まった事のように彼は了承を求めた。私に異存はなかった。自分でも調べて欲しい気持ちはあったし、法外な報酬も貰っている。
「私はここに来る時に、どんな検査も受ける覚悟で来ています。」

冷たい婦人科の処置台のようなところに裸で寝かせられ、私は脚を広げて足首を固定された。
「念のために採取するところを映像に撮ります。合成だと言われないようにすべての覆いはかけません。恥ずかしいでしょうが我慢して下さい。では、卵子の採取をさせてもらいます。」
担当医師が冷たい声で言った。周囲をみると幾つものカメラのレンズをみとめられた。事前に陰毛はすべて剃られている。ここでは私はただの研究材料の個体でしかなかった。
冷たい器具が挿入されて、ヴァギナが大きく開かれた。固定カメラが股間を撮影しているのを見て、私は目をつぶった。近くの部屋ではきっと、モニターの前で多くの人が私の局部を見詰めているのだろう。無遠慮に奥まで器具が挿入されていく。もう恥ずかしさは感じなかった。楽しい事を考えようとしたが、涙が溢れて止まらず自分の身体を呪う事しか出来なかった。
「はい、終わりましたよ、ご苦労様でした。では、スペルマの採取にかかります。」
彼等には感情がないのだろうか。相変わらずの冷たい声だった。まるで映像に解説をつけるような口調だった。
「女性の看護士の手で採取しますがいいですね。」
自分の手で自慰をするつもりもなかったので、私は天井を見たまま頷くしかなかった。大きなマスクをかけた看護婦が入ってくる。手にはゴム手袋を着けていた。目に見覚えがあったが誰かはわからなかった。ジーッと乾いた音を立ててカメラが動くのがわかった。
薄いゴム手袋を透して、看護婦の指が男性器を触っていたが萎えたままピクリとも動かなかった。
「先生、マスクを外していいですか。」
聞き覚えのある優しい声だった。私は声の方を見た。剃毛をしてくれた看護婦だった。
「ごめんなさい。手袋は取れないの。」
彼女は私の横に身体を添わし、私の手が自分の身体に触れる位置に移動した。
「私がここに立てば、せめてあなたの顔はカメラから見えないわ。」
彼女は悲しそうな目で私を見た。ここに来て初めて、私を人間として見てくれる人がいた。
「もう死にたい。殺して・・・。」
どうしてあの時、そんな言葉が口をついたのかはわからないけれど、確かに私はそう言った。
「いいわ、私も切腹してあげる。」
「切腹・・・。」
私は彼女の目を見た。彼女は私から目を逸らさなかった。
「逝かせて、あなたの手で・・・。」
私は目を瞑って、ペニスをこする指に神経を集中した。手を伸ばすと白衣を透して肌温もりが伝わる。指の動きにつれて彼女の腰が揺れた。私が腰に手を回すと彼女は私を見て微笑んだ。
「逝って頂戴、恥ずかしい事なんてないのよ。」
やがて突き上げる快感が訪れ、男として私は果てた。


 完全な性

一応の検査を終えて、私はマンションに帰ってきた。研究機関が私のために用意してくれた部屋だった。しばらく私は週に一度検査に通わなければならない。翌日彼女が部屋に訪れてきた。
「約束を果たしにきたわ、入れてくれる?」
インターフォンから流れる声で誰かはすぐにわかった。

「あなたの剃毛をした時、お腹の傷痕を見たの。切腹プレイの痕だとわかったわ。私にも同じ傷痕があるの。」
白衣を脱いだ彼女はどこにでもいる地味な印象の女性だった。ブラウスを持ち上げて白い腹部を私に見せた。
「最近お肉がついてしまって恥ずかしいけどね。」
彼女には下腹に私と同じ微かな痕があった。
「あなたの男性が私の手の中で逞しくなったあの時、私はあなたに受け入れてもらえたと思った。あなたが死ぬのなら、私も一緒に死んでもいいと本当に思ったわ。どうしてそんな気持ちになったかは自分でもわからない。あなたはとても悲しい目をしていたわ。」
彼女は真剣な目で私を見ていた。
「私は奇形よ、生きている資格も無いわ、愛される資格さえも。」
「私はあなたの検査の結果を知っているの。あなたは完全な女で・・・、そして完全な男だったわ、肉体も機能も。」
「私は完全な女でなく、男でもなかったということなのね。」
「いいえ違うわ、あなたはわかっていない、あなたこそが完全なの。あなたこそが完璧な人間なの。すべての人に愛される資格があるということなのよ。」
「ありがとう、そんな風に考えた事もなかった。本当の友達になってくれる?」
「あなたの側にいられるなら私はどんな形でもいい、僕(しもべ)でも恋人でも友達でも。」

それまで、私には心を許せる友はいなかった。常に私は一人だった。自分は奇形だという意識が常に人を遠ざけ怖気づかせた。彼女にはすべてを知られ見られている事が、私の気持ちを和ませた。
「あなただけに恥ずかしい思いをさせているのは片手落ちだものね。」
彼女は本当に切腹プレイを私の前で見せてくれた。ふくよかとも見えた身体が萌え悶える様子は、私の男である部分を目覚めさせ、導かれるように男性として私は初めて女性との経験を持った。初めて抱く人肌は心地よく、抱かれれば心溶かせた。私は彼女にだけは身体も心もゆだねる事ができた。
「男と寝た事はあるの?」
私の胸から顔を上げて彼女は訊いた。直截な言い方だった。私は黙って首を振った。


 想い

私が精液採取のために部屋に入った時、彼女は悲しい目をしていた。剃毛する時に陰部はすでに知っていたが全身を見たのは初めてだった。ペニスが付いている以外は完璧な美しい女の身体だった。乳房は程よい大きさでお腹は無駄な脂肉を感じさせず、美しいヒップからはしなやかな脚が伸びていた。全裸で股間を広げられ足首を固定されて、男にはわからない惨めな姿勢だった。何台ものカメラが見える。彼女は心を閉ざしていた。私は同情の気持ちを伝えようとした。私の手の中で見事に屹立して精を放ったのはまさしく男のそれだった。私は不思議なものを見るように、改めて彼女の美しい女の肉体を眺めた。
初めての交わりは、私が導いて結ばれた。私は数人の男性との経験はあったが、女性と愛し合った事はなかった。憧れたことのある女性を思い出して抱き愛撫し、身体は男に抱かれた時を思い出していた。不思議な感覚だった。自分が男のように錯覚してしまう事もあった。自分が男に望んだ様に愛撫し、性具も使った。彼女はあくまでも女で、彼女の中に男の性が潜んでいた。私の性癖を受け入れてくれた事も嬉しかった。私はいつか彼女の身体に夢中になっていた。

きっこは私の唯一の友であり夫であり妻になっていた。私の子供を産みたいとさえ言ってくれた。彼女は切腹プレイを好み、私も同じ趣味だと思っていた。私は男として彼女と交わり、同性愛のように愛し合い、同じ趣味の者として切腹プレイを見せ合った。
若い頃、自分の奇形に絶望して私は自殺を企てた。男らしく死にたいとお腹を切った事があった。お腹に残っていた傷痕は、彼女が思ったような切腹プレイの痕ではなかった。彼女は、私が切腹プレイを自慰の手段としていると誤解していたが、彼女がそれを望むなら、私は本当に切腹してもいいとさえ思って彼女の望むままに切腹プレイを繰り返した。
私は自分の身体の変調に気がついていた。愛し合う度に女としての潤いが増え、男性としての喜びが大きくなった。一人で自分を慰めていた頃は女として果てる時と男として果てる時が別だったが、彼女と愛し合うと必ず両方の性が譲らなかった。私は私のすべてで彼女を受け入れ愛していた。
ゴム手袋を透して受けた指の愛撫を思い出す。マスクを取って身体を寄せてくれたのは、彼女の精一杯の優しさだと感じた。手に伝わる温もりだけが私の救いだった。あの時、私は彼女の思いやりに心を開いた。あの優しさを思い出すだけで私はすべてを許せた。あの時、私には彼女こそが神だった。
私には彼女しかいなかったし、もう彼女だけがいればよかった。
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by kikuryouran | 2006-04-14 09:51 | 同性愛 | Comments(0)