愛と死の妄想  feseppuku.exblog.jp

ショートな妄想フィクションを書いています


by kikuryouran
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自決の知らせ

「本日未明、ご夫君が自決されました。」
夫の部下だった下士官が連絡に来たのはもう昼を過ぎていた。
彼は玄関で直立敬礼してそれを伝えた。
軍人の妻として、常に覚悟するように言われている。
「連絡ご苦労様でございます。」
私は気丈にその連絡を受けた。

夫の自決は軍の機密だった。
私は遺体に会うこともできず、葬儀も許されないと彼は言った。
「最期の様子だけでもお聞きできますか。」
「割腹でした。」
「お腹を・・切ったのですか。」
私はしばらく絶句した。
「見事なご最期でした。」
何故かは軍の機密にかかわるので言えませんと彼は言った。
理由は私にも想像はついた。
「本懐でありましたでしょう。」
それ以上訊く事はもうはばかられた。

数日前から夫の覚悟は気が付いていた。
何日ぶりかで、彼は慌ただしく帰ってきた。
何も言わず、そのまま私を押し倒す。
下着をとるのももどかしく私を抱いた。
私は戸惑いながらそれに応える。
まだ固い口に押し入ってくる。
押し広げられる痛みが快感だった。
彼は獣のように私を貪った。
それは明らかにいつもの愛し方ではなかった。
彼の様子から私は何かを予感した。

私は逞しい胸に顔を埋め、情交の余韻に浸っていた。
「俺はここを・・・。」
彼は自分の下腹に拳を這わした。
それは軍人としての覚悟と思えた。
私は切腹している彼の姿を思い浮かべる。
切り割かれて血まみれのお腹を想像した。

熱いものが私の中でこみ上げる。
私は彼のお腹に唇をあてた。
「その時は立派になさるといいわ。」
目の前でまた彼が勃ち上がる。
それを握ってお腹に這わした。
「私もこうして・・・。」
それは誓いの儀式と思えた。
彼と一つになって私は上昇し、そして奈落に落ちていった。
これが最後なのかもしれないと私はその時直感していた。

「自決にお使いになったものです。」
形見に渡された短刀にはまだ血がこびりついていた。
軍装拵えで家紋が入っている。
夫がいつも身につけていたものだ。

夫の死を漏らすことは許されなかった。
その夜、私は一人で形ばかりの通夜をした。
形見の短刀を前に置き、思い出に耽る。
思案に余った時、彼はこの短刀をよく眺めていた。
刃先鋭く刃渡り八寸余り、家伝の鎧通しを拵え直したと聞いている。
「腹を切り易すそうだ。」
彼は刀身を眺めてそう言った。

目を瞑ると彼の姿が浮かぶ。
短刀を前に置いて、軍服姿で座っている。
「腹を切る。」
「ご立派になさいませ。」
私が礼をして頭を上げると、彼は裸だった。
短刀はすでに抜き身で握られている。
「・・・。」
男根が濃い草むらにそそり勃っていた。
私を見ながら腹を揉んだ。
肩は盛り上がり胸は厚く逞しい。
うっすらと汗が滲んでいる。
膝を開いて引き締まった腰を上げる。
強張った筋肉が腹に浮かび上がった。

夢だとはわかっていた。
それはあまりにも男らしく誇らしい姿に思えた。
私を見ながらゆっくりと刃先を突き立てる。
男の徴(しるし)が小刻みに揺れる。
「見ていろ!」
私を見ながら彼は腹を切り裂いていく。
血が滴り股間を濡らす。
苦しそうに顔を歪めた。
臍の下辺りを八寸ばかり、一文字に切って刃を抜き出す。
短刀を前に置き、血に濡れた手で男根を握った。
私は近付こうとにじり寄る。
「お最期は私が・・・。」
その時、大きく膨れ上がった先から白い命が噴出して散った。
彼は満足そうに笑って崩れ折れた。

気がつくと暗い部屋に一人座る自分がいた。
私の花弁がぐっしょりと濡れているのがわかる。
前に置いた短刀の鞘を払う。
刀身に血曇りが残っている。
夫の魂は、切腹する姿を私に見せたかったのだろう。
彼の死をやっと納得している自分に気が付いた。
お腹に這わした男根の感触を思い出す。
あの時私は、彼と共にお腹を切ると誓ったのかもしれない。

ゆっくりと夜が明け始めた。
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Commented by 切腹フェチ at 2011-06-04 06:00 x
女性切腹サイトの作品としては、このままでは不満です。
続編を期待しています。
夢の中の切腹なのだから、もっと奇抜でもよかったと思います。
男のものでも女のものでも楽しく読んでいます。
ふたなり物はどうでしょうか。
お願いできますか?
Commented by kikuryouran at 2011-06-04 21:09
続編をというのは、この妻もまた・・・。
ふたなり物は一度書きましたが、また考えてみましょう。
Commented by 玉梓1 at 2011-06-05 10:57 x
嫋々とした余韻に浸りながら、まだ芯が燃えております。Kikuさま、ありがとうございました。この前はつい、貴女さまがお応えにくい、はしたないお願いをいたしましたが、この度はそれに見事にお応えいただきました。嬉しく思っております。
割腹を決めた後の男女の細やかな情念の動き、やがてお勤め先でのご切腹へと進み、見事ご本望をお遂げになった証しの血染めの短刀、それをお受け止めになる女の心の動き―この度も主役は奥様だと思います。
Commented by 玉梓2 at 2011-06-05 11:00 x
夢の形で再現させる夫の切腹のありさまー特に割腹時の殿方の情念の動き―この回は、割腹し終えたあと、お止めの刃に身を任す寸前のご噴出―に設定して頂きました。淡々とした記述のなかに、これだけのことをお示し頂いたのです。一つの解を頂いたと思います。噴出のあと、男は急速に情念が冷えてゆくのだそうです。ですから、絶頂を極めた快感がまだ去らぬ前に、しっかりとお止めをなさり死ぬ。この辺のことは女の切腹でも充分理解できます。
このあと、主人公は、亡くなった夫の亡霊に護られながら一人で切腹をなさいます。その部分をわざとお書きにならないで、読者の想像に委ねられるkikuさまの心憎いまでのお筆運び―毎度のことながら、お慕い申し上げます。貴女さまのお誘いに乗って、充分堪能いたしました。

Commented by kikuryouran at 2011-06-06 05:45
これは少なからず玉梓さまのコメントをヒントに書いたものです。
お楽しみ頂けたら嬉しいです。
夫の亡霊に護られながらというのもいいですね。
このまま終わってもいい気もしていますが、切腹フェチさんの「女性切腹のサイトでこれでは・・。」というのもわかる気もします。(笑)
確かにご噴出をどう描くかはいつもむずかしいところです。
男性切腹がテーマの裏ものは、その辺りの描写はストレートですが、男性同性愛の中のジャンルの一つとして描かれる場合が多いようです。
男性切腹のエロスは、その潔い男らしさにあるのでしょうが。
女性のそれはどうでしょう。
ここに来る人それぞれの萌えツボを聞いてみたいですね。
Commented by 玉梓3 at 2011-06-06 13:13 x
お言葉、ありがとうございます。
拝読しておりますと、限りなく、前にも申し上げたことがある、終戦時におけるお二人の将軍のご最後の情景が浮かんで参ります。
お一人は、終戦の翌日ご自宅の縁側で割腹を遂げられた阿南陸相、もう一人は、終戦後暫く経って、ご自害になった杉山元帥ご夫妻のことです。
伝承によれば、お二人のご最後は以下の通りだった、とのことです。
阿南陸相は終戦の翌朝、ご自宅で見事なご割腹。咽喉部へのお止めが不充分なため、意識を失われてもなおご存命で、約2時間後に馳せ参じた副官の頸部ご介錯によりご最後を遂げられています。
Commented by 玉梓4 at 2011-06-06 13:15 x
2)杉山元帥ご夫妻の場合は、終戦に関する重要会議の連続に、事態を察した夫人が、万一の場合には夫が自決されることを請われ、同時に夫人も後を追う旨、申出ておられます。共に自害を決意されたお二人が、どのように充実した日夜をお過ごしになったのか、御察しいたします。当時元帥は65歳でした。
やがて戦も終わり、重要軍務を全て終えた杉山元帥は9月12日、陸軍省内の個室にて拳銃の銃弾4発で心臓部を射抜き、自決されます。
自決の報に接した夫人は、夫の絶息をご確認の上、直ちに正装にお着変えになり、僅かに左の胸を寛げ、青酸カリの入った水を口に含みながら、左乳の下に短刀を突き立て、同時に青酸カリをご嚥下、見事にご本望を遂げておられます。
Commented by 玉梓5「 at 2011-06-06 13:17 x
杉山元帥は、先発った阿南陸相のご最後の有様を充分にご存知で、割腹をさけて、間違いのない自決手段をおとりになったのでしょう。
杉山夫人は、夫の絶息を確認されて、どのようにご満足であったかと、お察しいたします。杉山夫人は、乃木将軍の静子夫人のご自害のご様子をよくご存知であった、と思います。静子夫人はお止めが不充分で、最後は夫将軍のお手を借りてご最後を遂げられております。胸の急所を突いて死ぬのは、易しいことではありません。ですから、情感の最も昂ぶった時に、刃で胸を存分に突き刺しながら、直後に青酸カリを飲みほして、御望みを全うされたのです。

このようなお二人の伝承が、どうしてもkiku さまの今度のご作品にオーバーアップしてしまうのです。ああ、お赦しを―

Commented by kikuryouran at 2011-06-06 17:01
杉山元帥御夫婦のご自決は知りませんでしたので、急遽ネットでお勉強させていただきました。
年月が経ったとはいえ、心情は汲んで余りあるものがあります。

萌え種の題材にするのははばかられますが、状況年齢を変えてお話を考えてみようと思います。
by kikuryouran | 2011-06-02 04:12 | 平成夢譚 | Comments(9)