愛と死の妄想  feseppuku.exblog.jp

ショートな妄想フィクションを書いています


by kikuryouran
プロフィールを見る

女切腹

「亀山一之進妻志保、重き罪科に処すべきところ、お情けをもって切腹申しつける。」
夫一之進が凶刃に倒れ、仇討願いを出すも相手方が賄内を贈りこれを許されず。
志保は夜陰家宅にこれを襲い、討ち果たして自訴した。
家中同情の声多く、吟味の後切腹を賜う。
「切腹、有り難くお受け申し上げます。」
「志保殿、仇討願いを妨げた張本人は己を恥じて昨夜自害致した。また、賄内を贈りし者は追って沙汰を待つ身にて内々に打ち首と決まり申した。当人は切腹を願うもお取り上げにはならず、相続も許されぬと聞く。」
「有り難きお裁き、夫に良い土産でございます。」
嬉しそうに志保は頭を下げた。
「支度調えばご案内の者が参る。暫時これにてお待ちなされい。」

一人残された座敷の中、入れ替わりに女が入ってくる。
「暫く時がございます。御辞世などお残しなされては。」
文机には用意が調っている。
「今年は菊がようできました。お種になりますかどうか。」
女が障子を開け放つ。
菊が庭一面に咲いていた。
筆を取りしばらく考えた。

みだれきく つままつさとの はすこいし 
ぬれるしとねに むかえるあした

乱れ菊、夫待つ里の蓮恋し、濡れる褥に迎える朝。

「一之進様も蓮の台(うてな)でお待ちでございましょう。」

昼を過ぎた頃、志保は座に着いた。
「亀山一之進妻志保、役儀により見聞仕る。」
検死役は顔も知る日高十内。
「お役目御苦労に存じます。」
切腹刀を載せた三方が前に置かれる。
太刀を取った武士が後ろに立った。
「ご介錯致す。」
「声をかけるまで・・・。」
「承知仕った。」

細面に凛とした目鼻だち、眼差し涼しく三十路に近い女の艶。
死に化粧は薄くも紅(べに)は赤くひいた。
黒髪纏めて、討たれるうなじ首筋を出すは作法。
無紋無地の単衣袴が晴れやかに見える。

肌着残して両袖を抜く。
袴押し下げ、胸元乳房の谷間から下腹切り割く辺りまで露わにする。
手の捌き美しく迷いなく、死出旅立ちの覚悟は見る者を感じ入らせた。
瞑目して手を膝に、しばらく今生に別れを告げた。

日は小春のごとく、空高く気は澄み渡る。
小池に注ぐ水の音が静けさを増す秋の昼下がり。
しばらく時が止まった。

介錯の太刀に水打つ音が促すように静寂を破る。
いずれへともなく礼をして、押し頂き切腹刀を取る。
三宝を尻下に敷き腹をせり出す。
指先で探る切り込む辺り、見下ろして刃先を当てる。
緊張の糸張りつめて、すべての気が女の腹に集まった。
穏やかだった顔が険しくなる。

大きく息を吸い止める。
「うむっ・・うむむっ・・・。」
前に屈んで突き入れる。
痛みを堪えて揺れる腰。
顔歪み唇噛み締めて強張り震える。
握る懐紙が血に染まる。
白い肌に血が糸をひく。
「うぐっ・・くぅぅ・・。」
苦しげな呻きを上げて思わず身体が伸びた瞬間、介錯の太刀が振り下された。
ドスッ
頭部を切り離され、真っ赤な血を噴き上げ撒き散らして前に崩れた。
突き出された尻が、何度も痙攣して止んだ。
首は前に転び、髪がほどけて広がっている。
しばらく傷口から血が広がっていった。

介錯人が太刀を後ろに引いて礼をする。
「介錯見事、御苦労であった。」
検視役が立ち上がった。
[PR]
Commented by soruto at 2009-10-18 21:11 x
わたしは介錯は肯定派ですが皆さんはどうでしょう?切腹で綺麗に果てるには・・・・どうすればいいんでしょうか?むづかしいですよね。。kikuさんはどちらが好みなんでしょう、甘美でせつない切腹小説、これからも期待していますね。。
Commented by kikuryouran at 2009-10-19 17:59
介錯肯定かどうかですか・・・。
切腹に介錯はあっていいものだとは思うのですが。
頭部を切り落とすというのは、残された遺体を想像するとやはり残酷でしょうね。
介錯する方とされる方では想いも違うのでしょう。
楽にするといっても殺すわけですから、緊張するでしょうね。
される方としては、確実に死ぬことになりますから自死というより依頼死に近い気もします。
どちらかと言えばやはり肯定派でしょうか。
Commented by soruto at 2009-10-21 01:49 x
ありがとうございました。。依頼死となると、十分な切腹をしたい方には不向きなのでしょう。。まして、介錯人を努めてくれる信頼の置けるパートナーが必要ですし、その方に迷惑が架かるのは必至ですから、非現実的なのでしょうね。。でも、腹する自分を好きな女性に見てもらいたい気持ちも有ります。。他の方も是非、ご意見をお願いいたします。。
Commented by 照美 at 2009-10-29 07:11 x
私は介錯そのものが好きではありません。切腹を命じられた武士が切腹刀をお腹に突き立てた瞬間、またお腹に向かって狙いを定めた瞬間に介錯役が刀を振り下ろして首を落とす。そういうのが江戸時代には刑罰としての切腹のあり方だったと聞きます。
中には切腹人が、介錯に対して声をかけるまでお待ちくださいと願うこともあります。ここにある作品には多いですね。
首を落とすのはやはり斬首刑と変わらないと思います。切腹の座に着く切腹人は罪人ですから仕方ないのかなと思います。
ですから検分役や、また多くの人たちに見られている中の切腹はどうしても刑罰色を持つからこうならざるを得ないのでしょうね。
一人で死んでゆく切腹ではもちろん介錯がないです。この方が好きですね。
Commented by kikuryouran at 2009-10-30 05:01
照美さん、コメントありがとうございます。
罪人だから首を切り落とすというのではないそうですが、江戸時代の刑罰の考え方に、貼り付けよりも斬首の方が重罪というものがあったそうです。
ギロチンは瞬時に苦痛を与えず絶命させるという意味で、慈悲ある処刑と言われたとも聞きます。
死に到る肉体的苦痛への恐怖と精神的な死への考え方はいつの時代も議論があったようです。
ただ、首を切り落とされるた死体はやはり美しいとは想像できませんよね。
Commented by soruto at 2009-10-30 11:43 x
  kikuさん、照美さんこんにちわ。。
お二人のお話は女性の切腹は、死の座につくときから腹するときも、そしてし終えても美しく在りたいということでしょうか。。
 わたしはすこしでも死の苦痛を少なくと・・・介錯があればともおもいましたが・・・死に姿を整えるくらいがいいのかもしれませんね。。
 照美さん・・・今後もコメントよろしくお願いします。。
Commented at 2013-04-04 18:22 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
by kikuryouran | 2009-10-16 02:01 | 女腹切り情景 | Comments(7)