愛と死の妄想  feseppuku.exblog.jp

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by kikuryouran
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淀殿最期

既に秀頼は割腹を遂げている。
外からは攻め手の声さえもが聞こえて、銃声が途絶えなかった。
周囲では侍女や近習たちが次々に自害していく。
「もはやこれまでかと・・・。」
淀の方は促されて懐剣を握った。

落城は既に二度味わっている。
小谷の城では父が切腹し、北の庄では母が自害した。
不思議に懐かしく思い出された。
多くの死を見てきた。
死は常に身近にあり、縁者の多くが自害して終わっている。
自分もいつかこうなることを覚悟していた気がする。

激しく誇り高い性格は、信長と同じ血を濃く受けていたのかもしれない。
数奇な一生とは思わなかった。
悔しさ恨めしさはなかった。
ただ思うままに生きた。
すべてが前世から決まっていたことのように思えた。
炎の中で自害するこそ、自分には相応しい最期の気がした。

死ぬる前の走馬灯は廻り続ける。
周囲にはいつか父母が居た。信長が居た。勝家が居た
しかし秀吉は現れなかった。
彼には武家の誇りはわかるまい。

周囲は既に煙が立ち込めている。
背後で首討つ太刀を抜く気配を感じて彼女は叫んだ。
「下がれ!介錯無用。妾(わらわ)は長政の子、市の娘ぞ。」
懐剣に身体を預けた。
苦しくはなかった。
腕に力を込めて抉る。
彼女は満足げな笑みを浮かべて前に崩れた。
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by kikuryouran | 2009-08-02 06:50 | 女腹切り情景 | Comments(0)